データドリブンな意思決定が求められる現代ビジネスにおいて、BIツールは欠かせない存在となっています。本シリーズでは、BIツールを選定し、効果的なダッシュボードを構築するためのプロセスを解説します。

第二弾の今回は、ダッシュボード構築の第一歩となる「ニーズの定義」について深掘りしていきます。

BIツールを導入して効果的なダッシュボードを構築するためには、まず「何のために使うのか」というニーズを明確にすることが重要です。ニーズを明確にすることで、適切なデータの可視化ができるだけでなく、BIツールが最大限に活用され、企業の意思決定や業務改善に直接つながります。この記事では、ダッシュボード構築の第一歩として考慮すべき主要なポイントを解説します。

ポイント1. どのデータを可視化したいのか

ダッシュボード構築において最初に検討すべきは、どのデータを可視化するかです。データには、売上、在庫、顧客の行動パターン、業務プロセスなど、多岐にわたる種類がありますが、可視化するデータは業務の目的やビジネスの課題に直結している必要があります。

可視化するデータを決めるために考慮すべきことは、下記のようなものがあります。

1. KPIに基づいたデータの選定

可視化すべきデータは、ビジネスの目標を達成するために重要なKPI(重要業績評価指標)に基づくべきです。たとえば、営業部門では「売上」「リード数」「商談成功率」、マーケティング部門では「キャンペーン効果」「ウェブサイト訪問数」「コンバージョン率」など、各部門に応じたKPIに関連するデータが必要です。

2. 短期データ vs. 長期データ

どのタイミングでデータを表示するかも重要です。マーケティングでは日次での効果検証を行う際に短期のデータを見て分析するケースが多いですが、予測や戦略的意思決定を行う場合は、より多くのデータから気づきを得るため長期のデータから傾向を分析することが重視されます。

必要な情報が短期的なデータか、長期的なデータかを判断し、適切なデータソースを確保することが成功のカギです。

3. 異なるデータソースの統合

BIツールを導入する際には、複数のシステムやデータベースに分散しているデータを統合して扱えるかが重要です。例えば、計測ツール、CRMツール、スプレッドシート、外部のマーケティングデータなど、各データソースを一元的に集約することで、全体の状況を俯瞰できるダッシュボードを作成することが可能になります。

ポイント2. 誰がBIツールを使うのか(関係者の特定)

次に考慮すべきは、BIツールを誰が使うのかという点です。ユーザーの特性によって、必要とされるダッシュボードのデザインや機能が大きく変わります。適切なユーザー層を特定し、それぞれのニーズに合わせたダッシュボードを提供することが成功への近道です。

関係者を考慮したダッシュボードには下記のようなものがあります。

1. 経営層向けダッシュボード

経営層は、会社全体のパフォーマンスを短時間で把握し、迅速な意思決定を求めるため、シンプルかつ戦略的な情報を提供するダッシュボードが必要です。KPIを中心にした視覚的にわかりやすいダッシュボードが好まれます。複雑な操作が不要で、一目で企業の状態が確認できる構成が求められます。

2. 部門責任者・プロジェクトマネージャー向けダッシュボード

部門やプロジェクトを管理する責任者にとっては、より詳細なデータが必要です。

マーケティング、営業、製造など、特定の分野に特化したダッシュボードを提供し、リアルタイムでのモニタリングや分析が可能になることで、チームのパフォーマンスを改善できます。複数のKPIをトラッキングし、問題点があればすぐに対策を講じられるようなダッシュボードが理想的です。

3. 現場担当者向けダッシュボード

現場の担当者は日常業務の効率化にBIツールを活用します。例えば、在庫管理、受注処理、商品の購買特性の管理など、特定のタスクに焦点を当てたダッシュボードが必要です。ユーザーが自分でデータを操作し、柔軟にカスタマイズできる機能や、即座に現場で役立つリアルタイムデータの可視化が重要です。

4. データアナリスト向けダッシュボード

データアナリストや専門の分析担当者に向けたダッシュボードでは、詳細な分析機能と高度なカスタマイズが求められます。統計的分析やデータマイニングのための高度なグラフやレポート生成機能、さらには機械学習や予測分析の機能が搭載されたBIツールが求められます。これにより、データから新たなインサイトを引き出し、戦略的な提案ができるようになります。

ポイント3. 解決すべきビジネス課題の明確化

最後に、解決すべきビジネス課題の明確化が必要です。BIツールを導入する目的が不明確なままだと、ダッシュボードが単なるデータの集まりになり、実際の業務改善にはつながりません。

具体的な課題を洗い出し、それを解決するためにどのデータをどのように可視化するかを検討することで、より効果的なダッシュボードを構築できます。

ビジネス課題を可視化し解決するためのダッシュボードは、以下のようなものが考えられます。

1. 目標達成に向けたパフォーマンスのトラッキング

例えば、「売上目標を達成するためにどの製品が最も貢献しているのか」「マーケティングキャンペーンが期待通りの効果を発揮しているのか」といった具体的な疑問に対して、データを通じて答えを出せることが重要です。これにより、目標達成に向けた戦略の修正や改善が素早く行えます。

2. 業務プロセスのボトルネック解消

マーケティング施策のどこにボトルネックがあるかを日次で可視化し、即時に対応することが求められます。これにより、無駄な時間やコストを削減し、効率的な運用が可能になります。

3. 顧客満足度やリテンション向上

カスタマーサポートや営業チームでは、顧客満足度やリテンション率を上げるための施策をデータで追跡することができます。たとえば、顧客からの問い合わせのトレンドを分析し、対応速度や解決率を可視化することで、サービス改善のヒントを得ることができます。

まとめ

この記事は、ダッシュボード構築成功のカギシリーズの第二弾として、ダッシュボード構築の第一歩となる「ニーズの定義」について深掘りしました。

ダッシュボード構築における最初のステップとして、「何を可視化したいのか」「誰が使うのか」、そして「解決すべき課題は何か」を明確にすることが、BIツール導入の成功に不可欠です。これらの要素をしっかりと定義することで、ビジネスの意思決定を強力に支援するダッシュボードを構築することができます。

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小田啓介

コンサルタントとして月間広告費1億円規模の広告を管理・運用。
広告事業運営やセールス組織の立ち上げを行い、デジタルラグーン(プリンシプル子会社)の代表取締役に就任。現在はコンサルティング事業部のディレクターとして事業全体を運営。
スポーツアパレル業界でのデジタルマーケティング戦略設計、人材紹介ビジネスでのユーザー質・量改善プロジェクト、商店街のDX推進システム設計、北米進出支援のリード獲得プロジェクトなどデジタルマーケティング全体の支援プロジェクトに参画。

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