ファネルモデルとフライホイールモデルは、両方ともマーケティング戦略の理解と実行に役立つ概念ですが、アプローチには違いがあります。
ファネルモデルは顧客の購買プロセスを段階的に捉え、認識、検討、購入といったステップを示します。一方、フライホイールモデルは、顧客との関係を連続的なサイクルとして捉え、顧客の満足度や関与度を重視します。
この記事では、両者の特徴やWeb広告におけるKPIへの落とし込み方法について詳しく解説します。
ファネルモデル、フライホイールモデルとは
マーケティングにおいて、「ファネルモデル」と「フライホイールモデル」は、顧客の獲得と維持に関する異なるアプローチを示すモデルです。
まず、以下にそれぞれのモデルについて説明します。
ファネルモデル(Funnel Model)とは
ファネルモデルは、顧客の購買プロセスを段階的に示す、逆三角形のような形状のモデルです。このモデルは、見込み客が最終的に顧客になるまでのプロセスを段階ごとに表現します。一般的には以下の段階があります。
- 1. 認知(Awareness):見込み客が製品やサービスの存在を知る段階
- 2. 興味(Interest):製品やサービスに興味を持ち、情報を収集し始める段階
- 3. 検討(Consideration):他の選択肢と比較し、検討する段階
- 4. 意図(Intent):購入の意図を固め、具体的な行動を考える段階
- 5. 購入(Purchase):実際に購入する段階
ファネルモデルは、見込み客が各段階を進むにつれて数が減少することから、ファネル(漏斗)の形状で表現されます。
フライホイールモデル(Flywheel Model)とは
https://www.hubspot.jp/flywheel より引用
フライホイールモデルは、顧客の獲得だけでなく、顧客の維持と満足度向上に重点を置いたモデルです。これはHubSpotが提唱したモデルで、顧客が中心にいる円環状のモデルです。フライホイールは以下の要素から構成されます。
- 1. 引き寄せ(Attract):見込み客を引き寄せるための活動(例:コンテンツマーケティング、SEO、広告など)
- 2. 関与(Engage):見込み客と関与し、信頼関係を築くための活動(例:メールマーケティング、ウェビナー、カスタマーサポートなど)
- 3. 喜ばせる(Delight):顧客を満足させ、彼らがブランドの擁護者となるようにするための活動(例:優れたカスタマーサービス、パーソナライズされた体験、アフターサービスなど)
フライホイールモデルでは、顧客の体験がすべての段階で重要視されます。顧客満足度が高まると、その満足した顧客が新たな見込み客を引き寄せる原動力になるという考え方です。これにより、ビジネスの成長が持続的に維持されます。
ファネルモデルとフライホイールモデルの違い
ファネルモデル | フライホイールモデル | |
---|---|---|
アプローチの焦点 | 新規顧客の獲得 | 顧客の満足と維持、そして顧客が新たな顧客を引き寄せること |
プロセスの形状 | 上から下へ一方向に進む漏斗の形状 | 顧客の体験が次の顧客を引き寄せる循環的な形状 |
持続性 | 終点(購入)を持つ | 終点がなく、顧客体験がビジネスの成長を持続させる原動力となる |
これらのモデルは、それぞれのビジネス戦略や目標に応じて使い分けられます。
Web広告におけるファネルモデルとフライホイールモデルのKPI項目の違い
フライホイールモデルとファネルモデルでは、それぞれ異なるところに重点が置かれるため、KPI(Key Performance Indicators:主要業績評価指標)も異なります。以下に、両者のKPIの違いを示します。
ファネルモデルのKPI
トップオブファネル (TOFU)(Awareness ~ Interest)
- KPI:インプレッション数、CTR(Click-Through Rate)、セッション数、新規訪問者数など
- 目的:ブランド認知度を高め、トラフィックを増やす
ミドルオブファネル (MOFU)(Consideration ~ Intent)
- KPI:リード数、リードコンバージョン率、フォームの提出率、ダウンロード数など
- 目的:リードの獲得、興味関心を持った潜在顧客を特定する
