生成AIがブームになった2023年でしたが、年末のホリデー商戦を前に、米国では早速Product Studioがベータ提供され始めました。
Google Marketing Liveをご覧になった方は想像がつくかもしれませんが、結論からいうと、この機能は数ある商品の中で特に修正したい、いくつかの商品の画像を改善するための機能と捉えるのが良いでしょう。
2023年末時点でこの機能を利用する前提と、この機能の恩恵を受けやすいのはどのような場合か、考察してみました。
Product Studioとは、商品画像を改善してくれる生成AI
この機能は商品データフィードを使った広告(ショッピング広告など)を利用している場合に、商品画像の背景を生成AIで編集してくれたり、商品画像の解像度を超解像技術で向上してくれる、というものです。
具体的にはGoogleマーチャントセンターNextで利用可能な機能(2023年12月執筆時点では米国のみでベータ版が提供)で、商品の編集画面から利用可能です(下画像)。
事前の発表の通り、機能は3種類です。
- シーン生成:背景を指定した雰囲気に合成してくれます。
- 背景編集:背景を削除し、商品画像単体が見えるようにできます。
- 解像度向上:解像度の低い画像を使っている場合、解像度を高くしてくれます。
Product Studioの名前はどこにも表示されませんが、Google Marketing Live中に出てくるキャプチャと全く同じですので、この機能の名前で間違いなさそうです。
「シーン生成」は指定した文章に合う背景を合成してくれる
早速シーン生成から使い方をみてみます。
手順は以下の5ステップです。
- 1. 背景を合成する画像を選択する(すると自動的に商品だけを切り抜いてくれる)
- 2. 選択した画像に写っている商品を説明する(この場合「Sushi」です)
- 3. 背景に合成したいシーンのイメージを文章で書く
- 4. 画像が生成されるまで待つと、4種類の画像が提案される
- 5. 利用したいものを選択し、商品に適用する
百聞は一見にしかずですので、以下のキャプチャ画像をご覧ください。
シーン生成では「背景編集」「解像度向上」も同時に行う
シーン生成のプロセス中、商品画像の背景を自動で削除してくれることがわかります。
またシーン生成中のUIでは「解像度を向上しています」の文言も表示されるため、事前にその2つの処理を行っておく必要などはありません。
よって、「背景編集」「解像度向上」はそれ単体で使いたい人向けに解放されているサブ機能と考えて良いでしょう。
コツはプロンプトの工夫 x 試行回数
2023年12月時点で、日本語でもプロンプト(生成して欲しいものを表す文章)の入力自体は可能ですが、出てくる結果が英文で書いた場合とで全く異なります。
画像生成AIに触れたことがある方ならばご存知かもしれませんが、ここは生成AIのモデルが学習した言語に左右されるようで、これが日本ではなく米国から展開を開始する理由の一つでしょう。
ステップ3の下方には、シーン説明のサンプルも表示されており、言語設定が英語の場合はこれを選択するだけでサンプルにあるような画像を生成することができます。
しかし言語が日本語の場合、サンプルで入力される文章も日本語になり、生成される画像も文章の意味するところとは全く異なるものになってしまいます。
これは機械翻訳による言語対応がなされれば、ある程度適切に処理できるようになるかもしれませんが、その際の細かいプロンプトの調整ができないという新たな問題に直面するかもしれません。
実用上のボトルネックは生成時間
生成される画像のクオリティーを上げることは無料で何度でも可能です。ただし、プロンプトを書いた後、生成を実行してから実際に画像が生成されるまでには、最大40秒かかる、とUI上記載されています。
実際に手元で何度か実験した限り、生成されるまでに15〜30秒程度はかかりましたし、満足のいく画像が得られるまで最低4〜5回は試行する必要がありそうです。
つまり1商品の1画像を改善するだけで、プロンプトの入力時間を含め5分は間違いなくかかるため、商品画像100枚を改善しようとすれば丸1日係の作業になってしまうため、実用上はここが最大のボトルネックになるでしょう。
今後、生成画像枚数が選択できるようになったり、バックエンドの処理スピードが上がればここも改善されるかもしれませんが、商品数の少ない零細事業者であれば、商品画像を改善することができ、恩恵を受けやすいでしょう。
まとめ:広告での効果を上げる一つのツール
生成AIツールはまだ提供され始めたばかりですので、これからAPI経由で一括改善なども出てくる可能性はありますが、広告や無料ショッピング枠の効果を高めてくれる無料のツールとして、取り組める方は使ってみるのが良いでしょう。
ちなみにこの機能で生成した画像は、現時点ではダウンロード可能(かつ余計なマークなども入らない)です。生成した画像をオリジナルのデータフィードに組み込み直すことで、Google広告以外でも恩恵を受けることができるかもしれません。
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