2016年、弊社プリンシプルが属する「Webデータ解析業界」を象徴するキーワードは「機械学習」であったと思います。では、2017年を1年後に振り返った際、どのようなキーワードが、この業界を象徴することになるでしょう?筆者は、そのキーワードは「デジタルトランスフォーメーション」になるのではないかと考えています。「デジタルトランスフォーメーション」にまつわる情報を拾ってみると、以下のようになります。
2004年、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされます。
※外部リンク: 同教授の論文「Information Technology and the Good Life」
日本での「デジタルトランスフォーメーション」の検索数はこちらのようなトレンドを描いています。キーワードが世に出た2004年以降もほとんど関心を集めることがなかった期間が続きましたが、2016年突如として検索数が増えています。
trends
※外部リンク: Googleトレンド
既に現在、関心が集まるっているキーワードと言えるでしょう。
その発端は、IT専門の調査会社であるIDC Japanが2015年12月に発表した、こちらのプレスリリース記事だと思われます。
外部リンク:デジタルトランスフォーメーションの規模拡大を牽引せよ
この「デジタルトランスフォーメーション」がなぜ、本年のキーワードになると筆者は考えるのか?企業は、どのように自身をトランスフォームさせるべきなのか?トランスフォーメーションが完了した際にはどのようなメリットが待っているのでしょうか?

「デジタルトランスフォーメーション」が2017年のキーワードとなると考える背景

プリンシプルは創業の2011年以降、ずっとWeb解析データ(Googleアナリティクスのデータ)、リスティング広告や他のデジタル広告のデータ、SEO関連データ(Google Search ConsoleやGRC等の順位取得ツールのデータ)を対象に、クライアント企業が「データを収益に変える」ための支援をしてきました。その内容は、具体的には3層からなっております。

第一階層:データの見える化

GTMを導入したり、GTM経由でGoogleアナリティクスのタグをカスタマイズしたりして、クライアント企業が合理的意思決定をする基礎データを取得する支援
第二階層:データに基づくアドバイスの提供

データの見える化が完了しても、すぐに企業が合理的なアクションを起こすことができず、「データの解釈」や、「解釈した内容を踏まえた合理的な施策提案」が必要な場合、そうしたアドバイスを提供する支援
第三階層:PDCA定着のための伴走

アドバイスを単発で受け取っただけではPDCAサイクルが回らないという状況のクライアント企業を、データの解釈、施策の立案、施策の実施、施策の評価というサイクルを何度か繰り返してPDCAサイクルを定着させる支援

そうした「Web関連データ」の可視化を専門とする弊社に、ちょうど2016年なかごろから、「基幹系データ」の見える化支援についてクライアント企業からお声掛けを頂くケースが増えてきました。

デジタルトランスフォーメーション系の案件が増加

受注に至らなかったり、現在、商談中の案件の中に「デジタルトランスフォーメーション関連」と思える案件が増えています。

  • ・小売業におけるリアル店舗での商品別販売状況の可視化
  • ・不動産賃貸業における物件の効率性と売上予測の可視化
  • ・飲食業におけるクーポン配布最適化のための現状の可視化
  • ・製造販売業における競合他社価格の売上に与える影響度の可視化
  • ・テレビ広告がリアル店舗、及び、ネットショップの売上に与えた影響度の可視化

などです。
プリンシプルがBIツールTableauのパートナーをしていたり、筆者がTableauの入門書を上梓したりといった環境はあるのですが、比較的短期間に上記のような引き合いを頂いたことは何を意味するでしょうか?
その答えとして妥当なのが「企業はネット部門だけではなく、(ネット化率の低い事業においては)収益的に主となるリアルの事業についてもデジタルデータを活用し、合理的施策を実施して収益を向上したいと考えており、その動きが顕在化しつつある」ということなのではないかと考えました。
そして、どの企業にも競合他社がいる以上、上記の流れ、つまり「一部でした利用していないかったデジタルデータを全社的に利用し、デジタルデータを利用するのが当然。と考える企業に転換する」という意味での「デジタルトランスフォーメーション」と呼べるのではないか、2017年はその動きが加速するのではないか?と考えました。