ボトムオブファネル (BOFU)(Purchase)
- KPI:コンバージョン率、取引数、売上高、購買率など
- 目的:購買や行動へのコンバージョンを促進する
フライホイールモデルのKPI
引き寄せ(Attract)
- KPI:新規顧客数、トラフィックの成長率、取引数
- 目的:新しい顧客を獲得し、フライホイールを動かす
関与(Engage)
- KPI:リピート購入率、顧客満足度スコア、顧客の維持率、顧客のエンゲージメント率など
- 目的:顧客の満足度を向上させ、リピート購入や口コミを促進する
喜ばせる(Delight)
- KPI:リピート購入率、顧客の継続利用率、顧客のロイヤルティスコア、顧客からの紹介率など
- 目的:既存顧客との関係を維持し、顧客のロイヤルティを高める
ファネルモデルでは、顧客の段階に応じてトップ、ミドル、ボトムの各段階で異なる指標が重視されます。一方、フライホイールモデルでは、顧客獲得から育成、維持までの全体的なプロセスが重視され、顧客満足度やロイヤルティを測る指標が中心となります。
ファネル・フライホイールモデルの適用フェーズ
ビジネスの成長段階や顧客獲得のフェーズに応じて、ファネルモデルとフライホイールモデルの適切な適用を検討し、マーケティング戦略を展開することが重要です。
両モデルの適用フェーズを見ていきましょう。
ファネルモデルの適用が適しているフェーズ
スタートアップフェーズ(初期段階)
- 目的:ブランド認知度の向上と新規顧客の獲得。
- 理由:新規ビジネスや新製品を市場に投入する段階では、まずブランドを知ってもらい、顧客基盤を構築することが重要です。ファネルモデルは、潜在顧客を引きつけ、興味を持ってもらい、最終的に購買行動に導く一連のプロセスに適しています。
- 施策:広告キャンペーン、コンテンツマーケティング、ソーシャルメディア広告などを活用して認知度を高めます。
成長フェーズ
- 目的:顧客基盤の拡大と売上の増加。
- 理由:この段階では、すでに認知されているブランドが新たな顧客を獲得し、売上を増やすことにフォーカスします。ファネルモデルを活用して効率的にリードを育成し、コンバージョンを高めることが求められます。
- 施策:リードジェネレーション、メールマーケティング、リードナーチャリングキャンペーンなど。
フライホイールモデルの適用が適しているフェーズ
成熟フェーズ
- 目的:顧客満足度の向上と顧客ロイヤルティの強化。
- 理由:すでに確立された顧客基盤を持つビジネスは、顧客満足度を高め、顧客ロイヤルティを強化することが重要です。フライホイールモデルは、顧客エンゲージメントを持続的に高め、既存顧客のリテンションやリピート購入を促進します。
- 施策:顧客サポートの強化、ロイヤルティプログラム、パーソナライズされたマーケティング、アンケート調査など。
拡大フェーズ
- 目的:既存顧客を通じた新規顧客獲得と市場シェアの拡大。
- 理由:既存の顧客が満足している場合、彼らを活用して新規顧客を獲得できます。フライホイールモデルは、顧客の推奨や口コミを促進し、持続的な成長をサポートします。
- 施策:顧客からのフィードバックを基にした製品改良、紹介プログラム、カスタマーサクセス活動の強化など。
まとめると、
- ファネルモデルは、新規顧客の獲得と売上の増加が主な目標となるスタートアップフェーズや成長フェーズに最適です。
- フライホイールモデルは、顧客満足度やロイヤルティの強化、既存顧客からの紹介による新規顧客獲得が重要な成熟フェーズや拡大フェーズに最適です。
これらの適用フェーズはビジネスの成長段階や目標に応じて異なりますが、適切なモデルを選択し、効果的に活用することで、ビジネスの成果を最大化できます。
まとめ
ファネルモデルとフライホイールモデルは、マーケティング戦略における有用なツールであり、顧客との関係を築く上で欠かせない要素です。
この2つのモデルの特徴を理解し、適切なKPIを設定することで、企業は顧客により価値を提供し、持続的な成長を達成できます。結局のところ、顧客中心のアプローチがビジネスにおける成功の鍵となることを忘れてはなりません。
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