はじめに

SEOコンサルタントの外山です。

このブログ記事を執筆している2025年3月23日現在、Google検索のコアアップデート(年に数回ある、検索アルゴリズムとシステムの大規模な変更)である「the March 2025 core update」が進行中です。

Googleは具体的な内容を明らかにしていませんが、SEO関係者は、今回のアップデートで自身の担当しているサイトがどう動くのか、戦々恐々としているのではないかと思います。しかしコアアップデートにおいては、一回一回のアップデートの傾向を掴むのも大事ですが、Googleが「将来的に何を目指しているのか」を考えることも、それ以上に重要となります。

Google検索の最近の動きの1つとして、生成AI関係の強化があげられます。例えば「AIによる概要(AI Overviews)」は、色々な検索キーワードで表示されるようになりました。下図は「自動車保険」で検索した際の検索結果画面です(以前は「AIによる概要」は表示されていませんでした)。その他、試験運用が開始された「AI Mode」も、新しい検索手法として、大きな注目を集めています。

「自動車保険」を検索した際に表示される「AIによる概要」
「自動車保険」を検索した際に表示される「AIによる概要」

AI Mode(Googleの公式ブログより)
AI Mode (Googleの公式ブログ より)

このようなGoogleの動きに対応すべく、SEO界隈では、「AIO(AI最適化)」という言葉も登場しています。生成AIは、今後のSEOを間違いなく変えていくと思いますが、では実際のユーザーの検索活動には、どう影響を与えるのでしょうか。

博報堂買物研究所は、AIエージェントの活用で変わる新しい購買行動モデルとして「DREAM」を提唱し、AIエージェントとの対話(Dialogue)が、生活者の購買行動のプロセスの1つとなると位置づけています。

参考:博報堂買物研究所、「買物フォーキャスト2025」発表 AIエージェントの活用で変わる新しい購買行動モデル「DREAM」を提唱~「検索」から「対話」へ、「選択」から「承認」へ~ |ニュースリリース

生成AIの登場と普及により、ユーザーの検索行動は今後間違いなく変化するでしょう。ある意味では、今までよりも便利で、効率的に情報を検索することができるようになると思います。けれども一次情報へのアクセスや、「正しい」情報に基づいた「正しい」判断など、重要な「何か」が抜け落ちてしまうのではないか、そんな危惧も感じてしまいます。

「便利」とは、何かを「省略」したり何かを「効率化」することで得られるものです。ではいったい生成AIは、何を「省略」して何を「効率化」しているのでしょうか? そしてユーザーは、何に気を付けるべきなのでしょうか。

本ブログでは、生成AI時代においてユーザーに求められるネットリテラシーを、私なりの観点(=価値観)でまとめていこうと思います。やや長文になりますがお付き合いください。

1. 「便利」になることで抜け落ちるもの

「便利」とは、何かを「省略」したり「効率化」することで得られるものでもあります。では生成AIは何を「省略」しているのでしょうか。ずばり、ChatGPTに聞いてみました。

プロンプト:
生成AIは確かに便利なものですが、「便利」というのは、何か(情報やステップ)を省略したことにより得られるものであると思います。生成AIは、どのようなものを省略していますか?

結果、以下の6つが省略されるとの回答を得ました。そのそれぞれについて、生成AIの回答に、人間の私がコメントしていきます。

生成AIにより省略されるものとその影響・リスク(ChatGPT回答)

省略されるもの 影響・リスク
情報の出典・文脈 出典不明・誤情報のリスク
多様な視点 主流意見だけが強調される
思考プロセス 深く考える機会が減る
一次情報 検証する力が弱まる
考える時間 思考力・表現力の低下
実体験・感情 人間らしい洞察が減る

 

a.情報の出典・文脈の省略

生成AIによる回答:

生成AIは、複数の情報源から学習したデータを元に要約・再構成するため、元の情報の出典や文脈を省略することがよくあります。

  • 出典が明示されない(どこからの情報なのかが分かりにくい)。
  • 情報の背景が抜け落ちる(例えば「なぜそのデータが重要なのか?」という部分が欠ける)。
  • データの一次ソースが分からず、検証が難しくなる。

例:
GoogleのAI要約で「○○の市場規模は前年比20%増加」と出てきても、そのデータがどの機関のレポートから来ているのか不明なことが多い。


外山コメント:最近では生成AIによる回答に対して、根拠となる参考ページへのリンクもあわせて提示されることが多いですが、これらのリンクをどれくらいのユーザーが実際にクリックして、元のサイトを閲覧しているかは疑問が残るところです。

