広告運用の世界では、「Google広告で成果が出ているから、Microsoft広告も同じようにやればいい」と考えてしまいがちです。しかし現実はそう甘くありません。媒体ごとにユーザーの検索行動も、入札構造も、広告の表示形式も異なります。

特に今、見直すべき媒体がMicrosoft広告です。本記事では、その改善プロセスと戦略的打ち手を、マーケティング責任者視点でわかりやすく解説していきます。

広告運用における「見落としがちな盲点」と、Microsoft広告の再評価

国内の検索エンジンシェアに目を向けると、2024年1月時点でのデスクトップ検索ではBingが15.76%と、Yahoo!を上回るシェアを獲得しています(Google:74.74%、Yahoo!:8.04%)。これは、Microsoft Edgeの普及やWindows OSとの連携強化により、ビジネスシーンを中心にBingの利用が着実に増加していることを示しています。

さらに、Bing広告はGoogleに比べて競合が少なく、CPCが抑えられる傾向もあります。検索ユーザーの属性もBtoBや高所得層が多く、効率的なアプローチが可能です。

とはいえ「Microsoft広告は成果が出にくい」「使ってみたけどイマイチだった」という声も多く聞かれます。実際にあるアパレル系ECサイトでも、導入初期は苦戦続き。しかし、運用を見直すことで前年比でROAS・売上ともに大幅に改善することができました。

Microsoft広告は“Googleのコピー”では通用しない

このアパレル系ECサイトがMicrosoft広告の配信をスタートさせたのは、Google広告である程度の成功を収めた直後のことでした。

初期設定では、Google広告で使用していたキャンペーン構成をそのままMicrosoft広告にインポート。キーワード、広告文、入札戦略まで、ほぼ変更なしで運用を開始しました。

しかし、その結果は想定外のものでした。

  • CPC(クリック単価)は他媒体に比べて異常に高い
  • クリック数が伸びず、コンバージョンも低調
  • ROAS(広告費用対効果)は他媒体の数分の一

特に問題となったのは、「自動入札」と「マッチタイプの曖昧さ」でした。Microsoft広告でも“目標ROAS”による自動入札を採用していたものの、媒体特有の配信ロジックやユーザー層の違いにより、想定通りに機能しませんでした。

改善施策実施の積み上げスタート!

施策① 表示面と広告構成の見直しから着手

初動で成果が出なかった理由のひとつが、Google広告と同じキャンペーン構成のままMicrosoft広告に展開したことでした。検索ボリュームや競合環境が異なる中で、同じ広告文・同じ入札戦略を適用しても、当然ながら効果は限定的です。

そこでまず取り組んだのが、「表示面の最適化」です。具体的には、以下のような施策を段階的に導入していきました。

  • 通常の検索広告に加え、画像付きフォーマット(マルチメディア広告)を併用
  • Microsoft広告独自の表示オプション(動画/アクションリンクなど)を最大活用

これらの工夫によって、CTR(クリック率)の改善には成功しました。しかしながら、CPC(クリック単価)は依然として高く、費用対効果の大幅改善には至らず。

この段階で得た示唆は明確でした。

「目立つ広告」を作ることと、「成果が出る広告」を作ることは別物である。

施策② 自動入札を制御する“人の手”

媒体のアルゴリズムに委ねるのではなく、人の判断で運用をコントロールすることが鍵でした。

  • キーワードの種類を限定(完全一致/フレーズ一致のみに絞る)
  • 無関係な検索クエリによる無駄クリックを削減
  • 上限CPCの設定
  • CVが発生しやすい時間帯への配信強化

これらの施策を、商品カテゴリやターゲット層ごとにチューニングしていくことで、一部のカテゴリでは前月比150%以上の売上増加を実現。ROASが大きく改善し始めました。

施策③ 広告表示オプションのフル活用

Microsoft広告には、Google広告にはない独自の拡張機能が存在します。これを活用しない手はありません。

特に効果的だったのが以下の3つです。

  • 動画表示オプション
  • フィルターリンク拡張
  • アクションボタン拡張

*参考:広告表示オプションを使用してキャンペーンを促進する | Microsoft Advertising

これにより、広告のクリック率が改善し、媒体内の広告ランクも向上。最終的にCPCの抑制にもつながるという好循環を生み出しました。

施策④ 商品広告とリターゲティングの再構築

成果の出ないスマートショッピング広告は撤退し、代わりに以下を実施しました。

  • 手動調整が可能なショッピングキャンペーンへ切り替え
  • 動的リマーケティングを閲覧履歴別に細分化して入札調整

特に後者では、閲覧からの経過日数ごとにセグメントを分け、 閲覧直後のユーザーには入札を強化、30日以上経過したユーザーには抑制といった調整を実施。

結果、動的リタゲ経由のCV数は前月比2.5倍に増加しました。

成果と考察

Microsoft広告におけるパフォーマンスは前年比で売上・ROASともに大幅に改善。各施策の単体効果はもちろん、“施策の積み上げと整合性”が最大の成果要因となりました。

戦略的な「手動運用」が、再現性を生む

AIやスマート自動化が主流になっている今だからこそ、「人の戦略的判断」が武器になります。

今回の学びは以下の3点に集約されます:

  • 媒体ごとに“前提条件”が異なることを理解する
  • ベストプラクティスの鵜呑みではなく、自社アカウントに合った最適解を見極める
  • すべてを自動に任せるのではなく、手動調整を組み合わせていくことで、成果をコントロールできる

Microsoft広告は「成果が出にくい媒体」と思われがちですが、正しい打ち手を積み重ねれば、確実に伸ばすことができる媒体です。Microsoft広告で成果が出ない、これから出向したけれど不安というマーケティング担当者は、ぜひプリンシプルへご相談ください。

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鈴木夕加里

広告コンサルタント。長年ECサイト運営で培った「徹底したエンドユーザー視点」が強み。

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