今週は2016年5月にAd Ageが発表した「Agency Report 2016」の中から、世界で広告やマーケティング業界に携わる会社、いわゆる代理店の10のトレンドをご紹介します。
1:Ad Age発表の「AgencyReportとは?」
Ad Age発表の「AgencyReport」とは米国で最も権威ある広告・マーケティング誌「Advertising Age」が、1945年以降毎年発表しているもので、自社の調査を元に広告やマーケティング業界に携わる会社をランキング形式で発表するものです。
基本的にはadageの提供するdatacenterサービス(有料)掲載の各会社に質問書を送付する形で情報を取得し、1000社以上の回答をまとめることで提供されています。
adageのdatacenterサービス
2:レポートが語る世界の代理店、10の傾向
- ①アメリカの代理店の収益は2015年は$468億ドル(約4兆7000億円)となり、前年比6.5%のアップとなった。
- ②2015年はアメリカ代理店の何らかの形でデジタルと接する業務から生まれる収益は、全体の41.3%となった。なおこのデジタルの定義は、媒体費用から制作、PRなどすべてを含む。2014年は39.7%であった。
- ③すべての主要代理店がそれぞれの専門分野で成長しており、CRMやダイレクトマーケティングなどの3.8%のレンジでの成長から、ヘルスケア分野でのマーケティングでは8.7%の成長など幅があった。
- ④アメリカの広告代理店の2015年12月の雇用数は198,900ポイントとなり、2000年前半のドットコムバブル以降の最高の数値となった。
- ⑤メディア代理店、メディアレップの数は2015年前半にドットコムバブルのピークを超えてからも、12月に47200と高い数を維持している。
- ⑥2015年1月のデジタルメディアに携わる雇用数が、既存のテレビやケーブルテレビ会社の雇用数を超えた。デジタルメディアの雇用数は2015年に13%の伸びを示し、それは代理店の13.5%の収益アップとほぼ同じ比率となっている。
- ⑦世界最大の広告代理店グループであるWPPは2015年に10億ドル(約1000億円)をFacebookの広告に費やし、2014年の6.5億ドル(約650億円)から大幅にアップした。同社は2016年には50億ドル(約5000億円)を最大の取引先となるGoogleに使うと言われている。
- ⑧世界のTOP5のデジタルエージェンシーを見た時に、いわゆる昔ながらの広告代理店グループに入るのは、WPPグループのWunderman社のみで、その他はアクセンチュア、IBM、デロイト、エプシロンといった昔ながらの広告代理店以外の会社が保有している。
- ⑨広告業界のビッグ5と言われるWPP、Ominicom、Publicis、Interpublic、そして電通は、2015年に100を超える買収と投資を行った。大きなところでPublicisが行ったSapient社の37億ドルでの買収が挙げられる。
- ⑩投資家も代理店株に強気の姿勢を見せる。2015年4月にWPP株は過去最高を記録し、Omunicomも過去最高、Interpublicは2002年と同等の過去最高レベルで取引された。
上記10項目のうち、弊社として気になるのは8番目の傾向、つまり既存の広告代理店以外の業種が、デジタル戦略やデジタル広告分野で躍進していることです。その裏には、デジタルは今までの広告代理店が行っていたコミュニケーション戦略以上に基幹業務、業務効率化、物流などの経営戦略と結び付いて企業側が考えており、それがゆえにそのような分野で活躍してきた戦略コンサルやIBMのようなITソリューション会社が台頭してきているといえるでしょう。引き続き世界の代理店の動きも注目です。