世界中でビッグデータの活用ニーズは高まり続けています。しかしながら、コストをかけ粉骨砕身集めたデータをテーブル形式にして眺めているだけでは、そのストーリーを理解し次のアクションに活用できているとは言い切れません。
データ分析作業において重要なのは「データの可視化」です。可視化により、既成概念に新たな切り口を与え、組織的に共有し、効果的な行動に繋げることが期待できます。
そしてデータ可視化する際に有効なツールが「BIツール」です。BIツールは「データ理解の深堀り」や「全社的な情報共有」の手段として、注目されています。今回はデジタルマーケティングの視点から、GA4の登場により比較される事が多くなった
- Tableau
- Looker Studio
を5つの側面から比較してみました。
データ可視化ツール(BIツール)とは
まず、Tableauの公式サイトのBIツールの定義を見てみましょう。
BI ツールとは意思決定や課題解決を支援するツール
BI ツールとは、企業が蓄積するさまざまなデータを集約してビジュアル化(可視化)し、分析し、インサイトを得ることで、データにもとづいた意思決定や課題解決を支援するツールです。
引用 : https://www.tableau.com/ja-jp/learn/articles/what-is-bi-tool
BIとはBusinessIntelligenceの略で、ビジネス上のデータを使って得られる知見の事を指します。BIツールはデータを可視化するなどして、その情報収集や洞察を得る際のサポートをする道具となります。今回比較するTableau、Looker StudioもBIツールのひとつです。
Tableauとは
Tableau(タブロー)はフランス語で「絵画」を指します。
Tableau Softwareというアメリカの企業によって開発されたBIツールで、2019年にSalesForceによるM&Aが行われ、現在はSalesForceが所有するツールとなりました。
~We help people see and understand data~
(お客様がデータを見て理解できるように支援します)
このミッションの下で開発されていて、他のBIツールと比較してもビジュアライズの機能充実に重きがおかれています。
Tableauの特徴 : 複数商品で展開しデータドリブン文化を支援
Tableauは役割別に複数の商品で展開されており、大規模にデータドリブンな文化を浸透させるには是非導入をおすすめさせていただきたいツールです。
※今回の記事での「Tableau」は「Tableau Desktop」という商品を指しています。
商品の例 :
- TableauDesktop・・・データを使ってグラフを作成する
- Tableau Prep Builder・・・データの加工をする
- Tableau Cloud/Server・・・データを組織内でシェアする
Looker Studioとは
Looker StudioはGoogleが提供するBIツールです。
もともと日本では「Google データポータル(旧:Googleデータスタジオ)」という名称で提供されていたサービスですが、有償版BIツールの「Looker」の展開と共に名称を「Looker Studio」に変更した経緯があります。
Looker Studioの特徴 : 無料で手軽に使用可能。Googleサービスのデータに強みがある
Looker StudioはGoogleアカウントさえ作成すれば無料で使用可能です。TableauがサポートしていないGoogle Search ConsoleやYouTubeといったGoogleサービスのデータも取得できるのが特徴です。
TableauとLooker Studioを5つの軸で比較してみよう
次の5点でTableauとLooker Studioの比較をしました。
- グラフ&得意な分析方法
- 学習環境の充実度
- 利用可能なデータソース
- 共有の仕方
- コスト
比較①グラフ&得意な分析法
比較軸 | Tableau | Looker Studio |
グラフの作り方 | 豊富なオプションで細かくカスタマイズ可能 | ・選択肢の中からデザインを選ぶ ・文字の大きさや色などを後から設定する |
得意な分析法 | 定点観測 – ◎ アドホック分析 – ◎ |
定点観測 – ◎ アドホック分析 – △ |
アドオンを使った追加機能 | 拡張機能 | Google Community Visualization |
■グラフの作り方
Tableau :
- 豊富なオプションで細かくカスタマイズ可能。
- 行や列などのパーツを画面に配置して作成する。
Looker Studio :
- 選択肢の中からデザインを選び、文字の大きさや色などを後から設定する。
- 表示したいグラフのテンプレートを配置してから中の値を設定する。
■得意な分析法
分析方法のカテゴリとして「定点観測(モニタリング)」「アドホック分析」という観点があります。
- 定点観測:全体の進捗状況を確認する。定型レポートを用いた分析
例 . 定型レポートを用いて、週次的に目標の進捗状況を確認 - アドホック分析:定点観測から出てきた疑問について深堀する為に行うその場限りな分析
例 . 該当年度を部分的に調査して報告
※分析方法の関係性にご興味のある方向けの公式の記事:定型レポートとアドホック分析を効果的に回す重要性
