海外でビジネスを展開するにあたり、返品への対策は無視することができません。
日本では馴染みの薄い返品ですが、海外では決して少なくなく、店舗への返品率は約8%、オンラインストアの返品率は約25%にも上ります。返品は送料などのコストが発生するため、EC事業者の悩みは大きいです。
この記事では、アメリカや世界での返品事情や、返品を減らすための対策についてまとめます。
返品がいかに重要かを理解していただき、ビジネスのお役に立てていただければと思います。
記事の内容
- 2021年コロナ禍におけるアメリカ小売市場の状況
- アメリカのEコマース返品事情
- 世界のEコマース返品事情
- 海外ECにおける返品戦略
2021年コロナ禍におけるアメリカ小売市場の状況
まず、コロナ禍において冷え込んでいた小売市場ですが、景気刺激策の給付金(20年3月に1200ドル、同12月に600ドル)の効果もあり、回復の兆しがあります。
小売・食品サービスの売上高は2021年1月に5,682億ドル(約59兆円)に達しました。とはいえ、まだ一部の小売業ではパンデミック前の水準から大きく外れているため、注意が必要です。
参考: Fueled by Stimulus Checks, U.S. Retail Sales Burst Into 2021 | Statista
アメリカのEコマース返品事情
返品は少なくない
米国での消費者による返品は決して少なくありません。
オンラインで購入された商品のうち、米国のホリデーシーズンだけでも、返品された商品の総額は570億ドル(約6兆円)と推定されています。
ECへのシフト=返品数増加
ECの売上高は年々増加していますが、それは同時に、返品数も増加していることを意味します。
ECへシフトしている要因としては、「パンデミック下で消費者が店舗での買い物を自粛」の他にも、「カーブサイドや店舗内での受け取りサービス」「実店舗での占有率の制限」などが考えられます。
したがって今後もECの売上高は増加し続け、返品数も増加していくトレンドが継続することが予想されます。
世界のEコマース返品事情
世界でも返品は少なくない
返品が多いのはアメリカだけではなく、世界でも同様です。
推定では、世界全体で2020年までに、オンラインでの返品配送には5,500億ドル(約58兆円)のコストがかかると言われています。またある調査では、買い物客の30%が意図的に過剰購入し、その後不要な商品を返品している事がわかりました。
その他の返品理由には「商品の破損や故障」「商品説明の不足」「商品が気に入らなかった」「配送の遅れ」などがあります(下図)。
また、返品されやすいカテゴリーは、アパレル、装飾品、電化製品、美容品、エンタメです(下図)。これらを扱うサイトは特に注意が必要です。
返品はビジネスに悪影響
小売業者の57%が、返品対応がビジネスに悪影響を及ぼすと回答しています。その理由の一つは、商品の不具合によって返品が発生すると、顧客は次回購入することを避ける傾向があるためです(下図)。
その他にも返品によって、返品のための配送料、返品のためのカスタマーサポートなど、見えにくいコストも発生します。
小売業者の対応
返品による悪影響を抑えるために、小売業者も対策をしています。
- 33%のオンライン小売業者は、無料で返品対応する代わりに配送料は購入者負担にしてコストを相殺。
- 2割の小売業者が返品のコストをカバーするために商品の価格を上げた。
アメリカや世界でECを運営する際にはこういった返品対応が不可欠となっています。
参考
- E-commerce Product Return Rate – Statistics and Trends 2020- Infographic
- Ecommerce Returns: 2020 Stats and Trends – SaleCycle
参考:大手リテールの返品への対応(アマゾン、ウォルマート、ターゲット)
アマゾン、ウォルマート、ターゲットは、返品に新たなアプローチを取っています。それは、払い戻しをした後も、顧客は購入したものを保持する(返送しない)というもの。
適用条件は、「商品が再販される可能性が低く、返品処理にかかる費用が商品自体の費用と同等かそれ以上である場合」としています。これは低価格商品を対象としたポリシーであり、特定の小売店での購入履歴を持つ顧客に適用されます。
適応するかどうかを制御することには手間がかかりそうですが、非常に合理的な仕組みではないでしょうか。
海外ECにおける返品戦略
以上のことから、アメリカ・海外ECでは返品戦略も考える必要があります。戦略には「返品コストを下げる」方法も考えられますが、この記事では「返品率を下げる」方法について述べます。
商品の返品率を下げる方法
返品率を下げる主な手段には以下の8つがあります。
- 透明性と手間のかからない返品ポリシー
- リターンをセグメント化する
- 高品質な製品ビジュアル
- 試してみてから、購入を提供
- ユーザー拡張現実(VR)
- 返品期間の拡大
- 顧客からのフィードバックに関する作業
- 返品を防止するためのデータドリブン電子メール
ここでは、1つ目の「透明性と手間のかからない返品ポリシー」に焦点を当てて解説します。
透明性と手間のかからない返品ポリシー
返品ポリシーは、購入決定においても重要な要素となっています。
- オンラインショッパー調査の2017 UPSパルスによると、買い物客の68%が購入前に返品ポリシーを見る。
- Metapackの返品ガイドは、買い物客の50%が返品チャネルの選択の欠如のために購入を放棄したことを発見。
- 同調査によると、消費者の56%がeコマースサイトの返品ポリシーのために買い物を抑止。
返品の基準がクリアで、手間がかからないことが購入決定の要素のひとつとなっており、返品率や関連指標をよく分析し、返品ポリシーを改善することで、返品率を最小にすることが求められています。
そのためにはまず、CXなどの解析を、従来の売上視点ではなく、返品の観点で見なければなりません。ほかにも、顧客からのフィードバックや顧客満足度への取組みもキーとなるでしょう。
まとめ
- 返品は海外では多く、店舗への返品率は約8%、オンラインストアの返品率は約25%。
- 返品は「配送料増加」「顧客離れ」「カスタマーサポート負担増」など、ビジネスに悪影響を及ぼすため、返品戦略が必要。
- 返品戦略のひとつは「透明性と手間のかからない返品ポリシー」で、従来の売上視点ではなく、返品の観点でのデータ解析が求められる。
この記事では、アメリカや世界の返品事情や、返品を減らすための対策などをご紹介しました。アメリカでのマーケティング活動の一助となれば幸いです。
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