SEOコンサルタントの外山です。
2022年4月に、Googleは「医療情報パネル」を日本向けにリリースしました。これは喘息やインフルエンザ、貧血などの一般的な疾患に関する信頼度の高い情報をより見つけやすくするための機能で、医療・ヘルスケアサービスを多数運営する株式会社メディカルノートが提供する、医師の監修を受けた信頼性の高い情報が表示されます。
詳細はGoogleの公式ブログ「検索で有用な医療情報へよりよいアクセス」を一読いただきたいと思いますが、今回のGoogleの対応は、多くの人々が自分や家族の医療に関して、信頼性の高い「正しい情報」を検索していることの表れであると考えます。
医療情報パネルの例(Googleの公式ブログより)
医療情報に限らず、人々がGoogleやYahoo!、Bingなどの検索エンジンを利用する際の目的の1つは「正しい情報を入手すること」ではないでしょうか。しかし「正しい情報」を入手することは簡単なことではありません。嘘の情報(フェイク・ニュース)や不確かな情報にだまされてしまう可能性もありえます。
本ブログ記事では、「正しい情報」を検索する際の心構えや注意点を、私なりにまとめてみようと思います。
目次
検索エンジンは「正しさ」を保証しない
まず最初に認識しておくべきことは、GoogleにしろBingにしろ、検索エンジンというものは「正しさ」を保証はしてくれない、ということです。
検索エンジンの主な役割は、ユーザーが入力した検索ワードに対して、そのユーザーの検索意図に対応する(マッチする)であろうページを、インターネット上の公開情報の中から、ユーザーに複数提案することです。しかしそのページに「真実が書かれているか」「正しいことが書かれているか」は保証はしてくれません。
冒頭で述べた医療情報パネルのように、できるだけユーザーに対して正確な、信頼できる情報を提示できるよう工夫はされていますが、それでも完全なものではありません。そのため、検索エンジンが提示したページに書かれている情報が「正しいかどうか」は、最終的には自分自身の頭で考えて、判断するしかないのです。
「23 x 14は」「日本とロサンゼルスの時差は」「円周率は」などの簡単な質問であれば、かなり正確な「答え」を検索エンジンが示してくれるでしょう。しかし「がんの有効な治療法は」「新型コロナウィルスの今後の見通しは」「円高はいつまで続くのか」と検索エンジンに問いかけたとしても、検索エンジンは、それらについて論じたページを提示するだけです。またその提示する順番(=掲載順位)も、「正しさ」に基づいて決められるものではありません。
自分の頭で考え、自分で判断する
そもそも「正しい情報」とは、そう簡単に入手できる訳ではありません。教科書に書いてあるような「正しい」こと、例えば「地球は太陽の周りを回っている」ということでさえも、多くの先人が多くの時間を費やして、多くの異なる主張との「戦い」を経て、ようやく「正しい」と認められるようになったものです。
現代でも、研究者が新しく発見したことがらの「正しさ」を主張しようとした場合、多くの研究者の厳しい目にさらされて(=ピアレビュー)、その「正しさ」を証明していく必要があります。そこに数年や数十年の時間がかかるケースも、決して珍しくはありません。
何かを「学ぶ」ことも大変ですが、その学ばれる側の新しい「知識」を産み出すには、その何倍、何十倍以上の時間と労力がかかります。だからこそ、「正しい情報」が「簡単に」入手できるとは、考えてはいけないと私は思います。「正しい情報」を入手するには、私たち自身も汗をかいて、努力して、時間をかけて、自分の頭で考えて、自分で判断するしかありません。それはとても大変だけれども、とても大切なことであると私は考えます。
「一次情報」にあたる
「正しい情報」にたどり着くために、自分の頭で考え、自分で判断する必要があるとは言え、検索エンジンがまったく役に立たない訳ではありません。検索エンジンは、「一次情報」を探すために非常に有益なツールです。
例えば冒頭の「医療情報パネル」について正確な情報を得たいと思ったならば、Googleの公式情報を調べるのが良いでしょう。このブログを書いている5月2日現在、Googleで「医療情報パネル」と検索すると、Google以外の様々な記事がたくさん出てきますが、1ページ目(10位以内)に、Googleのブログ記事も紹介されています。まずはこのGoogleの記事を読んで、医療情報パネルがどういうものかを理解した上で他の記事を読むようにすれば、誤った情報に迷うリスクは低くなります。
これは他のことでも同様で、何かを調べる際に、まずは企業の公式発表であったり官公庁がまとめているデータであったり、一次情報にあたって、それを理解した上で他の情報にあたることが大切です。一次情報は必ずしも分かりやすいとは限りませんが、そこは我慢して、努力して、一次情報を正しく理解することが「正しい情報」にたどり着くためには必要となります。