例えば先程例示した、Google検索における「自動車保険」のAIによる概要には、元となったサイトとして7つのサイトが表示されていますが、それらのサイト全てをしっかり閲覧しているユーザーは、少ないのではないかと思います。

b.情報の選別・多様な視点の省略

生成AIによる回答:

AIは「最も一般的」「最も確からしい」情報を提供する傾向があり、それによってマイナーな意見や異なる視点が省略されることがあります。

  • 少数派の意見や専門的な情報が出てこない(主流の情報だけが強調される)。
  • 「安全な回答」に寄りがち(偏りのない一般論になり、鋭い洞察が失われる)。
  • 社会的に議論のあるトピックでは、無難な答えにまとめられる(例えば「〇〇は倫理的に問題があるか?」と質問しても、議論の幅が狭まる)。

例:
AIに「再生可能エネルギーの課題は?」と聞くと、よくある課題(コスト・不安定性)だけが出てくるが、「地域ごとの政治的対立」などのより専門的な論点が省略されることがある。


外山コメント:AIによる回答が「標準的」で「平均的」なものになりやすいのは、「多数派バイアス」「平均化効果」「安全回答化」などと呼ばれているそうですが、生成AIの仕組みからすると、仕方の無いことかもしれません。

一方で、「多数が賛同する意見が、必ずしも「正しい」意見ではないこともある」は、人類の歴史が教えてくれます。

c.思考プロセス・試行錯誤の省略

生成AIによる回答:

人間が情報を理解し、判断する過程では、

  • 「情報を集める」
  • 「比較する」
  • 「吟味する」
  • 「考えを深める」

といったステップを踏みますが、生成AIはこのプロセスを一気にスキップしてしまいます。

その結果:

  • 情報を鵜呑みにしやすくなる(自分で調べる習慣が減る)。
  • 思考が浅くなる(自分で分析しないため、考えの深まりがない)。
  • 「なぜ?」を問う機会が減る(AIが答えを出してくれるので、疑問を持たなくなる)。

例:
学生がレポートを書く際、本来ならば複数の資料を読んで考えるプロセスが必要だが、AIに「○○についてのレポートを書いて」と頼めば、瞬時にそれっぽい文章が生成されてしまう。


外山コメント:人間がある「答え」にたどり着いたとして、その「答え」を「正しい答え」として選択する(判断する)ためには、そこに至るまでの「プロセス」が重要であることがあります。人間が「情報を検索する」というその行為は、自分の中の「不安」を「確信」に、「迷い」を「決意」に変えていくプロセスでもあります。

自身が関与しないプロセスで導き出された「答え」は、例え「正しい」としても、納得感はないかもしれません。それは個人だけでなく、組織でも同じであると思います。

d.原典・一次情報へのアクセスの省略

生成AIによる回答:

生成AIの要約や解説機能が発達すると、元の一次情報にアクセスする必要がなくなることがあります。

  • 原典を読まなくなる(AIの要約だけで満足してしまう)。
  • 一次情報の検証ができない(AIの内容が「正しい」か確かめる機会が減る)。
  • 誤情報に気づきにくくなる(AIが誤った情報を生成した場合でも、それを信じてしまうリスクがある)。

例:
論文を読むとき、本来ならば「このデータの背景は?」「著者はどんな立場?」といった点も考慮するが、AI要約では「結論」だけが提示され、それ以外の重要な要素が省略される。


外山コメント:一次情報にアクセスすることの大切さは、過去、「正しい情報」を検索する際の心構えや「緊急事態宣言が発出される今、大事なこと」という記事でも言及したことがあります。

「情報の出典・文脈の省略」と近いかもしれませんが、例え出典が明記されたとしても、そこに一次情報が含まれているとは限りません。オリジナルの情報源(ソース)であったり、官公庁や企業の公式発表であったり、あるいは調査の生データであったりにアクセスすることは、時間のかかる大変な作業ではありますが、とても重要な行為です。

e.「考える時間」の省略

生成AIによる回答:

生成AIは即座に回答を提供するため、人間が考える時間や試行錯誤する過程を省略します。

  • じっくり考える機会が減る(すぐに答えを得られるので、考えを深める時間がなくなる)。
  • 自分の言葉で整理する力が衰える(AIが文章を生成してくれるので、表現力が低下する可能性)。
  • 独自の視点を持ちにくくなる(自分で考えたアイデアよりも、AIが出した答えを優先しがち)。

例:
アイデアを考えるとき、本来ならば「ブレインストーミング → 比較 → 絞り込み」というプロセスが必要だが、AIに「面白いアイデアを出して」と聞けば、それっぽい答えがすぐに出てしまう。


