Google Tag Manager(以下、GTM)が長期的に運用されているとき、過去の担当者の運用履歴や複数のメンバーによる共同利用が存在します。その結果、一つのタグ設定に対するリクエストに問題が生じないかの確認に時間がかかるなど、非効率的な運用が表面化することがよくあります。

このような状況を改善する際に、どのようにすれば効率的に進めることができるのでしょうか?それには、フィッシュボーンダイアグラムを利用して要因を洗い出し、解決策を整理する方法が有用です。

このブログ記事では、Google Tag Manager(以下、GTM)運用の改善点を抽出するために、フィッシュボーンダイアグラムをどのように活用するかについて解説します。

フィッシュボーンダイアグラムとは

フィッシュボーンダイアグラムとはその形状が魚の骨に似ていることから名付けられた、要因とその結果を視覚化する手法です。要因を視覚的に明らかにし、問題解決を効率化するために使われます。

この図では、横線の一番右に結果(または効果)を記入し、それにつながる要因を分岐させて描きます。細かな派生要因は主要な要因に集約され、その結果、大元の要因(つまり、要因の要因)が明らかになります。これにより、問題の根本的な要因を捉え、それに対応する解決策を策定することが可能となります。

例えば、非効率な運用を改善したい場合には、結果の部分に“非効率な運用”と記入し、図を作成します。

GTM運用の改善点を抽出する手順

GTM運用の改善点をフィッシュボーンダイヤグラムで抽出するには、例えば以下のような手順を踏みます。

  • Step1. 各メンバーに運用上の課題や工夫を共有してもらう
  • Step2. フィッシュボーンダイアグラムにまとめる
  • Step3. フィッシュボーンダイアグラムによる検討会を実施する

Step1. 各メンバーに運用上の課題や工夫を共有してもらう

GTM運用の改善を図る上では、チーム全体からのインプットが重要です。各メンバーが日々の運用で遭遇する課題や、それに対する工夫を共有することで、問題の全体像がより明確になります。

そこで、非効率な運用をテーマに、各メンバーによるGTM運用での困った経験や工夫点を具体的に起票してもらいます。

この起票は、直面した問題やその時に感じたフラストレーション、問題を解決するために試した方法など、具体的かつ詳細な情報を含むことが望ましいです。

Step2. フィッシュボーンダイアグラムにまとめる

次に、これらの情報をフィッシュボーンダイアグラムにまとめます。前のステップで集めた各メンバーからのフィードバックは、ダイアグラムの「主な要因」や「サブ要因」部分に相当します。その結果、問題の「結果」、つまり非効率なGTM運用が生じる具体的な要素が明らかになります。

オーソドックスなまとめ方に、「大きな分類から、小さな分類へと順に整理する」というものがあります。「主な要因」部分に、“人”、“プロセス”、“技術”、“組織や文化”、“コミュニケーション”などと比較的大きな分類をしておき、フィードバックから得られたキーワードを枝葉として「サブ要因」にプロットし整理してゆくとよいでしょう。

また応用アプローチとして、結果までのプロセスをいくつかの業務工程に分類した上で、要因を抽出する方法も有効です。GTMの場合では、例として左から“受付”、“広告管理”、“GTM設定”、“リリース”、“運用” とプロセスを切って整理します。

Step3. フィッシュボーンダイアグラムによる検討会を実施する

このプロセスは、チーム全体で問題を共有し、その根本的な原因を理解するための重要なステップです。検討会では様々な課題の全体感をつかむとともに、課題解決に向けた方法論を模索し、解消の手軽さと解消インパクトの両面から評価して優先度を決定します。

また、合わせて実施いただきたいのが各メンバーからの工夫の共有です。各メンバーが自身の経験を共有することで、他のメンバーが同様の問題に直面した際の対処法を学ぶことが可能になります。これはまとめると以下のようなメリットがあります。

  • 捉えている課題の重なり具合から問題解消の優先度の整理につながる
  • 普段感じていた非効率さの共有が踏み込んだ改善取り組みにつながる
  • 他のメンバーがまだ試していない新たなアプローチの共有になる
  • GTM活用の知識とスキルを高める機会になる

このように、フィッシュボーンダイアグラムを活用することで、GTM運用の課題を具体的に把握し、それぞれの解決策を策定することが可能になります。チーム全体の協力と共有が、より効率的なGTM運用へとつながるのです。

問題解決の例:新たなWebフォームが生まれた

例えば、弊社が支援させていただいた運用設計のプロジェクトでは、フィッシュボーンダイアグラムによる整理を通じて、業務依頼や変更受け入れの段階で依頼者に求めるWeb入力フォームが生まれました。

このフォームから得られた情報をリスト化し、その後の管理台帳と連動させることで、時系列にいつからいつまで設定しておくべきタグなのか(from/to管理)、誰が担当しているものか、どのタグと関連しているかなどが、都度都度の管理から解放され、効率的な管理ができるようになりました。

また、タグの命名規則やアサイン管理などの改善点も見つけることができました。これらの改善の具体的な内容については、別の機会に詳しく紹介したいと思います。

まとめ

フィッシュボーンダイアグラムを活用することでGTM運用の課題を具体的に把握し、それぞれの解決策を策定することが可能になります。チーム全体の協力と共有は、より効率的なGTM運用につながります。皆様も是非この機会に試してみてください。

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小柳貴志

20年以上にわたり、ソフトウェアメーカーやSIerにおいて、サービス構築やビジネスインテリジェンスの導入など、コンサルタントやプロジェクトマネージャーとして従事。現在はプリンシプルとしてサービス横断的な案件を担当。

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