デジタルマーケティングにおいて、自然検索と検索連動広告の最適化は、検索連動広告という発明の「永遠の課題」と言ってよいかと思います。

弊社でも、2015年にトータルサーチカバレッジという指標(後述)および測定スキームの設計により、SEOと広告キーワードの最適化を提案してまいりました。また、ブランドキーワードのROI改善については、一定のノウハウを保有していました。

しかし、2018年に検索画面のGoogleショッピング広告(以下、ショッピング広告)が強化されることで状況は一変します。

SEOコンサルタントの立場としては、初めはショッピング広告を煩わしく感じたものです。しかしながら、認知の獲得や競合対策のためにはショッピング広告の出稿は不可欠であるという結論に至り、共存のための取り組みを試行錯誤することになりました。

この記事では、自然検索と広告(ショッピング広告を含む)の最適化に関し、2018年〜2020年現在で獲得したノウハウをまとめます。

同じ課題にあたる皆様への参考となれば幸いです。

ショッピング広告強化によるゲームチェンジ

2018年頃からECサイトにおいて、自然検索順位が下がっていないにもかかわらず、自然検索トラフィックが前年同月を20%以上下回るケースが散見されるようになります。

具体的には、ブランド名を含むキーワードを中心にCTRが最大半減する事象です。時期を照らし合わせると検索画面に表示されるショッピング広告の強化がCTR低下の直接の原因であることが明確となりました。

体感ですが、2018年はショッピング広告のノウハウが広く行き渡った時期です。各クライアント様とも主要な購買獲得チャネルの一つとしてショッピング広告を位置付け、強化を始めた時期と認識しています。

キーワード戦略の見直し

このようなポストショッピング時代においてまず着手するべきは、キーワード戦略の見直しです。「自然検索で獲得するキーワード」と「広告で獲得すべきキーワード」を改めて選定し直します。定量的に現状の洗い出しを行なった後、キーワード獲得方針をクライアント様と決めていきます。

特にショッピング広告は、商品名に出稿して購入見込みの高いユーザーの購買を後押しするだけでなく、商品カテゴリ名に対して認知を図るためにも使えます。

そのため、商品名ワードや品番ワードはショッピング広告で、ブランド名を含まないカテゴリ名ワードは自然検索で、という分類が必ずしも正解とは限りません。精度の高いキーワード選定のためには、トラフィック・平均掲載順位・CVといった定量的なデータが必要になります。

定量的な洗い出しには、以下のトータルサーチカバレッジの考え方が役立ちます。

トータルサーチカバレッジとは

トータルサーチカバレッジは、検索結果画面での総合クリック獲得率の指標です。キーワードごとに自然検索クリックと広告クリックの和を表示回数で割ることにより算出します。

この指標により、自然検索のみでクリックを維持できる(=広告を止めても影響がない)キーワードを判別することが出来ます。

参考:広告を全部止められた結果

今年の春の緊急事態宣言において、リスティング広告をほぼすべて停止された実例では、ブランドワードを中心に広告で取っていたトラフィックの約9割を自然検索で取り返す結果となりました(季節性などは考慮しない)。

チャネル別セッション比率(弊社作成)

すなわち、1割は取り逃がしということでもあります。この停止対応は約1ヶ月のことでしたが、後半になるに従って競合の対抗出稿が増え、自然検索の伸びは鈍化していきました。

目標の見直し

ポストショッピング広告時代では、目標の見直しも必要です。

例えば、自然検索トラフィックをKPIに設定していた場合には、ショッピング広告の出稿も考慮した上でフレキシブルに目標値を見直します。

到達不可能な目標を設定していると、ご担当者、コンサルタントを含むチームのモチベーション低下をもたらしてしまいます。

検索数増加のための取り組み

ユーザーおよび検索数が増えない限り相対的に1チャネルのトラフィックは減る、と上述しましたが、それならばと検索数を増やす、というアプローチも取り得ます。

このアプローチを特にお勧めするのは、ブランド認知にまだ伸びしろが存在する場合や、認知獲得媒体に現状積極的でない場合です。

ブランド名含むクエリ表示回数とクリック数の前年比較(数値は前年対比、弊社作成)

このケースは、自然検索数が昨年対比で大きく減少していた事例です。弊社との取り組みで、ブランディングのためにあえて新規媒体で出稿することで、自然検索数を回復させることができました。

認知広告とブランド検索との相関は、時に意外なほど分かりやすく見られます。

認知獲得施策が自然検索の増加に寄与したかどうかの判定には、特定の広告プラットフォームに備わった「ブランドリフト」「サーチリフト」指標を参照する方法があります。また、リーチ数と検索数・Googleトレンドの推移を見比べるなどのアナログな方法も考えられます。

最後に

この記事では「ポストショッピング広告時代のSEO」と題し、近年のSEOノウハウをご紹介しました。

2020年、図らずもデジタルマーケティングへの力点が強くなる一方、ユーザーの数が増えない限り検索画面上の競合は激化することが想定されます。そして今後は、集客全体を俯瞰し、SEOと広告の両者を連携することが常識となっていきます。

そしてこれはコンサルティング会社視点の所感ですが、SEOコンサルタント・広告コンサルタントとして分化していた役割から、互いの知識を身につけた「マーケティングコンサルタント」としてへとクラスチェンジしていくことが必要なのでしょう。

それらが難しい場合は、互いをつなぐ架け橋役の存在が基調となっていくと思われます。

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菊池浩之

一橋大学商学部卒。2016年プリンシプルへジョイン。2023年から新規事業開発部 責任者。解析、SEO、広告の知見を掛け合わせたアプローチによる実績多数。

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