「ユーザーが購入や申込に至るまでをモデル化したもの」を一般に、購買行動モデルと呼びます。

この記事では、この購買行動モデルについて、古典的なAIDAからソーシャルネットワーク時代におけるULSASモデルまでの6種類を紹介します。さらに購買行動モデルの広告での活用例もご紹介します。

購買行動モデルの概要

購買行動モデルは、消費者が商品やサービスを購入するまでの過程を理解するためのフレームワークです。1920年代から存在する思考法で、時代の変化に合わせてさまざまなモデルが提唱されてきました。この記事では代表的な購買行動モデルを紹介します。

購買行動モデルの重要性

購買行動モデルは消費者行動を理解するためのフレームワークとして活用できます。消費者が商品やサービスを認知してから購入にいたるまでの行動をフレームワークに落とし込むことで、自社のマーケティング戦略の検討やカスタマージャーニー作成に役立てることができます。

購買行動モデルは時代の変化、ユーザーとの接点の多様化などを背景にさまざまなモデルが提唱されています。自社のユーザーに合うかどうかや、マーケティングの領域を加味しながら選択すると良いでしょう。

マスメディア広告時代の購買行動モデル

テレビや新聞折込を経由して不特定多数へ向けて発信する広告が中心であった時代の購買行動モデルに、AIDA(アイダ)やAIDMA(アイドマ)があります。これらはその後の購買行動モデルと比べると、Actionまでが1サイクルとなっている点が特徴です。

以下ではAIDA(アイダ)とAIDMA(アイドマ)を紹介します。

AIDA(アイダ)

AIDAは、購買プロセスを理解し、効果的な広告やマーケティングコミュニケーションを設計する際に役立ちます。ただし、このモデルは単純で古典的なもので、現代の複雑な消費者行動に対応するために他のモデルが使用されることが多いです。

AIDAモデルは、製品やサービスの広告戦略の設計において、顧客の心理的な過程を考慮に入れるのに役立つフレームワークとして長い間使用されてきました。

またAIDAが元となり、マーケティングファネルというユーザーがプロセスを進める中で離脱していく状況を表現したフレームワークが生まれています。こちらのブログで紹介していますのでご参照ください。

1. Attention(注意)
商品やサービスの認知を拡大する段階です。消費者やユーザーはまだ商品やサービスを認知しておらず、広告などを通じて顧客へアピールする必要があります。魅力的なキャッチコピーやビジュアル、興味を引く情報を使用して、ターゲットオーディエンスの注意が向くようにします。

2. Interest(興味)
注意を引いた後、消費者やユーザーの興味を引いてもらう段階です。商品やサービスの利点、特長、価値提案を示し、顧客に関心を持ってもらいます。

3. Desire(欲望)
興味を持った消費者やユーザーに対して、購入へのモチベーションを高めるような情報を提供します。商品やサービスが顧客のニーズや欲望を満たし、他の選択肢よりも優れている点をアピールし、他社との優位性を示します。

4. Action(行動)
最終的な段階は、消費者やユーザーに具体的な行動を促すことです。これは、商品やサービスの購入、無料トライアルの申し込み、問い合わせフォームの送信など、成果となるコンバージョンポイントに関連します。

AIDMA(アイドマ)

AIDMAは、上記のAIDAモデルにMemory(記憶)が追加された購買行動モデルです。Action(行動)の前にフェーズが追加されたことで、Action(行動)に至るまでにユーザーと接点を増やすことが重要になっていることが読み取れます。こちらも長く活用されてきたフレームとなります。

1. Attention(注意)

2. Interest(興味)

3. Desire(欲望)

4. Memory (記憶)
消費者やユーザーに対し、商品やサービスの記憶を呼び起こす段階です。一度欲しいと思ってもその場限りで忘れてしまうこともあり、商品やサービスを継続的に思い出してもらう、記憶にとどめてもらう必要があります。そうすることで次のActionにつなげやすくなります。

5. Action(行動)

インターネット時代の購買行動モデル

インターネットの一般化により、消費者自ら商品やサービスを検索できるようになりました。またブログの拡大により、消費者が情報発信者となるケースもあり、Action(行動)のあとの行動にShare(共有)が追加されたのがインターネット時代の特徴です。

以下では、AISAS(アイサス)とAISCEAS(アイシーズ)の2つを紹介いたします。

AISAS(アイサス)

AISASは電通が提唱したマーケティング理論です。上記のAIDMAモデルをベースにネット時代の購買行動を反映したものになっています。インターネットの一般化により、消費者がネット検索を行うようになり、またAction後に共有するという行動が追加されています。

1. Attention(注意)

2. Interest(興味)

3. Search(検索)
消費者が興味を持った場合、さらに詳細な情報を求めて情報収集を行う段階です。消費者が商品やサービスについて情報収集し、比較検討を行います。情報収集先としてはオンライン検索、商品紹介ブログ、ビューサイトの閲覧などが含まれます。

4. Action(行動)

5. Share(共有)
購入後、消費者は商品やサービスに対する体験や満足度を評価し口コミやレビューの記入、ブログでの紹介等を通して、次のAttentionが発生し拡散されていきます。良い経験があれば、良い評判が拡大する可能性があります。

AISCEAS(アイシーズ)

AISCEASは、AISASの3.Search(検索)と4.Action(行動)の間の購買行動にComparison(比較)とExamination(検討)を追加したモデルです。AISASほどメジャーではありませんが、検討期間の長い商品やサービスの場合に、その部分を可視化することで施策を検討できます。

