デジタルマーケティングにおいて「ブランディングを目的とした広告の成果を定量的に明らかにしたい」というお題は、ここ1〜2年特にお問合せが増えたように感じます。

サイトでのコンバージョンを目的としたパフォーマンス型(レスポンス型)広告は成果測定しやすくPDCAも回しやすいですが、一方でブランディング広告は定量的に評価しづらく上手く改善できていないというのが実情ではないでしょうか。

実際ブランドリフトやサーチリフト調査には一定の時間がかかり、またアンケートツールには時間に加えて費用がもかかります。そのため、ブランディングが必要でもリソースが確保できなければ、無作為にブランド広告が運用され、費用が垂れ流されるというアンハッピーな事態に陥ってしまいます。

今回はそのような事態を打破するべく、データドリブンなブランディング広告戦略を実現するためのKPIをご提案します。

記事の内容

  • 当記事における「ブランディング広告」の定義
  • ブランディング広告で分析すべき3つのKPI

当記事における「ブランディング広告」の定義

「ブランディング」は非常に奥行きのある概念です。今回はデジタルマーケティングにおいて一般的に用いられる意味合いの、認知を目的とした広告を「ブランディング広告」として話を進めます。

媒体は「ディスプレイ」「動画」に絞ります(出稿者が意識をすれば検索連動広告もブランディング広告と言えなくもないですが)。

マーケティングファネルと媒体の構造を模式化すると以下の通りです。

またマーケティングの目的は「新規顧客の獲得」とします。

ブランディング広告で分析すべき3つのKPI

ブランディング広告からコンバージョンにへつながる導線を整理すると、以下イメージの通りです。

本稿では、以下の3つのKPIをピックアップしてご提案します。

  • アトリビューション
  • 新規ユーザー転換率
  • ブランド検索数(月間検索ボリューム)・クエリ表示回数

1. アトリビューション

アトリビューションは最も古典的な評価方法です。

しかしアトリビューションは、クリエイティブに対するアクション(クリックなど)のみを評価し、目に触れただけの場合(リーチ)は評価しないため扱いには注意が必要です。

確認方法

Google Analyticsにおいてはアトリビューションレポートを確認することができます。詳細は「アトリビューションについて – アナリティクス ヘルプ」をご参照ください。

2. 新規ユーザー転換率

「新規ユーザー転換率」は拙稿で提案する新指標です。

一般的にディスプレイ広告や動画広告のCTRはサーチやリタゲに比較して低くなる傾向があります。そのため出稿量に比してクリックは集まらず、ラストクリックによるコンバージョンを追いかけづらいと言えます(パフォーマンス広告としてディスプレイや動画を出稿する場合にはクリックを取れるクリエイティブも存在しますが)。

新規ユーザー転換率は、1. アトリビューションにおいて評価できなかったリーチ(目に触れただけ)を評価するための指標です。

以下の式で算出する新規ユーザー転換率により、クリエイティブ及びターゲティング・プレースメントの出稿が新規ユーザー訪問に如何に寄与したかを計測・評価します。

新規ユーザー転換率=(自然検索・パフォーマンス広告・ソーシャル経由の新規ユーザー)/リーチ(およびビューアブルインプレッションなどの露出指標)

この指標に基準値を設定し、悪化した場合にはクリエイティブ及びターゲティング・プレースメントいずれかが足を引っ張っている可能性を検討し、原因分析のうえ打ち手を実施します。

この指標を用いると、「どれだけ配信させられたか」という配信量(=お金を積めば目標達成可能)の報告に留まる稚拙なレポーティングから大きく脱却できます。しかし事業者やプロダクトのイベントに大きく左右されるため、毎月指標を握り直して運用する必要があります。

確認方法

この新規ユーザー転換率の定常的なモニタリングについて、新規ユーザーはGoogle Analyticsから取得可能ですが、効率化のためにはレポートのカスタマイズ、Excelワーク、またはGoogleデータポータルなどのBIが必要です。

3. ブランド検索数(月間検索ボリューム)・クエリ表示回数

ブランド検索数(月間検索ボリューム)は、ユーザーによるブランド認知を定量的に表す数値と言えます。

別記事「ポストショッピング広告時代のSEO」でもご紹介の通りブランド露出と検索数は時に分かりやすく相関が見られるため、ブランド検索数の変化と照らし合わせて施策を評価します。

また、サーチコンソールで確認できるクエリの表示回数は、そのクエリを検索してSERPs(検索結果一覧)に表示された自社サイトの検索結果の数です。クエリに対して複数のページが表示された場合には複数集計されるため検索回数よりも上振れしてしまいしますが、サーチコンソールのデータは短期間(1〜2日)で結果が分かるため、施策の結果の概要を素早く知りたい際には重宝します。

確認方法

月間検索ボリュームはGoogle広告の「キーワードプランナー」から、クエリ表示回数はサーチコンソールの検索アナリティクスレポートからそれぞれ確認することができます。

キーワードプランナーはデータの更新に2ヶ月程度を要します。

最後に

ブランディング広告は、ともすると配信量が出れば良い、というのみで戦略性なく運用されてきた傾向があり、そのために見直しのために近年お声がけいただく機会が増えたのではないかと考えています。

掲示した「新規ユーザー転換率」は運用にはひと手間かかりますが、広告の成果を事業者・コンサルとも検証可能にしてくれ、ディスカッションにつながりやすいというメリットがあります。

また掲示のものに限らず、ブランディング広告の成果を測る指標は課題やケースに応じて設計が可能です。広告を出しているだけのデジタルブランディング施策に問題意識をお持ちの方は、設計に頭を巡らせてみてはいかがでしょうか。

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菊池浩之

一橋大学商学部卒。2016年プリンシプルへジョイン。2023年から新規事業開発部 責任者。解析、SEO、広告の知見を掛け合わせたアプローチによる実績多数。

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