米国ではデジタルトランスフォーメーション成功例が出てきている

また、別の観点としては、筆者が参加した、2016年11月に米国オースティンで開催された「Tableau Conference 2016」にて米国企業のデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが発表されたり、一部の企業では成功例が出始めているということが上げられます。米国で成功した経営手法が日本に輸入されるということはこれまでも起きてきたことですので、このデジタルトランスフォーメーションの流れも日本にやってくると思います。

デジタルトランスフォーメーションのメリット

デジタルトランスフォーメーションが完成した場合のメリットは、「全社の各部署がデータに基づいた合理的な意思決定を自律的に行うことにより、売上増加、費用削減を実現する上で、効果的な行動を行えるようになる」ということです。したがって、「ネットショップのコンバージョン率を高める」ことや「リスティング広告のCPAを下げる」といった分野にとどまらず、以下のような分野で改善が起きやすくなると考えられます。
人事面の例:
どのような大学、学部、専攻を卒業し、性格面でどのような傾向を持つ学生を入社後、どのような部署に配属すると成長しやすいか?が分かり、採用する人物像が明確化し、配属が最適化される。
製造面の例:
リアル店舗の来店数と販売量の相関、ネットショップの商品の閲覧数と販売数の相関、リアルて店舗とネットショップの販売数の相関といった販売データを精緻に分析することにより売上予測が精緻化し、発注量が最適化される。
販売面の例:
店舗における来店数を測定し、勤務していたスタッフの数との相関を分析することにより、リアル店舗における最適なスタッフ数やシフトの組み方が分かり、店舗別営業利益を最大化するようシフトが最適化される。
他にも、数多くの改善分野が想定できると思います。

デジタルトランスフォーメーションを起こすまでのステップ

では、企業はどのようなステップを踏んでデジタルトランスフォーメーションを起こせば良いのでしょうか?Web最適化とデジタルトランスフォーメーションの比較において見てゆきます。

デジタルトランスフォーメーションとWeb最適化の類似

デジタルトランスフォーメーションを起こすまでのステップは、実は、WebデータによるWebサイト、Webマーケティングの最適化と類似していると考えています。つまり、次の3ステップです。
データの見える化
データの分析による知見の抽出
知見に基づくアクションの実施と効果測定

デジタルトランスフォーメーションを実現する上での類似点

一方、Web最適化では気にしなくてよかったが、デジタルトランスフォーメーションを実現する上で気にするべき点は以下の5点が挙げられます。

1.新規データの取得が必要な場合がある

Web最適化のデータは、GoogleアナリティクスやGoogle Search Consoleを導入したり、リスティング広告を始めたりすればデータは自動的に蓄積されてゆきました。
一方、例えば、リアル店舗の時間帯別来客数や、店舗前交通量のデータが今、十分に整備されているという企業は少ないように思います。
そのような場合には、新規にデータを取得する必要があります。

2.データの統合が必要

Web最適化では分析対象のデータはおおよそ、一つのソースにまとまっています。Googleアナリティクスで言えば、AdWordsや、各種のネット広告をトラッキングする仕組みがあり、データの一元化が比較的容易です。
一方、デジタルトランスフォーメーションを実現するには、お客様のWebサイトの利用状況、リアル店舗への来訪、電話コール、紙のDMへの反応、展示会ブースへの立ち寄りなどのデータを統合する必要があります。
それらのデータは、Web解析ツール、CRMシステム、MAツール、などに散在しているのが普通なため、データの統合の作業が必要になります。

3.データクレンジングが必要になる

Web最適化に利用するデータは非常に正規化度合いが高いです。一方、CRMシステムに格納されているお客様データには、同じお客様の重複、同姓同名のお客様の存在、電話コールなどでお客様の姓名の発音は分かったが、漢字表記は分かっていないなどの理由で正規化が進んでいない場合が一般的だと考えられます。
分析の前にデータクレンジングが必要になるケースが多いものと思います。

