はじめに

新型コロナウイルスを巡る今後の状況予測と今できる対策〜プリンシプルの取組」というテーマでブログを執筆したのは4月2日のことでしたが、それから数日経った4月7日現在、政府からは、本日にでも緊急事態宣言が発出される見通しとなっています。先ほどのブログでまとめた「悪化期」の「後期」にさしかかってくる訳ですが、この状況において、今あらためて重要と考えることを、書かせていただきたいと思います。

新型コロナウイルスは、もはや単なる「感染症」ではありません。このウイルスがもたらす「禍(わさわい)」は多方面にわたり、私たちの社会、経済、組織、家庭、そして個人個人にも、大きな困難をもたらしています。

日本赤十字社の「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!~負のスパイラルを断ち切るために~」で紹介されているように、新型コロナウイルスは人々の心に「不安」や「怖れ」を生じさせ、そしてその「不安」や「怖れ」は、社会に「差別」や「断絶」をもたらします。ウイルスを封じ込めるための自粛活動や行動制限は、企業活動にとっての大きな打撃であり、経済の悪化に直結します。個人には様々なストレスが降りかかり、それは家庭内暴力(DV)の増加といった負の側面を生みだしはじめています。「コロナ離婚」という言葉が生まれてしまうことに代表されるように、私たちの様々な「絆」や「関係性」は、今、大きな試練を迎えています。

人々の中に渦巻く不安

ここに1つのグラフがあります。4月2日に公開した「新型コロナウイルスを巡る今後の状況予測と今できる対策〜プリンシプルの取組」のブログ記事に、読者の方が、どのような「キーワード」で検索してたどり着いたかを表した散布図となります。

検索クエリ散布図

図の説明:Search ConsoleのデータをダウンロードしてTableauで可視化。データは4月5日のもので、縦軸が表示回数、横軸が平均掲載順位、円の大きさがクリック数をあらわす。キーワードを「今後」を含むもの、「予測」を含むもの、「将来」を含むもの、その他の4つのグループに分け、それぞれで色分け。

詳細の説明はここでは省略しますが、散布図の上の方にプロットされているキーワードほど、そのキーワードで検索してブログにたどり着いた方が多いことを意味しています。この散布図をみると、「今後」「予測」「将来」「見通し」といった文字が目立ちます。これは現在多くの人々が、新型コロナウイルスをとりまく状況に、特に今後この状況がどうなっていくのかということに、大きな不安をいだいていることの表れであると思います。

では、私たちが今心の奥底で感じている「不安」や「恐怖」に対処していくために必要なことは何でしょうか。私はそれは、以下の3つであると考えます。

  • 一次情報にあたり、現在の状況をできるだけ客観的に、正しく理解すること
  • このような事態だからこそ、リーダーが力強い、明確なメッセージを発信すること
  • 小さな試行と検証を繰り返すことで、少しずつ、でも着実に、物事を前へ進めること

一次情報にあたる

現在、新型コロナウイルスに関しては様々な情報が出回っており、中には真偽が不明なものも混ざっています。このような時だからこそ、できるだけ正確な「一次情報」にあたり、冷静にものごとを判断することが求められると思います。

専門家の見解や政府の対策については、官公庁や地方自治体のホームページで紹介されています。ざっとあげると、以下のようなサイトとなるでしょうか。

官公庁

地方自治体

研究機関など

特に最近私が注目しているのが、以下の2つのウェブサイトになります。

新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会 

政府対策本部の専門家会議や厚労省クラスター対策班等の関係者で組織された、専門家の有志の会による情報発信サイトです。今国民に伝えたいことを、わかりやすい言葉で、簡潔に記しています。特に以下のページは、緊急事態宣言が発出される今、参考になるかと思います。

緊急事態宣言で変わること・変わらないこと

山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

iPS細胞研究者の山中先生による、新型コロナウイルスに関する情報のまとめページです。海外の状況や様々な科学データなどを、山中先生独自の視点で紹介されています。一次情報そのものではありませんが、一次情報にアクセスし、それを理解する上で、非常に貴重なサイトであると私は考えます。

トップからの力強い、明確なメッセージ

人々の不安に対して重要であると私が考えるのは、トップからの力強い、明確なメッセージです。それは国のレベルでも、地方自治体のレベルでも、組織のレベルでも同じです。例えば会社において、見通しが見えない状況は社長も同じあり、社長自身、資金繰りや取引停止、社員の雇用維持など、多くの不安を抱えるのもまた事実です。ですがそのような状況だからこそ、社長からの力強い、明確なメッセージを、社員一人ひとりに対して発信するべきであると、私は強く思います。それはきっと、社員の不安の解消に大きく役に立つはずです。

プリンシプルでは、毎月全社員が集まってのMonthly Meetingを開催していますが、4月2日のオンラインで実施されたMonthly Meetingでは、社長の楠山から、今後の会社の見通しを述べた上で、「今ここにいるメンバー全員で、この苦境を乗り切っていこう」という趣旨のメッセージがありました。詳細は書けませんが、「全員で乗り切る覚悟、そして明確な方向性」がシンプルに伝えられ、少なくとも私は、その力強いメッセージに希望を感じることができました。

またプリンシプルでは、後述する「完全フルリモートデー」の実証実験を経て、新型コロナウイルスに対する出社方針を比較的早期に定め、社員に周知しました。このことも、社員の中に不要な迷いを生ませないという観点で、大きな意味があったものと考えます。

小さな試行と検証の繰り返し

今私たちが直面している困難は、今まで誰も体験したことのない問題です。その問題に対する「正解」は誰にもわかりません。誰もわからないからこそ、手探りで、試行錯誤を繰り返しながら、対処していくしかありません。そこで重要となるのが、小さく試してみて(スモールトライ)、その結果を検証して課題を洗い出し、それを次に活かしていくという、小さなPDCAの繰り返しであると思います。

プリンシプルでは、創業時よりリモートワークを導入し社員に活用されてきましたが、それでも社員全員がリモートワークをする(フルリモート)ことはありませんでした。そこでプリンシプルでは、比較的初期の段階で「社員全員が出社しない日(フルリモートデー)」を設定して、問題点の洗い出しを行いました。その結果様々な問題が見つかりましたが、それらに1つ1つ対処していくことで、「原則全員出社禁止」という方針を打ち出すことができました。

上記はあくまで例ですが、「小さく試してみてその結果を検証して次に活かす」ことは、このような事態だからこそ、重要なことだと思います。

さいごに

WHOでは健康を以下のように定義しています(訳は日本WHO協会のウェブサイトより)

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。

この定義にあるように、私たちが新型コロナウイルスに打ち勝つためには、ただ物理的に「感染症にかからない」「感染症をうつさない」「かかっても命を落とさない」というだけでなく、精神的にも、新型コロナウイルスがもたらす「不安」と「恐怖」を克服し、社会的にも、新型コロナウイルスが引き起こす「差別」や「断絶」に、打ち克たなければならないと私は考えます。

今回のブログ記事が、私たちが真の意味で新型コロナウイルスとの戦いに勝利するための、皆様の一助になれば、幸いに思います。

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外山大

東京大学大学院、修士課程修了。11年間の文部科学省勤務の後、ITベンチャーにてメール配信システムやウェブサイトの開発に従事。

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