外山コメント:すべてのことを自分で考える必要はないとは思いますが、「自分の頭で考える」という行為は、自分の思考のスタイルや判断の核となる「価値観」を形作る上で、重要なプロセスでもあります。

人生においては、「自分の頭で考えて答えを出さないといけない問題」も多く存在します。そのような問題に自分なりの「納得のいく答え」を出すためにも、「考える時間」や「試行錯誤の時間」は重要であると考えます。

f.実体験や感情の省略

生成AIによる回答:

生成AIはデータに基づいて答えを出しますが、実際の経験や感情を伴う視点は省略されがちです。

  • 人間ならではの経験に基づく知恵が抜け落ちる。
  • 感情や価値観の多様性が反映されにくい(AIは「一般的な傾向」に寄りがち)。
  • 本当の意味での「学び」にならない(経験を通じて得た知識とは異なる)。

例:
「起業するための心構えは?」と聞けば、一般論的な答えは出るが、実際に起業した人の「失敗経験」や「葛藤」といった要素は反映されにくい。


外山コメント:情報検索においては、たどり着いた「答え」に対する自身の「納得感」も重要です。そしてその「納得感」は、「答え」に至るまでのプロセスにより形成されるとともに、実体験や感情によって形成されるものでもあります。

実体験や感情の伴わない「模範解答」は、例え「正しく」ても、ユーザーに受け入れられることは難しいのかもしれません。

以上、ChatGPTに聞いた「便利になることで抜け落ちる6つの要素」についてコメントしてきました。結論として、私は生成AIによって、

  • 「正しい情報」にたどり着く力
  • 「正しい情報」を判断する力

という、人間の重要な能力が奪われてしまうのではないか、と考えます。

2. 「正しさ」とは何か?

ところで、今までこのブログ上では「正しい」という言葉をかぎ括弧つきで表現していました。それは「正しさとは何であるか」を、しっかりと考える必要があると思ったからです。

私が考える「正しさ」とは、大きく以下の2種類に分かれます。

真偽:客観的な正しさ 事実であるかどうか
是非:主観的な正しさ 自身や組織・社会の価値感・倫理観・原則(プリンシプル)にあっているかどうか

 

「正しい情報」にたどり着く力とは「真偽を見抜く力」であり、「正しい情報」を判断する力とは「是非を判断する力」と言い換えることができます。AI時代に必要となるこの2つの力を、深く考えていきます。

3. 「真偽」を見抜く

AI時代に求められる第一の力は、客観的な事実であるかどうか、「真偽」を見抜く力です。そのためには、以下の5つが重要であると考えます。

a.「事実」と「主張」を分けて考える

まず重要なのは、あなたの目の前にある情報、たとえばSNSで流れてきた投稿や、検索エンジンで検索した際に表示された内容を、客観的な事実と、その事実に対する発信者の主張(個人的考え)とに分けて考えることです。たいていの情報は「事実」と「主張」に分けて考えることができ、そして「事実」に対しては「真偽」を、「主張」については「是非」を考えることが重要となります。

このことは、研究者の研究発表や、コンサルタントのクライアントへの提案、あるいは部下から上司への報告などにおいても同じで、事実と主張を分けることは重要です。事実は何で、それに対する自分の主張(仮説)はどうで、その主張の確からしさはどのように保証できるかなど、これらを整理しないと、議論は混乱して前に進みません。

ちなみによく耳にする「それってあなたの感想ですよね」という言葉は、「主張」に対するものであって、「事実」に対するものではないと思います。よって、この言葉によって「主張」が揺らぐことはあっても、「事実」は揺らがないと私は考えます。

b.出典を確認する習慣をつける

事実と主張を切り分けたとして、事実の真偽を見抜くには、出典を確認するのが特に重要となります。その事実の根拠が誰かの発言であるのなら、その「誰か」を特定し、ものごとの真偽を把握できる立場にいるかどうかを明確にします。真偽を把握できない立場にいる人間の「事実」に対する発言は、単なる「憶測」でしかありません。

Google検索の「AIによる概要」で表示される解説文の中には、事実が自明のものもあるかもしれませんが、少しでも疑問に思った内容については、出典元をまずは調べ、出典元のページを確認する癖をつけることが重要であると考えます。

c.一次情報にアクセスする

出典元として一番確実なのは、一次情報です。政府の報告であれば、その報告をした官公庁のサイトの報告書を、企業の発表内容であれば、その企業のコーポレートサイトのプレスリリースを辿れば、詳細な情報が記載されています。