なお、以前私が書いたブログ記事「緊急事態宣言が発出される今、大事なこと」においても、一次情報にあたることの大切さに触れていますので、興味がある方は参考にしてください。
「多様な情報」に触れる
一つのものごとを検索する際に、多様な情報に触れることも大切です。例えば「新型コロナウイルスの今後の見通し」を知りたいと思った場合、首相官邸や厚生労働省、国立感染症研究所や日本医師会など、複数の情報源が存在しますし、研究者の間でも意見が割れていることもあります。複雑な問題であればあるほど、その答えが「ただひとつ」であることは稀であり、多くの「意見」や「見解」が、世の中には溢れているのが実情です。
SNSでは「自分にとって都合の良い情報」だけを選択しがちになるという話を、何かで読んだことがあります。そのため「目に付きやすい情報」だけを選んで触れるのではなく、検索結果画面で表示される複数の記事に目を通し、それを自分の言葉で咀嚼した上で、自分の頭で考えて判断することが、重要であると考えます。
新型コロナウイルスの蔓延により、様々な場面でデジタルシフトが進んでいる中、検索エンジンにもまた、「公平性」と「客観性」が求められています。それに呼応する形で、Googleはユーザーの問いに対して多様な検索結果を示すようになっています。私たちもまた、多様な検索結果に触れる必要があることを忘れてはいけないと思います。
「数字のマジック」に惑わされない
「130%達成」「20%改善」「満足度90%」などの数字は、分かりやすいが故につい信じてしまいがちですが、その数字には、様々な「前提条件」が存在することを忘れてはいけません。
まずはその数値が、何の集団を表した数値であるかを確認する必要があります。ウェブサイトの利用者全体の数字なのか、その一部の(サンプリングされた)値なのか、サンプリングの方法は何なのか、時期はいつなのか、データに偏りはないのか、外れ値が含まれていないか、などなど、その数字が「どのような集団」を「どのように」表しているかを、まずは前提として確認する必要があります。
そしてまた、その数値が20%などで表される割合であるならば、分母と分子を確認するのも有効です。何と何を比較しているのか、その比較方法は妥当なのかを確認することで、その数値の妥当性を判断するのです。
善良な記事であるならば、その数字の算出根拠は記事内のどこかに(注釈などの形で)記載されていると思います。逆に記載がないのであれば、その数字は鵜呑みにしない方が良いでしょう。
「信頼できる記事」を見抜く
数字の根拠が記載されていない記事は信じない方が良いと書きましたが、その記事が「信頼できる」かどうかを見抜く際には、以下も参考にすると良いでしょう。
- 他記事の引用である場合は、その出典が明記されているか
- 一般的な事実と、自分達の意見・見解とを分けて述べているか
- データや数値の限界について触れているか
- 記事の執筆者や発行主体が明記されているか
逆に言えば、自分で何かしらの記事を作成する場合には、これらのことに注意して、読者が誤解しないようにすることが求められると言えます。
「答えがない」場合もある
注意点の最後に、「問い」には必ず「答え」があるとは限らない、ということを認識しておく必要があります。私たちはともすれば、すべての「問題」には「解」があったり、すべての「結果」には「原因」があったり、すべての「行動」には「理由」があったりと考えがちですが、そうでない場合も十分にあり得ます。
「答え」を求めるあまり、でっちあげられた、創作された「答え」にとびつかないためにも、「答えがない」場合もあることを私たちは理解しておく必要があるでしょう。
さいごに
以上このブログ記事では、「正しい情報」を検索する際の心構えや注意点を私なりに解説しました。
現代社会では、テレビや新聞、書籍だけでなく、ネットを通じて、誰もが簡単に情報を入手できるようになりました。しかし残念なことに、世の中には嘘の情報をまとめた記事もあれば、あえて誤解させることを目的とした記事も、少なからず存在します。
ユーザーが探している情報が、医療に関する情報であったり、あるいはお金に関する情報であったり、日々の生活に直結するような情報であったりする場合、そのような「嘘の記事」や「誤解させる記事」にたどり着き、その内容を信じてしまった結果、取り返しの付かないことが起こり得る可能性もあります。
もちろん情報を発信する側や、その情報発信を手助けする私達SEOコンサルタントが、倫理観とモラルをもって行動することは言うまでもなく大切ですが、世の中には嘘の記事や誤解を招く記事、そして悪質なSEO会社が存在することも、また事実です。そのような残念な事実に対する私なりの抵抗が、今回のこの記事を書くことでした。この記事が、「正しい情報」を求める方々の、何らかの手助けになれば幸いに思います。