はじめに
「海外進出で重要なこと」、3回目の今回は世界で戦う土台作りについてだ。
まず今日は、日本企業が海外進出する際にしがちな「2つの間違い」についてお話したい。よく考えれば、的を射ていないことはすぐに分かるはずなのに、なぜか多くの企業が取りがちな行動でもある。
2つの間違い
一つ目は進出事業には特別明るいわけではない「現地に住んでいる知り合いやツテ」、「現地に住んでいるだけでコンサルタントを名乗る人」によく調査せずに頼ってしまうこと。日本で事業を成功させようと思ったら、その道の素人には仕事を発注することはないだろうが、「海外」となった瞬間、この基本に立ち返らないまま、知り合いありきで話を進めてしまう企業は少なくない。
二つ目は海外でのマーケティングをすることなしに、ホームページや商材説明などを真っ先に「英語」にすることだ。単なる英語訳と、「異国で自分の商品を、現地の人、しかもターゲット層が響くような言葉を用いて説明する」ことは、イコールではない。しかし「とりあえず」という枕詞のもと、素材の翻訳を優先してしまう企業は本当に多い。
こうした背景には、根強い「Made in Japan」神話があるのだろう。特に国内で高い実績を収めている企業ほど、あっけなくこの間違いにハマってしまう傾向にある。「自社の商品は売れているのだから、海外でも絶対イケる」という仮説を元に、事業計画を考えてしまうのだ。しかし実際には、日本の商品が日本のままで売れることの方が少ない。しかしこれは悲観ではない。私が言いたいことはむしろ真逆である。なぜなら、日本製品の質が高いことは、揺るがない事実だからだ。裏を返せば、「その品質の高さを現地の人のメリットに置き換えてあげれば、日本には海外でも売れる商材が数多く眠っている」ということにもなるわけだ。
私は、新しい市場での商機にかけるには「日本流を一旦捨てる」ことと、「現地の市場を知り尽くし、そこで実績を収めている専門家を起用すること」が重要だと考えている。翻訳を頼む相手であろうが、マーケティングを頼む相手だろうが、法律相談をする相手だろうが、変わらない。そしてこれこそが、海外での成功の土台の基盤でもあると思っている。それを裏付けるさらに詳しい話は、残りの2回の連載で述べていくが、これらが重要である理由は、アメリカの国土の広さを考えてみただけでも明白だろう。
アメリカの国土面積が日本の25倍。そこにある50州には、それぞれ州法があり、文化慣習、商慣習も大きく異なることがある。だからマーケティング不足で事業を展開すれば、アメリカ国内にあってさえ「ある州で流行ったものが、ある州では全く流行らない」、「州法の違いを知らないで、後から規格を変えねばならなかった」というようなことが平気で起こってしまう。
また土地の大きさと共に考えておきたいことは、アメリカが訴訟大国である点だ。特に日本にはあまり馴染みのない「懲罰的損害賠償」については、どんな企業も未然にそれを防ぐシミュレーションだけはした方がいいだろう。これは不法行為や事故によって実際に生じた具体的損害に加えて、懲罰の賠償金を加算することを認めるもの。知っている方も多い