2021年、Google広告で新プロダクト「P-MAX(パフォーマンス最大化キャンペーン)」がローンチされました。入札はおろか、クリエイティブ、配信面、ターゲティングをも完全自動化を特徴とするP-MAXですが、どのように活用すればよいかわからないという声もよく聞かれます。
そんな中、2022年9月末までには、スマートショッピングキャンペーンとローカルキャンペーンがこのP-MAXへアップグレードされ、以降は、新規にスマートショッピングキャンペーンとローカルキャンペーンが作成できなくなります。
この記事では、これから重要性が増す新プロダクト「P-MAX」に必要なことと、設定のTIPSをご紹介します。
まずは知りたい、Google広告「P-MAX」って何?
Google P-MAX(パフォーマンス最大化キャンペーン)は、これまでの検索、ディスプレイ、ショッピングなどのキャンペーンを一つにまとめ、Googleの全広告枠を配信対象とし、与えられた目標に向かって予算内で最大のパフォーマンスを目指すためのキャンペーンです。
大きな特徴として、世界で最も優れていると言われるGoogleの機械学習による自動化が挙げられます。もちろん、これまでも入札やターゲティングにおいても機械学習が活用されてきましたが、P-MAXではその範囲と深度が拡大された形です。
運用者がアセット、費用、目標を設定するだけで、パフォーマンスが最大化できると判断した入札、ターゲット、クリエイティブ、配信面を自動最適化してくれるのがP-MAXです。
これだけ聞くと夢のように感じるP-MAXですが、一方で、デメリットもあるため注意が必要です。
メリット
- パフォーマンスの良い配信面へ予算が自動で振り分けられるため、効率よく予算を使用できる。
- 複数のテキスト、動画、画像、ロゴを一つのアセットとして登録すると、機械学習が最適な組み合わせのクリエイティブを自動作成してくれるため、手動で複数パターンのクリエイティブを作成する必要がない。
- Google広告のあらゆる既存広告プロダクトが配信対象となるため、これまで配信できていなかった配信面のポテンシャルが発掘できる。
- ファネル全体に渡り、様々な属性のオーディエンスから価値が高いと判断されたユーザーをターゲットにするため、これまで取りこぼしていた良質なユーザーへリーチが広げられる。
デメリット
- 2022年3月時点では、広告が配信された場所と、広告の表示回数のレポートしか確認できない(クリック数、CVのレポートがない)。
- クリエイティブが自動生成されるため、どの組み合わせになってもコンテクストが不自然にならないよう配慮が必要。
- 手動ターゲティングができないため、特定の行動を行ったユーザーに対する限定的な訴求ができない。(例:休眠ユーザーをシークレットセールへ誘導する)
上記のようなデメリットを把握した上で、レポーティングの方向性やキャンペーン構成の改善判断を事前に決めておく必要があります。
Google広告「P-MAX」の配信に必要なものは?
さて、前述のようなメリット・デメリットを理解した上で、P-MAXの配信が決定した後に準備すべきことを解説していきたいと思います。
①目標の決定
P-MAXで利用できる目標はたった2つ。「コンバージョン数の最大化」と「コンバージョン値の最大化」のみです。既存キャンペーンのように、クリック数の最大化や目標インプレションシェアは利用できません。
また、コンバージョン数の最大化では目標コンバージョン単価を、コンバージョン値の最大化では目標費用対効果を設定可能です。ただし、配信当初から高い目標値を設定すると配信が縮小してしまう傾向があり、機械学習に必要なデータが収集できなくなる可能性があります。なので既存キャンペーンの実績を目標とするところからスタートすることをおすすめします。
その目標がクリアできたら、少しずつ目標値を上げていき、最終的にビジネス目標へ調整していくと、想定外の事態が発生しにくいです。なおGoogleは、目標達成のために十分な機械学習データが得られるよう、少なくとも 6週間はキャンペーンを継続することを推奨しています。
②CV計測基盤の整備
P-MAXはコンバージョン数の最大化とコンバージョン値の最大化が目標となるため、Google広告上でCVが計測できていることが必須になります。特に、コンバージョン値の最大化を目標とする場合、CV値の計測も必須です。
もしキャンペーン目標が「未認知層へのブランド認知拡大」であれば、ユーザーにブランドが認知されたと判断できるサイト内の行動をCVとして計測する設定が必要となります。もし、CV計測基盤が整備できていない場合は、まず、このタスクを完了することから始めてください。
ただし、Googleは、「自社のビジネスにとって本当に重要なコンバージョンを選んで、測定し注視することが重要」としています。BtoBなら成約につながるようなリード獲得、BtoCなら注文完了がそれでしょう。この考え方に則ると、ブランド認知拡大が目的ならば、既存キャンペーンによるクリック数の最大化や目標インプレッションシェアの利用検討も視野にいれるべきでしょう。
