こんにちは、プリンシプルの楠山です。今週も、アメリカやシリコンバレーで注目されている企業を紹介していきます。
本日はシリコンバレー界隈で大変注目を浴びており、私も自分の会社を紹介する際は「日本でのEC業界のパランティアだ」というと、現地の投資家も「なるほど」、と興味を持ってくれる謎の会社「パランティア・テクノロジー」について紹介します。
パランティア・テクノロジー社のホームページ

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1:シリコンバレーが密かに注目してきたパランティアとは?

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写真:パランティア・テクノロジー社のHP。軍隊の写真を背景に、目的を達成するための商品、ということが書いてあります。

JETRO発表の記事(2016/04/18付)のカリフォルニアの投資状況に関する記事に「-ウーバー・テクノロジーズやエアビーアンドビーなどが前年に続いて多額の投資を受け入れたほか、金融技術(フィンテック)企業のソーファイやビッグデータ解析のパランティア・テクノロジーズへの大型投資がみられた」とあります。実際に同社の現在の企業価値はそれらの企業とならぶ2兆円規模と言われ、現在シリコンバレーで最も成長し、注目されている1社と言えます。
ところがUBERやAirbnbについてはコンシューマー向けサービスであることから日本でもご存知の方が多いかと思いますが、パランティア・テクノロジー社については実はアメリカでも「なぞの会社」「何をやっているのかわからない」という秘密主義の会社であったようです。しかしながら最近はVCの投資や顧客の拡大に伴い、その実態が少しづつわかってきており、いくつかの情報が公開されてきており、以下のブログなどには内部文章のことなども含めかなり詳しく書いてあります。
参照:
The Real Lesson for Data Science That is Demonstrated by Palantir’s Struggles,May 11, 2016
How Does Palantir Make Money?, Jun 6, 2016 

2:もともとはPaypalのカード不正利用検知システムを利用

もともとパランティア・テクノロジー社は2004年にスタンフォード大学のおひざ元のパロアルトでAlex Karp氏(アレックス・カープ)が創業し、PayPalの創業者でもあるPeter Thiel(ピーターテイル)も参加するかたちで始まりました。
もともとPaypalは決済を行う会社として世界中のクレジットカード決済を扱っていたわけですが、その中でカードの不正利用や不審なお金の動きを感知するシステムがあり、その技術をコアに「情報を集め、分析し、テロや不正防止に役立てる」というところからサービスは始まったようです。実際に最初の顧客は米国CIA(米国中央情報局)であり、同時に資金と技術提供も受けていたそうです。その後も国の重要機関からの発注を受けていたそうですが、それがゆえに対外的には顧客名やサービス内容等含め秘密にされてきた経緯があるといわれています。しかしながら噂レベルで

  • 国際テロ組織アルカイダの元最高指導者ビンラディン居所を突き止めるのに一役を買った
  • 麻薬グループの首謀者のアジトの突き止め
  • 政府を攻撃するハッカーの特定

などの実績があるとされています。政府系や国家保安に携わる機関が、パランティア・テクノロジー社の開発したといわれるソフトウェアを使っていることは事実のようです。

3:売上規模と顧客について

最近はそのソフトを民間企業にも売り出すようになりました。その取引単位は月間で1億~100億円などであることから、トップ自らがトップに対して売り込むスタイルだそうです。基本的には厳しい秘密保持条約が結ばれ、売上規模や取引先などの名前も出ませんが、フォーブス誌は、2013年度のパランティアの収益は4億5000万ドルと試算し、またCNBCは2015年の年間の売上が18億ドルと試算。この数字を見ても驚異的な伸び率を記録していると思われます。
顧客層は金融、カード会社からコンシューマー商材の会社などが含まれており、上記ブログでも内部文章からコカ・コーラ、アメックス、ナスダックなどの名前が出てきています。また日経新聞2014年1月1日付け記事によると「日本でもローソンや富士通、凸版印刷がソフトの採用を決めた」とのことです。

4:サービスについて

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サービスモデルについて、ホームページの内容と各メディアを総合すると、自社で開発したデータ統合・データマイニングソフトである「GOTHAM」というソフトを企業内に導入し、コンサルティングで儲けるというサービスのようです。
具体的には企業や政府機関内にある散らばった様々な情報を目的に応じて収集、データを結合、分析し、、わかりやすいビジュアルマップやチャートなどでレポーティングを行い、最終的には企業での収益アップやコストダウンの判断につなげてもらう、というモデルです。
今までのデータコンサルティング会社と比べた時の、その会社のすごさはそのソフトウェアにあるといわれており、例えばアンケート、エクセル表、電子メール、チャット、HP閲覧履歴、クレジットカード履歴などのデータ化されたものから、必要であればその人の郵便履歴や自動車での出勤ルートなど、ありとあらゆるバラバラの情報を収集し、それを最終的に目的に応じてデータの相関性を加味しながら、結論、最終目的に到達する答えを見つけ出すことができる、ということです。しかも、今まで諜報機関や戦略コンサルが行ってきたこの分析作業を驚くほど短時間で行うことができる、のだそうです。
ちなみにパランティア・テクノロジー社は採用において、最近は戦略コンサルタント出身者を中心に雇っているらしく、また実際に大手戦略コンサルティング社も同社を脅威に感じている、という話も聞きました。

5:ビジネスモデルについて

こちらも謎に満ちてはいますが、前述の通り月単位のコストは1億~100億までいくそうです。
しかしながら、必ずしも固定での売上というわけではなく、成果報酬モデルを組み合わせているようです。つまり、目的を達成した場合は、その成果に応じて報酬額を決めるそうです。売上規模の大きい企業や、軍事や政府など予算規模の大きいところなどは、そのような億単位の金額を払ってでも、目的を達成できるという点においては安い、というように考えるようです。
例えば、売上1兆円規模の会社がマーケティングの予算配分を最適化することで、年間1000億円の予算を800億に削減しつつ、売上はアップし利益を300億アップし、結果的に企業が利益を500億円確保できた場合、そのうちの20%で100億円などを報酬として受け取る、というやり方です。(上記の%などは想定)。
この成果報酬モデルは、いわゆる利益アップで業者にお金を払うというWin-Winモデルですが、問題点としては業者側にとっては時間と知見を投資したわりに、最終的な利益が思ったように上がらず、報酬を得ることができないというリスクがあったり、また成功の定義を決める際、ビジネスですと多くの複雑な要素が絡むために、なかなか正確には決められない、などの問題があげられます。
それでもパランティア・テクノロジー社の売上がアップしている、ということは上記の問題を解決したうえで、付き合う会社の伸びしろを見極める力があるというのはもちろんのこと、持ち腐れになっているデータに対し、しっかり向き合えば企業の業績アップや設定する目標は達成できる、という「データの力」を同社が引き出すことができているからではないかと思います。その点、同じデータ解析コンサルティング会社として弊社も刺激になります。

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楠山健一郎

国際基督教大学卒。シャープ、サイバーエージェント、トムソン・ロイターを経て株式会社プリンシプル設立。

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