一次情報は「一次」情報であるが故に、内容が多く、分かりやすく要約されていないこともあります。そのため、その一次情報をサマライズしたまとめサイトや、あるいはYouTubeなどの切り抜き動画を参考にすることもあるかもしれませんが、そこには「情報発信者」の意図が入り込むことがよくあります。要約を読むにしても、一次情報の発信者(政府や企業)自身がまとめた要約文を読むのが良いでしょう。

d.複数の情報源を比較する

一次情報にアクセスすることは重要ですが、場合によっては、一次情報にアクセスできない場合や、一時情報があてにならない場合もあります。例えばある事件があったとして、その事件の当事者が2人以上存在し、そのそれぞれの言い分が食い違う場合などです。

その場合は、複数の情報源を比較することが重要となります。片方の意見だけを聞いて事実だと決めつけることはせず、双方の意見を読み込み、さらには第三者の意見も考慮の上で事実の「真偽」を判断します。

e.「真偽」が見抜けない場合も考慮する

事実の「真偽」は、後述する「是非」の判断よりも、客観的に判断できる分、見抜くのは容易と思われるかもしれません。しかし「真偽を見抜く」のは、そう容易なことではありません。当事者が嘘をいっていたり、当事者でない人達が嘘の情報を拡散したり、事実そのものが隠蔽されたり、様々なことが「真偽」を見抜くことを困難にします。

そんな際に重要なのは、「真偽を安易に決めつけない」ことだと私は思います。常に調べ続け、考え続け、検証し続ける。その姿勢がやがては真偽にたどり着くのだと、私は思います。

4. 「是非」を判断する

AI時代に求められる第二の力は、主観的な主張の「是非」を判断する力です。ところで、客観的な事実の「真偽」とは違い、様々な主張の「是非」は、どのように判断すれば良いのでしょうか。

私は「是非の判断」とは、「基準に合致するかどうか」であると考えます。ここでいう「基準」とは、個人の価値観や倫理観、組織のルールやクレド、社会の法規や慣習といった、個人が、組織が、社会が大切にしている原則(プリンシプル)と言えるものです。

これらの「基準」に「合致するかどうか」「(合致しない場合は)近いか遠いか」が、是非の判断では重要となります。

a.自分の価値観を知る

何らかの方法によって提示された「答え(情報)」を「正しい」と判断するためには、その個人にとっての「納得感」が必要です。そしてこの納得感は、自身の価値観にその「答え」が合致しているかどうか、近いかどうかが重要となります。

人は、今までの人生の経験によって、今まで積み重ねてきた思考によって、読んできた書物や会ってきた人々によって、生まれ育った国や環境によって、その人特有の価値観を持つに至ります。この価値観は、生成AIには所有できないものであると私は考えます(そう信じています)。

「是非」を判断するには、まずはこの自身の価値観をより深く知ることが重要です。すなわち、自分が何に喜び、何に怒り、何に悲しみを感じるか、それらを自分の言葉で表現することです。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」は孫子の言葉ですが、自身を知ることはとても重要なプロセスです。

b.異なる価値観を意識し、耳を傾ける

みなさんは「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。これらはともに、インターネットやSNSなどで自分の意見に近い情報ばかりを目にすることで、考えが極端になったり、偏ったりする現象のことを指します。

「是非」の判断には自身の価値観が重要な要素となります。しかしその自分の価値観が、常に「正しい」とは限りません。自身の価値観を知り、その上で相手の主張を聞き、相手の価値観を知り、その上で更に、総合的な判断をする。場合によっては、今までの自身の価値観を「アップデート」する。それが「正しい判断」であり、その積み重ねこそが「正しい議論」であると、私は考えます。

インターネットやSNSは、ともすれば自らの価値観を「先鋭化」させます。それは、オウム真理教のような「破壊的カルト※」とよばれる組織集団にも共通した特徴でもあります。

※破壊的カルトについては、個人的にまとめたこちらのnoteをお読みください。

c.批判的思考を鍛える

SNSで流れてくる情報、有名なYouTuberが発信している情報、あるいはAIが提示してきた情報を鵜呑みにせず、「本当にそうか?」と疑問を持つことも重要です。

その情報が事実なのかと真偽を見抜き、その「主張」の裏にある価値観を知り、その価値観と自らの価値観の違いを知る。頭の半分では傾聴して同意しながらも、頭の半分では「本当にそうかな」と考え続ける。

