筆者は2021年2月に弊社プリンシプルへSEOコンサルタントとしてジョインしました。主には中〜大規模サイトを中心に、テクニカルSEO領域のご支援を遂行してきました。
近年は検索結果画面の多様化や情報探索行動の変容(例えば、ゼロクリック検索の増加)などといったパラダイムシフトもあり、単純に狙ったKWで自然検索1位を獲得しても、パフォーマンスを最大化させることが困難になってきたと感じています。加えて、SEO担当者の責任や役割も多岐に渡るようになり、従来の枠を超えた知識や技術が必要な時代になったと考えています。
そんな中、会社事情など紆余曲折あり、2024年4月から広告コンサルタントとしての活動を開始しました。
この記事では、広告コンサルタントになって6ヶ月の経験の中で私が感じたことをまとめます。広告コンサルとしては新参者の筆者であり、経験不足な内容があるかもしれませんが、温かい目で見守っていただけますと幸甚です。
SEOと広告の相違点
SEOと広告(主に検索広告)はGoogleやBingなど各検索エンジンの検索結果画面を舞台に最適化していく活動であるため、しばしば比較されることがあります。(それぞれ出面の違いや課金体系、費用対効果の観点などよく比較される項目については、本記事での説明は割愛します。)
両者の違いを最も分かりやすく表現すると、SEOは農耕業、広告は水産業と言い換えられます。
SEOは効果がみえるまでに時間を要します。農作物も畑を耕し、種を植え、毎日水やりを行い、数ヶ月後に収穫となります。SEOも同じくして、インデックスさせたいページをしっかりと検知させ、検索エンジンにサイト全体やページコンテンツを理解してもらい、ターゲットKWに対してユーザーが求めている解が提供されているか、が主なフローとなります。
一方で、広告は1日ごとの漁獲量(稼ぎ)が勝負となります。もし期待以上の稼ぎが得られていないのであれば、直ちに方針を練り直す必要があり、漁獲量によって日々の運用方針も柔軟に変わっていきます。
広告運用の醍醐味
広告運用の醍醐味として、下記のようなことを実感しました。
- 検索語句単位でCV数をトラックできる
- 迅速なPDCAの回転
- AIや機械学習の発展
検索語句単位でCV数をトラックできる
広告運用を開始し、真っ先に感じたことは、検索語句単位でCV数がトラックできる点です。
これまで流入KWの文脈では、Google Search Consoleを用いて実際に流入したKWを捕捉していましたが、CVまで追うことは難しいというのが実状でした(力技で推定することは可能ですが)。
検索広告では検索語句別にパフォーマンスを確認することができ、どの検索KWがCVに貢献できたのか把握することで、さらに分析の幅が広がっていきます。検索語句レポートを活用することで、SEO領域のパフォーマンス改善に役立てられます。
迅速なPDCAの回転
主にはGoogle広告が対象ですが、広告運用ではABテスト機能の活用など、SEOと比較してより迅速にPDCAを回すことが可能です。
既存キャンペーンとテスト用キャンペーンを作成しパフォーマンスを比較することで、テスト結果にどれぐらいの有意性があったかが検証され、その結果を元にパフォーマンス改善が図れます。広告管理画面上から簡単に設定ができるため、工数も省力化できます。
AIや機械学習の発展
2024年7月、Google広告の部分一致がインテントマッチへと名称が変更されました。機械学習の発展により、言語学の処理機能が向上し、人間の言語を理解する能力が大きく向上したと言われています。
これまで以上に、Googleの検索システムは人々の検索の背後にあるインテント(検索意図)をより深いレベルで理解・把握できるようになりました。検索システムの精度が向上したことで、ユーザーの真の検索意図を理解でき、最も関連性のある広告を表示させることができます。
Google公式ドキュメントを参照しますが、例えば「一人旅 温泉」という検索キーワードを設定した場合、「湯治の湯」や「大宮から電車で行ける温泉」などの検索語句を拾っていきます。指定した検索キーワードは含まれていませんが、ユーザーの検索意図(インテント)とマッチしたと解釈されます。つまり、「キーワードの部分一致」から「検索意図の一致」へと移り変わったと理解できます。
ユーザーの検索意図の背後にある真のインテントを探ることで、クリエティブやLP改善の参考として、また新規ビジネスへの飛躍にも役立つかもしれません(定期的な除外KW設定など細かい運用は依然として必要になるでしょうが)。
広告運用からみたSEOの重要性
広告運用を経験して、SEOの重要性も改めて実感できました。
SEO市場への投資は伸びていく
コロナ禍以降、業界全体でDX化やデジタル化の動きが加速する中、企業はオンライン市場における存在感を確立させることが求められています。
以下は、海外の調査会社が提示したSEO市場の投資予測であり、投資需要は2031年まで増加傾向と推測されています。加えて、2024年から2031年にかけてCAGRは17.68%まで成長すると予測されています。
※ CAGR(Compound Annual Growth Rate): 年平均成長率
ここにはさまざまな要因が隠れていそうですが、背景の1つに、Cookie規制問題が影響しているのではと考えます。
2024年7月にGoogleはCookie廃止への方針を変更しました。当面の間は「ユーザーによる選択」を前提に3rd Party Cookieを利用し続けることが可能ですが、将来的には現時点よりも制限がかかる可能性が高いと考えられます。
すでに一部OS環境を含むChromeやSafariなど多くのブラウザでCookieによる制限がある中で、企業は中長期的に費用対効果の高いSEOへの投資熱が高まっているのではとも捉えられます。
ユーザーの検索体験は重要である
Web広告ではLPを設定することで、ユーザーの遷移先ページを柔軟に指定できます。広告用LPであれば、デザインや訴求内容を自由にカスタマイズ・調整できるため、それなりに高いCVRを獲得することが可能です。
しかし、近年ユーザーはバタフライ・サーキットと呼ばれるように検索行動に一貫性がなく、多様な検索クエリで情報を収集し、流入経路も多岐に渡ります。加えて、若年層を中心にSNS内でのキーワード検索が増えているといった情報もあるぐらいです。
このように多様化する検索行動を、検索エンジン(特にGoogle)は重要視しています。実際、ユーザーにとって「何のページがわからない」「サイト内でリンクが切れている」「情報が探しにくい」「サイトが非常に重い」などといった検索体験(UX)を阻害するサイトは、自然検索からの評価も低下する傾向があります。
個人的な考えですが、SEO担当者はサイト全体の根幹を司る役割を有していると考えています。データベース系サイトでは、カテゴリ構造や内部リンク設計、重複ページのindex制御などのトピックがよく議論されます。「サイトをどう設計するか」といった根幹に携わる領域であり、とても重要なポジションになります。
見込みユーザー獲得の機会損失を防ぐためには、広告だけに依存せず、サイト全体の検索体験を向上させることが引き続き重要となるでしょう。
まとめ:顧客の利潤を最大化することが重要
この記事では、広告コンサルタントになって6ヶ月の経験の中で私が感じたことを、広告・SEOそれぞれの視点からまとめました。
最後に、SEOや広告にはそれぞれ得意・不得意があり、性質も異なります。これらはあくまでも集客の1つの手段でしかなく、顧客の利潤をどう最大化するかが最も重要だと私は考えます。
ビジネスは時流によって常に変化し、顧客の興味・関心や情報探索行動も同時に変化するため、
- 一次情報に触れる
- 新しいテクノロジーに触れる
- 新技術や物事の背景にある物語を理解する
- 別領域への研鑽
など、日々アップデートをしていくべきと改めて考えさせられました。