ここで筆者は、アドホック分析に関してはTableauがとくに得意という点をお伝えしたいです。理由は以下の3点です。
Tableauはアドホック分析が得意と言える3つの理由
- 直観的な操作方法で手軽に分析できる
ドラッグ&ドロップが中心の操作方法になるので思い通りにグラフを描きやすいです。 - アドホック分析で得た知見を素早く組織内に共有できる
セキュアなサイトがあるので安心してアップロードできます。 - 大容量データへの高い処理能力
独自のデータ形式を用いて大容量のデータの処理ができます。
■アドオンを使った追加機能
各ツールでは開発会社以外の第三者が開発した機能を追加機能として利用できます。これらを利用する事で、複雑なグラフの作成にかかる時間を短縮したり、標準機能以上に拡張した機能の開発ができたりします(一部有料)。
Tableau:拡張機能
Looker Studio:コミュニティ ビジュアリゼーション(2023/04/20時点 β版の展開)
比較②学習環境の充実度
比較 | Tableau | Looker Studio |
チュートリアル | あり | あり |
コミュニティ | ナレッジベース Tableau Community |
Looker Studio Help Community |
サンプル | Tableau Public | Report Gallary |
資格 | Tableau Desktop Specialist Tableau Certified DataAnalyst Tableau Server Certified Associate etc… |
なし |
■初心者向けのチュートリアル
それぞれのツールではチュートリアルが公式で提供されています。初心者の方にとって便利なサービスです。
■コミュニティ
質問をどこですれば良いのかという問題がありますが、TableauもLooker Studioもそれぞれコミュニティが存在しており、困った際はここで質問できます。
■サンプル
世界中のユーザが公開したダッシュボードを学べるサービスがあります。こうした共有サービスは、ユーザ同士の学びあいは勿論、勉強したことを世界に公開するのに最適な手段の1つとなります。
■資格
資格は体系的にツールを学ぶ効果的な手段の1つです。Tableauの資格制度は充実しています。一方、Looker Studioには資格はありませんでした。
ご紹介【Tableau初心者】Tableauのスキルロードマップ
弊社ではこれからTableauを学びたい方向けに「Tableauスキルロードマップ」という資料をご提供しています。導入後の社員育成の参考にもなりますので、ぜひご利用ください。
比較③利用可能なデータソース
利用可能なデータソースの種類(パートナーの商品は除く)
比較軸 | Tableau | Looker Studio |
データソース | 77個 | 21個 |
ローカルファイル(Excel, CSV) | 〇 | △(CSV形式のみ) |
■データソース
標準機能で扱えるデータソースの数を比べると、Tableauは77個、Looker Studioは21個と、Tableauの方が充実しています。しかし、デジタルマーケティング業界での主要なデータソースは充分抑えているといえます。以下はその例です。
例 . Tableau/Looker Studioの両方で扱えるデータソース
- MySQL
- PostgreSQL
- Amazon Redshift
- Microsoft SQLServer
- GoogleAnalytics(UA)
- Big Query
また、Looker Studioは主要なデータソースの他にTableauではサポートできていない様なGoogleサービスのデータソースを扱う事ができます。
例 . Looker Studioで扱えるGoogleサービスのデータソース
- GoogleAnalytics(GA4)
- GoogleSearchConsole
- YouTubeアナリティクス
- Google広告
※今回比較しているのは標準機能としてサポートされているデータソースです。どちらのツールも継続的にアップデートされていくため、接続できるデータソースが増えていくことが予想されます。
■ローカルファイル(csv, xlsx)
クライアントアプリケーションなのでローカルファイル(Excel、 CSV等)を扱える。
ローカルファイルには対応していない(CSV形式のファイルはアップロードして利用可能)。
比較④共有の仕方
BIツールで作成したダッシュボードは組織内での共有が推奨されています。共有用の仕組みを比較してみました。
比較軸 | Tableau | Looker Studio |
共有の仕方 | Tableau Cloud/Server | リンクによる共有 |
Tableau:TableauCloud/Server
Tableauでは共有専用のポータルサイトTableauCloud/Serverというプロダクトがあります。作成したダッシュボードやデータソースをこのようなサイトにアップロードして組織内で共有できます。
(TableauServer:オンプレミス、TableauCloud:Tableau社管轄の環境)
Looker Studio:リンクによる共有
作成したダッシュボードをGoogleワークスペース(※)の中の組織内のユーザを指定して共有します。
※Googleワークスペースとは?