それはとても大変なことですが、「自分の頭で考える癖」をつくり、自身の価値観を形成し、アップデートしていくために、とても重要なことであると考えます。

d.他人やAIに責任を押しつけない

AIはあくまで情報収集や考えを整理する上での補助ツールであり、それ以下でも以上でもありません。それは検索エンジンや、友人や家族、同僚や上司も同様です。

自身の行動や判断の最終的な責任は自分にあり、誰にも転嫁することはできません。それゆえ、自身の判断はどんなに大変でも、自分自身が行わないと「意味」がないのです。

5. まとめ:AI時代のネットリテラシー

以上、本ブログではAI時代に求められるネットリテラシーとして、「正しい情報に基づいて正しい判断をする力」、すなわち「真偽」を見抜く力と、「是非」を判断する力について説明してきました。

これらは一朝一夕で身につくものではなく、様々な情報を検索しては、自分の頭で判断するといった、試行錯誤によって身につくものです。人生は「判断」と「選択」の連続ですが、それらをできるだけ自分の力で、自分の頭で行うことで、これらの力が磨かれていくと同時に、自分の中に「判断の基準」とも言える「価値観」が醸成されていきます。様々な検索や判断をAIに任せてしまうことは、ある意味では「自分で自分の価値観を醸成する機会」が奪われているといえるかも知れません。

ここまで読まれた方の中には、「生成AIの登場でいろいろなことが便利になっているのに、人間はまだ苦労しないといけないのか」「生成AIに任せて、もっと楽をしたら良いのではないか」と考える方もいらっしゃるのではと思います。

本論の最後に、私の「価値観」の1つを紹介して締めくくりたいと思います。

ここで述べたネットリテラシーを身につけることは、決して楽なことではありません。あらゆる情報の真偽の判断に一次情報を求め、すべての是非判断で他者の(自分とは異なる)価値観と対峙することは、現実的ではないですし、決して「簡単」でも「楽」でもなく、「楽しく」もないでしょう。また、終わりもありません。

けれども私は、人間は決して「自分の頭で考えること」を放棄してはいけないし、それを追求し続けなくてはいけない、と信じています。

それは何も生成AIに限った話ではありません。自らの頭で考えることを放棄し、それを他人に、例えば親に、組織に、国家に、あるいは教祖に委ねてしまった結果起きてしまった悲劇を、私達は繰り返してはいけないのだと、強く思うのです。

生成AIは革新的な技術であり、人間の情報探索を一段階、レベルアップしてくれます。AIは人間の情報探索を楽に、効率的にしてくれますが、一方でAIを使うことで、自分では気付きにくい新たな視点を与えてくれたり、自分の思考をより深みあるものにしてくれたりもします。私はAIは、自分を更に高めるための「壁打ち相手」や「トレーナー」として活用すべきものだと考えます。

今後も、生成AIはますます進化していくことでしょう。そしてもしかしたら、人間の能力を遙かに超えてしまうかも知れません。そんな時代でも、AIと人間が「対等な関係」であるために、人間は「自らの頭で考えること」を放棄してはいけないと、私は信じています。

本ブログが、皆様の一助になれば幸いに思います。

(了)

Liner Notes(あとがき)

本ブログは、2023年5月に公開した「SEOとはユーザーの検索活動への「寄り添い」である」から、約2年ぶりの執筆となります。きっかけは、会社の同僚(かつ戦友)の菊池さんから、「生成AI時代のメディアリテラシー」というようなテーマでブログを書いてみないかと、打診を受けたことでした。今までおぼろげながら考えていたテーマでもあったため、これを機に、思い切って書いてみることにしました。

今回のブログ記事は、生成AI(ChatGPT)と対話しながら作成しました。参考までに、私とChatGPTとのやりとりを下記URLで公開します。

https://chatgpt.com/share/67db9638-3890-800b-86f1-9d4f894fb41b

このブログを書いている最中に、2025年3月20日を過ぎました。地下鉄サリン事件から30年が経ちました。今回、AI時代のネットリテラシーという題目ではありましたが、あのような事件が二度と起こらないためにという想いもこめ、文章を書き上げました。

おそらくこの文章は、生成AIには書けない、私にしか書けないものになったのではないかと自負しています。文章の執筆を通じて、自分の価値観(=大事にしている考え)を再発見できました。これを機に、またブログ執筆をしていきたいと思います。

(本当の了)

お気軽にご質問、ご相談ください

関連タグ

外山大

東京大学大学院、修士課程修了。11年間の文部科学省勤務の後、ITベンチャーにてメール配信システムやウェブサイトの開発に従事。

関連資料

関連サービス

関連ブログ