2020年はコロナ禍の影響で外出規制により人の動きが止まり、さらに営業制限で人々の購買意欲が減少したため、多くの企業が広告費を削減した。

このような状況ではあるが、Googleの2020/10/30発表の四半期決算に基づくと、第2四半期(Q2)時点での広告全体は落ち込んでいるように見えたが、第3四半期(Q3)は一転して大きく伸張した。

特にYouTube広告は前年同期比で+32.4%(第2四半期は+5.8%)の増加になった。世界的な巣ごもり環境下で、多くの人たちがYouTubeを視聴していたこと、出稿企業が広告の手控えを見直し始めた反動があるからであろう。

このように全体でみれば広告費は回復基調ではあるが、業界によって状況は違うようである。本ブログではデジタル広告金額の大きい主要4業種のコロナ禍での状況と、2021年の動向について見ていく。

(出典)2020FY Q3 Google Form 10-Q 「Note 2. Revenues」
(出典)2020FY Q2 Google Form 10-Q 「Note 2. Revenues」

記事の内容

  • 自動車業界のデジタル広告費は2021年には2019年水準まで回復する見通し
  • 旅行業界は歴史的に困難な年に直面し、デジタル広告費は大きく減少
  • 日用必需品とパーソナルケアのデジタル広告費はコロナ禍でも順調に増加
  • エンターテインメントのデジタル広告費は2021年に20%以上回復する見込み

自動車業界のデジタル広告費は2021年に2019年水準まで回復する見通し

(出典)eMarketer「US Automotive Digital Ad Spending 2020」

2020年の米国の自動車業界におけるデジタル広告費は前年比18.2%減の109.4億ドルが見込まれ、減少幅としては旅行業界に次いで最も大きくなった。

2021年には前年比21.4%増の132.9億ドルが見込まれているが、これは2019年度をわずかに下回る規模である。また、デジタル広告費マーケットに占める自動車業界のシェアは、2016年の12.1%から毎年減少を続け、2020年度で8.1%、2021年度でも8.1%程度になると予想されている。

2020年にデジタル広告費が縮小する理由は、コロナ禍において自動車工場やディーラーの閉鎖や時短により顧客が自動車の購入を遅らせたことである。最近の中古車販売の増加傾向もまた、新規自動車購入の需要が停滞していることを示している。

このようなこともあり、近年のデジタル広告費の内訳は、検索、動画、非動画でほぼ均等に推移してきたが、2020年は検索型(Search Engine Marketing、SEM)が32.9%減少する等、パフォーマンス型マーケティングよりもブランド訴求型のマーケティングに焦点を当てている。

旅行業界は歴史的に困難な年に直面し、デジタル広告費は大きく減少

(出典)eMarketer「US Travel Digital Ad Spending 2020」

旅行業界は最も困難な年に直面している。

コロナ禍前のデジタル広告支出は前年比19.3%増が予測されていたが、いまでは前年比41.0%にまで大きく落ち込む32.4億ドルと予想されている。これによりデジタル広告費マーケットに占める割合は2019年の4.2%から2020年は2.4%に減少する。

2021年度は前年比で15.3%増になる見込みだが、それでも支出総額37.4憶ドルは2019年と比べて32%減少の規模に留まる。

デジタル広告費の内訳では検索型が58.8%を占めており、一般的な40.4%と比べると高い水準ではあるが、2020年の支出額19.1億ドルは、2016年以降で最も低くなった。広告費はモバイル向け50.9%、PC向けが49.1%とバランスを取っている。

日用必需品とパーソナルケアのデジタル広告費はコロナ禍でも順調に増加

(出典)eMarketer「US CPG Digital Ad Spending 2020」

いわゆる日用消費財(Consumer Packaged goods, CPG)業界のデジタル広告費は、オンラインによる購入頻度が高くなったことで、2020年は前年比5.2%増の194.0億ドルが見込まれる。

これは小売業、金融サービス業に次いで第3位となる規模で、デジタル広告費マーケットの14.4%に相当する。

日用消費財業界は、モバイルを中心とした広告が多く支出総額の73.2%を占め前年比11.4%増となった。最も人気がある広告先はソーシャルネットワーク(SNS)や動画プラットフォームにおけるディスプレイ広告である。

広告費の内訳では、ディスプレイ広告を構成するビデオ広告が支出総額の中で最も増加し17.1%増の 55.4 億ドルとなった。これはディスプレイ広告の47.5%、支出総額の28.6%を占めている。

eコマースでの売上増加、D2C(Direct-to-Consumer)ブランドとの競争に伴い、パフォーマンスマーケティングへの注目度がより高まっているが、ブランドマーケティングも依然として不可欠となっている。

エンターテインメントのデジタル広告費は2021年に20%以上回復する見込み

(出典)eMarketer「Entertainment Digital Ad Spend Will Rebound More than 20% in 2021」

コロナ禍でアミューズメントパークの閉鎖やライブイベントの相次ぐ中止により、エンターテインメント業界のデジタル広告費は過去最大規模で落ち込んだ。これは旅行業界、自動車業界、メディア業界に次いだものになる。

2020年は前年比で6.9%減少すると予想され、2019年からは約5億2千万ドル減少する。2019年は前年比で28.2%増であったことを考えると厳しい落ち込みである。しかし、イベント等の再開に伴い2021年は前年比で20.7%増になると予想されている。

その一方、ビデオゲームの広告費は2020年1月から4月にかけて2倍以上に増加した。さらにサブスクリプション・ビデオ・オン・デマンド(SVOD)の動画サービスや昨年11月からサービスを開始したDisney+等も広告費が増加したことで、エンターテインメント業界の広告費減少を補った。

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楠山健一郎

国際基督教大学卒。シャープ、サイバーエージェント、トムソン・ロイターを経て株式会社プリンシプル設立。

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