日本は産業構造の偏り、逆ピラミッド型の人口構成化などからのGDPの大きな成長は望めない。だが世界に目を向ければ、最大規模の北米マーケットがあり、アジアも高い成長率となる国が出始め、アフリカなどの新興国も伸びている。

もはや日本企業が、縮小していく国内市場だけで生き残っていくのは難しい。

古くから家電・車などをメイドイン・ジャパン品質で海外へ積極的に進出した大手企業(トヨタ・Panasonic)などでは、売上の半分以上を海外で稼いでいる。

一方で現在は、IT企業、電子機器や精密部品、日本食、漫画などのカルチャーが海外進出に積極的だ。例えば、海外ユニクロ事業が日本ユニクロ事業を上回っているファーストリテイリング、北米売上が日本売上を上回るファナックなどが成功事例として有名である。

この記事では、大手IT企業の北米進出の状況について紹介する。

大手IT企業の海外進出状況

米国の小売分野において、2017年の電子商取引(EC)の市場は約4500億ドル(約49兆円。米国勢調査局)である。日本の9兆円(経済産業省)に比べ5倍以上の巨大なマーケットだ。このエリアへ参入していくことが必須と考えている日本企業は多いだろう。

海外進出は誰もが考えているほど容易ではなく、周到な計画と本気の実行が必要で、「かしこく」進出することが大切である。いくつもの大手企業が海外進出を目論んだものの、「日本流」を持ち込み苦戦を強いられているケースが見られる。

メルカリ:米国で日本流C2Cを展開してマーケットを開拓

メルカリが米国でも中心としているのは、個人どうしで宅配便を使って商品を受け渡す仕組みのアプリだ。状況は日本とは違い、苦戦を強いられている。

メルカリの米国の流通総額(GMV)は半年間で5.5億ドル(2021年6月期・第2四半期)にまで成長したが、黒字の目安とされる「月間1億ドル」に届かなかった。直近の2021年第2四半期は2.6億ドルで、2021年第1四半期の2.9億ドルから9%減少している。

メルカリの流通額は、マーケットプレイス業界最大手のeBay(2020年第4四半期の流通総額 266億ドル)と比べると、およそ1%の規模しかない。

米国メルカリをGoogle Trendsで見ると、米国市場に参入した時は宣伝広告をかけることで知名度をあげた時期があったが、後発のFacebook Marketに抜かれ、最大手eBayもいる中で苦戦をしている。

今年2021年2月7日には米国最大級のイベントであるスーパーボールにCMを出したが、それにより知名度が大幅に向上したという印象はない(下図右端が2021/2/7-2/20)。しかしながら一貫して北米市場に投資し続ける姿勢があるため、今後も期待してその動きを注目していきたい。

楽天:米国へ独自の経済圏で挑戦

楽天は2010年に「Buy.com」を2.5億ドルで買収し米国EC市場に参入し、次いで2014年にはキャッシュバックサービスの「Ebates」を10億ドルで買収した。そして2020年頃にはECの海外比率を50%に高める目標を掲げていた。

買収後、2013年には知名度が高かった「Buy.com」を「Rakuten.com」へ変更し、Ebatesのオンラインサイトも「Rakuten」に変更している。楽天は海外の事業も同社の名前に変更することで、一体感・統一感を持たせようとしているようだ。

だが、2020年に米国EC市場から撤退が決まった。Buy.comの名前を変えてしまったこと、同社のCEOおよびCOOが2012年に辞めたことなどが影響し、その後の業績が下降したとされている(TechCrunchより)。

2019年にクレジットカード事業を展開するために米国に子会社を置いたが、必要な免許の申請を2度取り下げるなど、楽天が思い描いていたとおりに進んでいないようだ。

それでも楽天は米国へ挑み続けている。

2017年に3年間で総額65億円をかけて、NBAの覇者「ウォリアーズ」のスポンサーとなり、1枠で数億円とされるコマーシャルも手がけた。誰もが楽しむスポーツで「Rakuten」の知名度を向上させている。

最後に

私の会社では中規模の会社において米国で事業を展開したいと真剣に考える企業をサポートしている。本気で取り組もうとする企業には、特別の思いを持って積極的に関わらせていただきたいと思う。

弊社(プリンシプル)では、海外進出支援を会社設立からホームページ制作、採用、パートナー探し、顧客獲得のマーケティング、現地企業への営業から契約書、営業システムの導入まで幅広く支援しています。
もしお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

出典:

トヨタ 海外売上(販売)比率 72%(2021年3月期予想)
https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/financial-results/2021_2q_presentation_jp.pdf

パナソニック 海外売上比率 51%(2020年3月期)
https://www.panasonic.com/jp/corporate/ir/pdf/Report2019.pdf

ファナック 海外売上比率 77% (2020年3月期)
https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/announce/pdf/2020/financialresult202003.pdf

ユニクロ 海外売上比率
https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/tanshin202008_4q.pdf

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楠山健一郎

国際基督教大学卒。シャープ、サイバーエージェント、トムソン・ロイターを経て株式会社プリンシプル設立。

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