こんにちは。プリンシプルの木田です。
「コロナ禍で自社の顧客の振る舞いが変化した。その変化に対応するために企業においてデジタル・トランスフォーメーション(DX)への関心が高まっている」とまことしやかに言われていますが、本当でしょうか?
以下は、Google Trendsで確認した検索キーワード「デジタルトランスフォーメーション」の直近5年間のデータです。
確かにじわじわと検索指数は増えており、特に2020年5月ころに急激に増えていることが分かります。
これだけ急激に増えているということは「自社でもデジタル・トランスフォーメーションに本腰を入れることにした、入れざるを得なくなった」という企業も多いものと思います。
またデジトラ推進を命じられた担当者レベルでは、「どこから手を付けてよいかわからない」「失敗しそうで不安」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本稿ではそのような方に向けて失敗しない(失敗の少ない)デジタル・トランスフォーメーションの進め方をご紹介します。
デジタル・トランスフォーメーションの定義が不可欠
デジタル・トランスフォーメーションを失敗させないためにまず重要なのは、自社内での「デジタル・トランスフォーメーションの定義」を整理することです。
なぜなら、「デジタル・トランスフォーメーション」は言葉の概念が幅広いからです。企業トップも含め、社内の関係者の各自が異なったコンセプトとして認識していることがよくあります。それではどのような取り組みもうまくいくはずはありません。
デジタル・トランスフォーメーションの最初の定義は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」
と言われています。(参考:デジタルトランスフォーメーション – Wikipedia)
しかし、この概念は広すぎます。そこで、担当者が実務に落とし込める形で私が考えた定義が以下です。
- それまでに(繋いで)なかったデータを使い
- それまでの業務を変革することで
- 社内外に受益者を生むこと
如何でしょうか?もし、納得していただけたら、ぜひ、皆さんの会社の定義としてもご利用ください。
この定義からは、以下の2つのことが分かります。
- デジタル・トランスフォーメーションは「データによるトランスフォーメーション」でもある
- いくらデータを使っても/繋いでも受益者がいなければそれはデジタル・トランスフォーメーションではない
では、上記を定義した上で、なぜデジタル・トランスフォーメーションが失敗してしまうのか?に話を進めましょう。
なぜデジタル・トランスフォーメーションは失敗するのか?
なぜデジタル・トランスフォーメーションは失敗するのか?
結論から言うと「左から進めるから」です。
左から?
はい、左から進めると失敗すると思います。
プリンシプルではたくさんのお客様からデジタル・トランスフォーメーションについてのご相談を受けていますが、多くのお客様から「こんなことがしたいんですよね」と言ってご提示いただくのが、以下の模式図です。
そして、失敗する進め方として「左から進める」とは文字通り、上記を左から右に向かって進めることです。
確かにデータの流れは左から右なのですが、それに合わせて、
- 保持するデータの精査
- CDP(DMP)に集約するデータの選別
- CDPの構築
- ダッシュボードの作成
という順番で進めることを「左からのデジタル・トランスフォーメーション」と呼んでいます。
この進め方の場合、以下のような失敗が起きる可能性が高いです。
「左からのDX」による失敗例
- オン・オフそれぞれの顧客接点データを CDP (カスタマー・データ・プラットフォーム)に取り込んだが、結合するキーがなかった。
- ユーザーごとに「閲覧したすべてのページ」を CDP に格納したらダッシュボードの画面表示に 30 秒以上かかってしまい、使い物にならなかった。
- CDP もダッシュボードも作ったが、期待するトランスフォーメーションが起きない。
失敗しないデジタル・トランスフォーメーションの進め方
では、失敗しないデジタル・トランスフォーメーションの進め方とはどんなものでしょうか?
それは、私が「リターンドリブン・デジタル・トランスフォーメーション」とか「ベネフィットドリブン・デジタル・トランスフォーメーション」と呼ぶ「右からのDX」です。
模式図としては、以下となります。
「右からのDX」の手順
- 受益者を設定する
- その受益者を生むための業務再設計をする(これが変革にあたります)
- 再設計された業務に必要な情報を提供するための最適なダッシュボードを定義する
- そのダッシュボードを作成するためにCDPに格納すべきデータを整理する
- CDPに取り込むデータを点検し(要件を満たしていれば)CDPに取り込む
この進め方であれば、最もダメージが大きい失敗である「費用と手間をかけてデータ整備、集約、ダッシュボード作成を行ったのにトランスフォーメーションが起きなかった」という事態は避けられます。
どのようにして受益者を生むか?が肝
一方、ここで少々難しいのは、「どのようにして受益者を生むか?」だと思います。
この部分は最終的には、事業会社が自ら汗をかいて見つけることが必要になってくると思います。まさに「自社が自社の顧客に届けるべき価値」の定義だからです。
外部支援会社の守備範囲は上図のように整理できます。プリンシプルのメインエリアはデータの仕組みづくりではありますが、データを使ってどのように受益者を生むのかをファシリテートすることも可能です。
受益者を生む3つのヒント
受益者を生み出すためには、例えば以下の3つの視点が役に立ちます。これらを念頭におくと「自社にとっての受益者の生み方」を思いつくヒントになるのではないかと思います。
- 受益者は外(=顧客や取引先)だけでなく、中(=社内)にも発生し得る
- 受益者は収益増だけでなく、コスト削減でも発生する
- 効果は直接お金で測定できなくてもよい(「顧客からの信頼が増す」なども)
少々「緩く」設定していますが、たくさんの「受益者を生み出すパターン」を見つけた上で、重要度(インパクト)と難易度を秤にかけ、どこから着手するのかの優先順位を決めるのがおすすめです。
まとめ
この記事では、失敗しないトランス・フォーメーションの進め方について解説しました。
本稿をまとめると以下となります。
- データフローに沿って(=左側から)設計するのではなく、自社なりのデジタル・トランスフォーメーションの定義を整理して関係者の認識をあわせた上で、受益者側(=右側)から設計していくと良い。
- 受益者を生むパターンは、まずは敢えて緩く考えてアイデアをたくさん出し、重要度と難易度で優先順位を決めると良い。
少しでも、参考になれば幸いです。
デジタル・トランスフォーメーション設計についてさらに詳しく知りDXを推進したいという方は、ホワイトペーパー「リターンから逆算してDXを設計する『リターンドリブンDX』のすすめ」もぜひご覧ください。
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