1. Attention(注意)

2. Interest(興味)

3. Search(検索)

4. Comparison(比較)
Search(検索)で商品の情報収集後、競合商品についても検索を開始する段階です。それぞれの商品の価格や機能、評判などを比較します。

5. Examination(検討)
比較商品の中から実際に購入を考えている商品やサービスに対し検討を始める段階です。検討ユーザーに対し情報提供を行うことで、検討における手助けを行えるとともに他社商品に対し優位性を訴求できます。

6. Action(行動)

7. Share(共有)

ソーシャルネットワーク時代の購買行動モデル

Twitterやインスタグラム、YouTubeなどのSNSの拡大により、商品やサービスについての実際の消費者による発信や口コミが投稿されるようになりました。

ECサイトのレビューなどの以前にSNSを通して商品の認知や評判を知るきっかけとなっています。中にはインフルエンサーによる拡散で一気にトレンド入りする商品も現れるようになりました。

以下では、VISAS(ヴィサス)とULSSAS(ウルサス)を紹介します。

VISAS(ヴィサス)

VISASはソーシャルメディアに主眼をおいた購買行動モデルで、ソーシャルメディアを通じた消費者行動を5段階に分けて表現されています。

1. Viral(口コミ)
消費者やユーザーがSNSを通して商品やサービスを見つける・認知する段階です。企業側の発信に加え、実際の利用者の口コミや投稿がきっかけとなります。

2. Influence(影響)
Viral(口コミ)の影響を受け、ユーザーや消費者が商品やサービスへの興味につながる段階です。SNSの特性上、自ら調べるだけでなく、フォローしているユーザーの投稿による影響などもあります。

3. Sympathy(共感)
口コミを見て影響されたユーザーがその内容に共感し始める段階です。投稿したユーザーが知人や好きなユーザー、インフルエンサーである場合、より内容に共感しやすくなります。

4. Action(行動)
この段階は、消費者やユーザーに具体的な行動を促すことです。これは、商品やサービスの購入、無料トライアルの申し込み、問い合わせフォームの送信など、成果となるコンバージョンポイントに関連します。

5. Share(共有)
購入後、消費者は製品やサービスに対する満足度を評価します。良い経験があれば、リピート購買やブランドの忠誠度が高まる可能性があります。実際の行動としては、口コミやレビュー投稿があります。

ULSSAS(ウルサス)

ULSSASは株式会社ホットリンクによって提唱された購買行動モデルです。VISASよりもSNS上のやり取り・行動を示している点が特徴です。

1. UGC(ユーザー投稿コンテンツ:口コミなど)
SNSなどでユーザーが商品やサービスの口コミや写真を投稿する段階です。企業発信の認知でない点が特徴です。購買行動モデルの始点がユーザーに変わったことがSNS時代の特徴とも捉えられます。

2. Like(いいね!やリツイート)
UGCに対し、Like(いいね!やリツイート)する段階です。ユーザーが一定の興味や関心が芽生え始めている状態です。

3. Search1(SNS検索)
投稿された商品やサービスについて情報収集を始め、SNS内で検索を行います。SNSで調べることで他のユーザーの評価を確認している段階です。

4. Search2(GoogleやYahooなどの検索エンジンで検索)
SNSでの調査が終了した後にGoogleやYahoo!にて検索を行うという行動段階です。ここでは商品やサービスのページへアクセスすることで1次情報を得たり、SNSだけでは分からない詳細情報の収集を行います。

5. Action(購買・購入・登録など)
消費者やユーザーに具体的な行動を促す段階です。これは、商品やサービスの購入、無料トライアルの申し込み、問い合わせフォームの送信など、成果となるコンバージョンポイントに関連します。

6. Spread(商品やサービスを拡散)
他のモデルではShare(共有)となっている部分がSpread(商品やサービスを拡散)になっています。商品やサービスを購入したユーザーが口コミや写真投稿等を行い、これが次のUGCとなります。こういった拡散をSpreadと表現しています。

具体的な行動としては、商品やサービスの口コミ(UGC)をユーザーが見て、いいね!を行い(Like)、SNS上で調べます(Search1)。その後、詳細を知るために検索エンジンで検索しホームページや商品ページを閲覧(Search2)し、購入に至ります(Action)。実際に商品やサービスを使ってみて、SNS上で発信する(Spread)ことで、新たな口コミ(UGC)が発生し、次のULSSASのサイクルが回り始めます。

購買行動モデルの広告での活用例

冒頭で記載したように、購買行動モデルは消費者行動を理解するためのフレームワークとして活用できます。購買行動モデルのフレームを使うことによって、ユーザーの行動と広告施策が関連しているかを推し量ることができます。

以下では、AISASを例に広告施策を当てはめていますので、参考例としてご覧ください。

それぞれのフェーズに自社の広告施策を並べることで、ユーザー行動とマッチしているかを確認して、施策を見直すことに役立ちます。

また、もっとユーザー行動の解像度を上げるために、カスタマージャーニー作成に利用することもあります。カスタマージャーニー作成も意外と時間と手間が掛かりますので、まずは購買行動モデルに広告施策を当てはめるだけでも、現状のデジタルマーケティングを可視化することが可能です。

まとめ

  • 時代変化とともにユーザー行動も変化し、それに呼応するように購買行動モデルも変化しています。AIDAから始まったモデルは起点から終点に向かう購買行動モデルでしたが、ソーシャルネットワーク時代になり、ユーザー起点(口コミ等)が拡散されていれ、次の購買行動モデルの起点になるといったモデルに変わっています。
  • それぞれの購買行動モデルは自社のマーケティングや広告施策において何ができていて、何ができていないかを可視化するうえで役に立つフレームです。施策を見直す際には購買行動モデルに当てはめて振り返ることも重要です。

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関根大輔

人材業界・生活用品メーカーの広告運用を担当。

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