「59ゼタバイト」と聞いて、みなさまは何の数字を思い浮かべますでしょうか。
これはIDCが発表した2020年の世界データ総量(生成されたり消費されたりするデジタルデータの総量)です。
COVID-19の影響により、このデジタルデータ総量増加傾向はさらに加速していますが、ご自身の生活を考えてみると特に違和感は無いのではと思います。
例えば、COVID-19の流行に伴い在宅勤務やSTAY HOMEな生活が一般化することで、生活の中での”デジタルの割合”は自然と増加していることと思います。会議や知人・友人とのコミュニケーションは対面からzoomなどのオンライン会議ツールに代わり、日々の買い物もスーパーなどの実店舗からAmazonや楽天などのEC・通販に代わってきていると推察します。
このような一般消費者の生活スタイルの変化により、オンラインビジネスの重要性が高まることは疑う余地の無いことと思います。
このオンラインビジネスの中でも、この記事ではECビジネスにおいて大量データを活用するコツについてお伝えしたいと思います。
ECビジネスでデータは肥大化する
ECサイトでは実店舗と比較し、お客様に関する情報をより多くかつ詳細に取得が可能です。
例えば、お客様がいつ / どこで / 何回来店され、何の商品に興味を持ち(閲覧し)、どの商品を購入されたのか。また、ある商品購入後何ヶ月後に再度購入されたのか、といった情報を実店舗に比べ容易に取得することが可能です。
このようにECサイトでは多くのデータ取得ができる分、利用者や利用回数が多くなるにつれ、取り扱うデータ量は増加していきます。
例えば、単純に今まで月に1度しか訪れていなかったお客様が月に2度訪れるだけでデータ量は2倍に、1回の訪問で1つの商品しか閲覧していなかったお客様が3つの商品を閲覧することで3倍になります。
また、ECサイトを運営していく上で、新たな施策を実行することでデータ量だけでなく、種類も増加していきます。例えば、新たなメディアへ広告出稿をしたり、ウェブサイトだけでなくスマートフォンアプリでの施策を開始したりすることで、取り扱うべきデータ種別も増えていくことになります。
大量データの中で”迷子”になっていませんか?
筆者自身の経験談ですが、多種多量なデータが存在すると、きっと一度は”迷子”になります。少なくとも私は前職にて”迷子”になった経験があります(かつ1度や2度ではありません。。。お恥ずかしい話ですが)。
ここで言う”迷子”とは、目的を見失うことです。自分は何のために今データ分析をしているのか、何にどう活用していこうとしているのか、アクションした結果どの指標がどのように変化していく想定なのか、これらのことを忘れてデータから断片的に見えている気づきのみに注力してしまっている状況です。
一度”迷子”になってしまうと、対応すべき事項が無限にあると感じられてしまったり、どこから手をつければ良いのか、何が効果的なのかがわからなくなってしまう状況に陥る可能性があります。結果、一生懸命働いて色々なデータを使って施策を進めているものの、なかなか成果には繋がってきません。
大量データをECビジネスに活用する3つのポイント
目的を失った”迷子”にならず、大量データをECビジネスに活用するためのポイントを3つお伝えしようと思います。
- データ活用のポイント①:売上を各種指標に分解し深堀りする
- データ活用のポイント②:「感度の高い切り口」で分析する
- データ活用のポイント③:施策を実施する前にシミュレーションする
データ活用のポイント①:売上を各種指標に分解し深堀りする
売上を分解し整理することが、データ活用の第一歩です。なぜなら、売上だけを眺めていても、課題や改善策は見つけられないからです。
ECサイトの目的は「売上をあげること」です。しかし組織の中の担当者になると、このシンプルな目的を見失っているケースも散見されます。そこで、目標を再確認し、売上を各種データに分解して深堀りすることをおすすめします。
この深掘りをする際に便利なのが、KPIツリーです。
KPIツリーはKGIを最上位として、構成要素・指標をツリー状に展開していくものです。このツールを利用することで、全体像を見失わずに深掘りを進めていくことが可能となります。
KPIツリーとして決まった分解ルールや順番があるわけではありませんが、筆者は主に以下3つのパターンを活用して各指標を分解していきます。
分解パターン①:ユーザー行動の分解(掛け算)
分解パターン1つ目は指標を「掛け算の形式」に分解する方法です。例えば、購入数はセッション数×コンバージョン率で表すことができます。
これらの計算はユーザー行動を表しているとも言えます。訪問したユーザー(対象ユーザー)がコンバージョンした数が購入数、といった考え方です。
分解パターン②:ユーザーの分解(たし算)
分析パターン2つ目は指標を「たし算の形式」に分解する方法です。例えば、ユーザー数は会員ユーザー + 非会員ユーザーで表すことができます。
MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive=漏れなくダブりなく)な状態で指標を分解していくのがこのパターンの考え方です。
分析パターン③:ユーザーの分解(比較)
分析パターン3つ目は指標を「比較の形式」に分解する方法です。
例えば、ユーザーあたりのセッション数のような割り算で表される指標を分解する際に、会員と非会員といった複数のグループで比較し、それぞれの特徴を分析することができます。
データ活用のポイント②:「感度の高い切り口」で分析する
売上を分解し深堀りしたあとは、「感度の高い切り口」で分析することが重要です。これにより、ボトルネック発見など、施策検討に向けた気付きを得ることができます。
ここでいう「感度の高い切り口」とは、下図①のように「問題が明確になっている切り口(適切な粒度&適切な切り分け)」のことです。
ここで難しいポイントは、必ずこの切り口が正しいというルールは存在せず、分析対象ごとに自力で見出す必要があることです。ただし、これまでの筆者の経験上では、一度感度の良い切り口を見出してしまえば、その後は継続的に使用できたり応用できたりすることが多いです。
データ活用のポイント③:施策を実施する前にシミュレーションする
現状分析・課題整理が完了した後に大切なことは、改善に向けたアクションをおこなうことです
とはいえ、日々の業務に加えてさらに改善のための更新作業をおこなうことはハードルが高いかと思います(これまで制作運用の現場に携わってきた一人として、リソースやコスト面から後回しになってしまうことは容易に想像できます)。
そこで重要になるのが施策シミュレーションです。実際に施策を実行する前に取捨選択および優先順位づけをすることで、生産性向上に繋がります。
ここでは、最初から完璧を求めず、現実的に可能な範囲でまずは進めてみることが大切です。シミュレーションは施策を実行・振り返りをおこなっていく中でだんだん精度が向上していくものです。最初のうちは外れても気にせずに次に活かせる資産として捉え、前向きに継続していくことがポイントです。
まとめ
この記事では、大量データをECビジネスに活用する3つのポイントをご紹介しました。
今回は主にECサイトを想定した説明をおこなってきましたが、ECサイト以外にも通じる考え方が含まれておりますので、ぜひ明日からの自社の運用改善・見直しにお役立ていただけますと幸いです。
また、株式会社プリンシプルではこのようなデジタルマーケティングの運用に関してのご支援をおこなっております。無料相談会も実施しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。