ソーシャルメディア分析を怠ったことで起きた失敗

2013年の秋に、旅行代理店のExpediaカナダが ”Escape Winter”という名のCM放映キャンペーンを行っていました。そのCMはBGMに少女が弾く気味の悪いバイオリンの音を使用し、男性とその家族が迫りくる冬に怯える様子を映しています。

CMによって潜在顧客の注目を集めることには成功しましたが、Expediaカナダが望んでいたような結果にはなりませんでした。多くの顧客は「3分ごとにバイオリンを弾いている少女のCMを見るのはうんざりだ」などとCMを非難したのです。

このキャンペーンを牽引した、ExpediaのクリエイティブパートナーであるGrip Limited社のRich Pryce-Jones氏は、

「私たちはこの広告が好きです。フォーカスグループに調査を行い、その結果みなさんはこの広告を好んでくれました。なので意図的に刺激的になるようにしていました。ただ、CMが頻繁にテレビで流れるとは予想していませんでした。」

と述べています。慎重に検討しテストしたにも関わらず、このCMは顧客には受け入れられませんでした。

幸いなことに、Grip Limited社はソーシャルメディアでの反応に耳を傾け、わずか数カ月後には、問題となった音を発するバイオリンが家から投げ出される様子を描いたCMを新たに放映しました。

Pryce-Jones氏は「私たちは実際に人々の声を聞き、顧客の声を大切にしようと決めました。また私たちは顧客からのネガティブなフィードバックをポジティブにする良い機会として活用しました。」と書いています。

このユーモラスなPryce-Jones氏の発言に対して、ユーザーはポジティブな反応を示しました。この発言は「Expedia社が顧客の声に耳を傾けること」「当社をからかう人を恐れていないこと」を示しています。さらにGrip Limited社の迅速な対応で、Expedia社は蔓延していたネガティブな評判をひっくり返すことに成功しました。

機転を利かせた対応によりうまく挽回できましたが、もしGrip Limited社がソーシャルメディアを積極的に監視していたら、もっと迅速で効果的な対策ができたかもしれません。

このように顧客の行動を理解することは、顧客相手のビジネスでは非常に重要です。顧客行動を理解するための手法の1つがセンチメント分析です。

センチメント分析とは?

センチメント分析とは、態度・思考・判断・感情の分析です。Merriam-Webster辞典には、センチメントとは”感情によって促される態度、思考、判断”、または”特定の見解や観念”とあります。

ソーシャルメディアが普及した現在では、多くのユーザーがオンライン上にすぐに自身の意見を共有しています。このデータを分析することにより、企業は自社のブランド、メッセージ、サービスがどのように認識されているのかをより深く理解できます。

2012年の大統領選挙でも利用

センチメント分析の価値はカスタマーサービスだけに限ったことではありません。この分析は2012年の大統領選挙でも使用された記録が残されています。

Hao Wang氏らが実施した研究では、「センチメント分析は国民・メディア・政治家・学者に選挙プロセスと世論の動態について、新しく、タイムリーな視点を提供する」ということが分かりました。したがって有権者へのアピールに関心のある政治家は、センチメント分析を利用することで大きな利益を得られることでしょう。

このようにデータ分析を利用することによって、主張の大きい国民の意見をよりよく知ることができます。

2012年のアメリカ大統領選挙における様々な候補者のTwitterセンチメント
出典:Hao Wang, et al.Hao Wang, et al.

「意見をシェアする人」しか分析できない

もちろんセンチメント分析には弱点もあります。最も顕著な弱点は、積極的に意見をシェアする人の意見しか捉えることができないことです。人々が感じていること、考えていることはソーシャルメディアに書かない限り把握できません。

そしてほとんどの人は自身の意見をシェアしません。したがって、センチメント分析は顧客行動を理解するための手段のうちの1つとして捉えるべきです。クリック率やコンバージョン率、インプレッションなどの従来の指標は無視できません。

Expediaカナダの例では、インプレッションで高いパフォーマンスを示し、ソーシャルメディアでのエンゲージメント数も大きく伸びています。しかしながら、それぞれのエンゲージメントの内容を1つずつ人間がチェックすることは時間がかかってしまい、またチェックする人間の主観が入り混じってしまいます。

以上のことから、センチメント分析は顧客行動分析のサポートとして使用するべきです。

センチメント分析を実施する方法

センチメント分析を行うためには前提として、データを用意する必要があります。データを抽出する際には、ターゲットのチャンネル、セグメント、キーワードを明確にします。データを収集する定番のプラットホームは、ユーザーの投稿数が多いTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアがあげられます。

そしてこれらからデータを収集し、分析します。データの収集はデータクレンジングやデータ整形を含む複数のステップを経て行われます。分析ではGoogleなどの大企業によって開発され、既に様々なシーンで用いられている機械学習を使用します。

難しそうに聞こえるかもしれませんが、センチメント分析を行う上ではエンジニア、データサイエンティストのチームは必要ありません。AWS(Amazon Web Service)やGCP(Google Cloud Platform)といったクラウドプラットフォームを活用することで、即座に顧客のセンチメント分析ができます。

もしあなたが次回のキャンペーンや特定の話題、製品などに対する顧客の反応が知りたいのであれば、センチメント分析は良い解決手段となるでしょう。

まとめ

顧客をより深く理解するためには、定量データだけでなく、ソーシャルメディア投稿などの定性データも分析する必要があります。その手法の1つがセンチメント分析です。

センチメント分析を活用することができれば、製品やブランド、キャンペーンなどに対する顧客の反応を知ることができます。分析結果をもとに、より顧客に寄り添った姿勢で、次のアクションに繋ぐことができるでしょう。

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Ray Randall

Tableau コンサルタント。米国Tableau本社のエンジニア出身。

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