また、GA4の推奨イベントが設定されている場合、Google広告とGA4を連携することで推奨イベントをそのままキャンペーンのCVとして設定することが可能です。
※GA4の推奨イベントについては、プリンシプルデータ解析コンサルタント・村松のブログ記事「Googleアナリティクス4徹底解説 マーケターが押さえるべき知識と対応」がわかりやすく解説しています。ご興味のある方はぜひご一読ください。
③オーディエンス シグナル
既存キャンペーンでは、検索なら入札KW、ディスプレイやファインドならターゲティングで配信するユーザーをコントロールしていました。P-MAXでは、これらのコントロールは機械学習による自動最適化に置き換わります。KWやターゲットの設定の代わりに使用するのが「オーディエンス シグナル」です。
シグナルとは、機械学習が最適化するため、過去実績や訴求に基づき「こんなオーディエンスは価値が高いですよ」ということを学習させるためのデータです。ターゲティングと違って、該当するオーディエンスにだけ広告が配信されるというものではないことに注意です。
オーディエンス シグナルには下記が利用可能です。
- カスタムセグメント:過去にGoogle検索で利用した検索ワードや、ダウンロードしたアプリ、訪問したサイトに基づくユーザー
- データ:リマーケティングリストやカスタマーマッチリストなど、サイトやサービスの利用状況に基づくユーザー
- 興味/関心と詳しいユーザー属性:ユーザーの興味や関心、ライフイベント(引っ越しや結婚、転職など)、詳しいユーザー属性(子供の年齢、配偶者の有無、最終学歴、住宅保有状況など)に基づくユーザー
- ユーザー属性:性別、年齢、子供の有無、世帯収入に基づくユーザー
④アセット
P-MAXは下記アセットを登録することで、配信面やユーザーに合わせて機械学習が最適化した組み合わせを自動的に生成してくれます。
アセットの内容
- 最終ページURL
- 最大 15 枚の画像
- 最大 5 個のロゴ
- 最大 5 本の動画(ない場合、画像からGoogleが自動生成してくれる可能性があります)
- 最大5つの広告見出しテキスト(半角30文字まで)
- 最大5つの長い広告見出し(半角90文字まで)
- 半角60文字までの説明文1つと半角90文字までの説明文4つ
- 行動を促すフレーズ
- 会社名
- 表示 URL のパス
ここで心がけたいのが、
- アセットはできるだけ上限まで用意すること
- 見出しや説明文の各アセットユニークであること
- より幅広い広告枠に配信されるよう、画像は下記3サイズを用意すること
- 横長の画像(1.91:1)推奨サイズ: 1200×628最小サイズ: 600×314
- 正方形の画像(1:1)推奨サイズ: 1200×1200最小サイズ: 300×300
- (省略可)縦画像(4:5)推奨サイズ: 960×1200最小サイズ: 480×600
- どんな組み合わせになっても不自然にならないこと(同じテキストが重複するなど)
また、アセットはオーディエンスシグナルと「アセットグループ」としてセットになります。そのため、オーディエンスシグナルに対して訴求力をもたせることが重要です。
⑤商品フィード、Google ビジネス プロフィールアカウント
2022年9月以降、スマートショッピングとローカルキャンペーンはP-MAXへアップグレードされます。スマートショッピングから移行して利用する場合は、Google Merchant Centerを介して商品フィードを紐付けること、ローカルキャンペーンから移行して利用する場合は、Google ビジネス プロフィールと連携することが必要になります。
スマートショッピングとローカルキャンペーンの移行先としてP-MAXを利用する場合、広告枠が一気に広がります。そのため、アセットグループの構成やアセットを十分に検討することが望まれます。また、レポートできる数値が大幅に縮小するため、この点についても事前に関係各所ですり合わせておきましょう。
既存配信メニューとP-MAXの使い分けは?
検索もディスプレイも動画もショッピングも、あらゆる広告枠をカバーするP-MAXですが、既存のキャンペーンもP-MAXへ移行したほうが良いのでしょうか?
答えは、「慎重に」です。
Googleは、既存のキャンペーンも配信しつつ、パフォーマンスを確認しながら徐々に移行することが望ましいとしています。中でも、Merchant Center フィードを利用している場合は特に注意を促しています。
P-MAX キャンペーンは、同一アカウント内の既存ショッピングキャンペーンよりも優先されるため、P-MAXを開始すると、ショッピングキャンペーンの広告掲載が少なくなります。ECサイトでは、ショッピングキャンペーンが売上の比重を大きく占めるケースも多数あるため、十分な配慮が必要です。
P-MAXは、ローンチして間もないキャンペーンであることに加え、これまでにない基軸のロジックを採用しているため、最新情報を収集しながら慎重に進めていくことをおすすめします。
ともあれ、スマートショッピング、ローカルキャンペーンに限って言えば2022年9月末にはP-MAXへアップデートされるため、今から万全の準備を整えておくべきでしょう。