Googleワークスペースとは、Googleの複数のソフトウェアやアプリケーションをひとまとめにしたソフトウェアパッケージのことを指します。それぞれ連携してして使用されるのが特徴です。
(例:Gmail、Googleドキュメント、Googleスプレッドシート、Googleスライド)
比較⑤コスト
比較軸 | Tableau | Looker Studio |
費用 | ライセンス別費用 (年間契約) Creator・・・約10万円 Explorer・・・約6万円 Viewer・・・約2万円 |
無料 |
Tableau:有料
Tableauは用途に応じたライセンスを選ぶ必要があり、それぞれ料金は異なります。
- Creator:データの可視化をデータの構築から行う人
TableauDesktopでダッシュボードを作成 - Explorer:作成されたコンテンツを使って洞察しアクションに繋げる人
TableauCloud/Server上のデータソースを使って新たな切り口でレポート作成 - Viewer:作成されたコンテンツを用いてビジネス的なアクションを行う人
TableauCloud/Serverにあるコンテンツから課題を見つけ改善策を実行
引用: データ活用を支援する価格体系
Looker Studio:無料
LookerStudioはGoogleアカウントさえ持っていれば無料で利用できます。
まとめ
以上、TableauとLooker Studioの違いのイメージはつきましたでしょうか?
Tableauの特徴
- ダッシュボードの開発から共有までを、複数のプロダクトでサポート
- 長期的にデータドリブンな文化を浸透させていきたい場合に有効な選択肢の1つ
Looker Studioの特徴
- 手軽さが優秀:Googleアカウントを持っている人なら誰でも作業できる
- 小規模な環境やとりあえずデータの可視化を取り入れてみたいという場合に効果のあるツール
それぞれの特徴を理解した上で、組織の文化や方針に合わせて有効な選択をしましょう。
最後に今回ご紹介した内容を表にまとめました。データ可視化ツール(BIツール)の導入のご参考になれば幸いです。
比較軸 | Tableau | Looker Studio |
グラフの作り方 | 豊富なオプションで細かくカスタマイズ可能 | 選択肢の中からデザインを選ぶ 文字の大きさや色などを後から設定する |
得意な分析法 | 定点観測 – ◎ アドホック分析 – ◎ |
定点観測 – ◎ アドホック分析 – △ |
アドオンを使った追加機能 | 拡張機能 | Google Community Visualization |
チュートリアル | あり | あり |
コミュニティ | ナレッジベース Tableau Community |
Looker Studio Help Community |
サンプル | Tableau Public | Report Gallary |
資格 | Tableau Desktop Specialist Tableau Certified DataAnalyst Tableau Server Certified Associate etc… |
なし |
データソース | 77個 | 21個 |
ローカルファイル(Excel, CSV) | 〇 | △(CSV形式のみ) |
共有の仕方 | Tableau Cloud/Server | リンクによる共有 |
費用 | ライセンス別費用 (年間契約) Creator・・・約10万円 Explorer・・・約6万円 Viewer・・・約2万円 |
無料 |
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