4.部署横断的なプロジェクトになる

Web最適化では、ネット担当部署単独で業務を進められたのに対し、デジタルトランスフォーメーションでは、新規データの取得が必要になったり、データの統合が必要になったりするので、どうしても部署横断的なプロジェクトになります。
異なる部署間での現場同士のコミュニケーションが必要になるとともに、それら部署を統括する、マーケティング系、営業系、システム系の役員クラスの方の関与が必要になるケースが多いものと思います。

5.事前にゴールや改善分野のめどが必要

Web最適化において、ゴールはコンバージョン数の増加であったり、広告効果の最適化であったりと最初から比較的明確です。
改善分野も、以下の通り比較的限定的であります。

  • トラフィックポートフォリオ改善
  • ・SEO
  • ・リスティング広告最適化
  • ・メール反応率改善
  • ・参照トラフィックの戦略的獲得
  • ・ソーシャルトラフィックの獲得
  • ボトルネック改善など
  • ・LPO(Landing Page Optimization)
  • ・EFO(Entry Form Optimization)
  • ・サイト内検索最適化
  • ・レコメンドツールによる回遊改善
  • ・接客ツールによる目的コンテンツへの誘導

一方、デジタルトランスフォーメーションにおいては、改善分野は多岐にわたるため、事前に、
ゴール:何を実現したいのか?どのような方法により企業を改善したいのか?
改善分野:ゴールを達成するために現実的に実施可能な施策は何があるのか?
を明らかにしておく必要があります。そうしないと、コスト、時間、手間をかけてデータは蓄積できるようになったけれど、そこから「さて、何をしよう?」を考え出すという本末転倒な状況が発生してしまいます。

デジタルトランスフォーメーションに対するプリンシプルのアプローチ

プリンシプルでは、複数メンバーを同時にアサインし、ワンストップで、かつ最短距離で企業がデジタルトランスフォーメーションを実現するための支援を致します。プリンシプルがプロジェクトに投入可能なりソースはは以下の通りです。
プロジェクトマネージャー:クライアント企業のCレベルの幹部に対してデジタルトランスフォーメーションの価値、実現した場合のメリット、解決できるであろう課題を説明するとともに、プロジェクトを円滑に進めるよう、お客様側、プリンシプル側のリソースをマネージします。
Web解析エンジニア:Web利用は本来的には匿名で行われます。そのWeb利用データを、個別のお客様の利用として可視化するにはWeb解析エンジニアが個別ユーザーのサイト利用を明らかにする必要があります。また、Webサイト上でのお客様の特徴的な動きに「目印」を付け、「●●のステップに到達したお客様」のようなセグメントを可能にするのもWeb解析エンジニアの業務です。
SQLエンジニア:データベースとの対話言語であるSQLに詳しく、データのクレンジングや加工を行うリソースです。現在企業でお持ちのデータの持ち方がそのまま分析に最適ではない。という場合に必要となります。
データサイエンティスト:蓄積したデータの分析に統計的な処理や、統計的な判断が求められる場合のリソースです。統計解析言語R等を利用しデータから統計的な知見を引き出します。
Tableauスペシャリスト:プリンシプルでは2013年末から自社でTableauを利用し、2014年年頭から、クライアント企業に対するTableauを使ったレポーティング、ダッシュボード作成、分析を提供してきました。
Tableauのもつ優れたデータ接続機能、ビジュアライズ機能、分析機能を利用し、収取されたデータから知見を引き出す基盤を構築します。

米国コカコーラボトリング社のデジタルトランスフォーメーション事例

明示的に「デジタルトランスフォーメーション」とは言っていませんが、プリンシプルで考えるデジタルトランスフォーメーションの実現事例としてこちらのビデオが参考になるかと思います。2分30秒程度のビデオ(英語ですが日本語のキャプションあり)です。是非、御覧ください。

http://www.tableau.com/ja-jp/stories/customer/eliminating-reporting-bottleneck-ccbc

以上
我が社でも2017年、デジタルトランスフォーメーションを起こしたいというお客様、是非、一度お声掛けください。

お気軽にご質問、ご相談ください

関連タグ

木田和廣

早稲田大学政治経済学部卒。取締役副社長。カスタマーサクセス室室長。チーフ・エバンジェリスト。

関連ブログ