マーケティングオートメーション(以下、MA)を導入している企業では、効果検証・分析面でMAのレポート機能を活用しているケースも多いでしょう。では、そうした効果検証・分析において、Googleアナリティクス(以下、GA)をメインで使用しているマーケターは、MAとGAをどのように使い分けるべきでしょうか?

効果検証・分析面におけるMAとGoogleアナリティクスの違い

MAは、「どの企業」の「誰が」Webサイトにいつ訪れていて、どのページを見ているのか、どの資料をダウンロードしてくれたのか、といった個々のユーザーの行動を把握できるようにして、個々のリード(見込み客)の行動履歴や状況に合わせて、「どのようなタイミングで」「どのような内容を」「どのような方法でアプローチするか」をあらかじめシナリオ化し、その対応の実行を自動化する仕組みです。
その対応をリードナーチャリングと呼びますが、リードナーチャリングを自動化するとともに、個別のリードの起こした「メール開封」、「メールからのWebサイト訪問」、「Webサイトからの資料ダウンロード」などのアクションに点数(=スコア)を設定し、蓄積されたスコアの判定基準に応じて営業スタッフが対応することが可能となります。よって、少ないリソースで効率よく人的営業対応を行い購入/成約に至りやすいリードを特定し、適切なタイミングでアプローチできます。
そのような機能を持つMAとGAの両方のツールのレポートを活用するようになると、両者の根本的な違いに気づきます。
・MAは、「個々のユーザーの行動を軸にした」ユーザー対応を行うためのツール
・GAは、「Webページを軸にした」ユーザーの行動を可視化するためのツール
である、という違いです。
MAが、個々のユーザーの行動を捕捉し、商品やサービスについての理解を深めさせ、購入ファネルを進ませるアプローチをしていくのに対して、GAは、Webページを軸にして、Webサイトの全体的な評価やページごとの詳細な分析(アクセス数の推移やページ別の滞在時間など)を目的として、どのページがよく見られているか、どのページから申し込みに至るケースが多いのかなど、Webサイトの全体的な動きを把握することが可能です。
GAは、Webページを軸にして、Webサイトがどのような方法で訪問されるのか、訪問された後、どのように閲覧、利用されるのか、匿名だったユーザーがメールアドレスも氏名も分かる「リード」に変化する重要ポイントである、お申し込みなどのコンバージョンに至るコンテンツは何か?など、Webサイトの全体的な動きを把握することが可能です。そして、Webサイトの改善ポイントなどを見つけて更新することで、よりリードに対して有益な情報提供をすることが可能となります。そして、Webサイトの改善ポイントを見つけて対策することで、自社製品、サービスに興味あるサイト訪問者を増やし、ひいてはリードを増やすことが可能になります。

レポーティングだけじゃない、MA導入企業のためのGA活用法

レポーティングの際に目的によって使い分ける他に、MAにおけるリードナーチャリングの一助となるGAの活用法をご紹介します。

ペルソナ作成にGoogleアナリティクスを活用

※ペルソナについては、こちらの記事をご参照ください。

・ユーザーレポートの活用

GAのユーザーレポートには、ペルソナの基本プロフィールを作るのに役立つ情報が数多くあります。 例えば「ユーザー>ユーザー属性>概要」では、Webサイト訪問者の年代や性別のデータを確認できます。また、「インタレスト」では、訪問者の趣味・嗜好を確認できるので、思わぬ発見があるかもしれません。地域レポートでは、ユーザーの居住地が見えてきますので、全国規模のサービスならどのエリアが強いかも分かり、ユーザー像をより明確にできます。

・集客カテゴリレポートの活用

例えば「集客>すべてのトラフィック>参照元/メディア」で確認した場合、モバイル端末でFacebookを閲覧したユーザーからの流入が多かったと判明したとします。さらに、「参照元ソーシャル・ネットワーク」から参照元となったFacebookの投稿内容を確認すると、どういった内容で関心を高めてアクセスしてくる層であるかが見えてくるかもしれません。

・行動カテゴリレポートの活用

「行動>サイトコンテンツ>すべてのページ」でセッション順でページランキングを見た時、どういったページに関心を寄せるユーザーが多いのかが分かります。
また、「ランディングページ」レポートでは、それぞれのページごとの、流入チャネル別の直帰率が確認できるため、どのページに、どのチャネルを利用してサイト訪問が発生しているのか?また、直帰率の高いチャネルとページの掛け合わせが確認でき、サイト訪問者の期待値を満たしていないページを見つけることができるでしょう。
GAランディングページ

・セグメントの活用

「ユーザー>ユーザー属性>概要」内で確認したユーザーから、コンバージョンをしたユーザーのセグメントを抽出しましょう。
GA画面上部の「セグメントを追加」を選択すると、セグメントリストのデフォルト項目に「コンバージョンに至ったユーザー」というのがありますので、そこにチェックを入れ「適用」をクリックします。
すると、年代や性別に対して、さらに「コンバージョンに至ったユーザー」のデータを表示することができるので、Webサイト訪問者の中でも、自社の目標設定したCVに到達したユーザーの傾向を推測できます。
このようにセグメントを活用して各レポートを詳細に分析することで、ペルソナ作成に必要なデータを集めることができます。
GAユーザー属性セグメント別

コンテンツ作成に活用

MAは、個々にカスタマイズした複雑なワン・トゥ・ワン・マーケティングを自動化することでリードナーチャリングを実践できるツールです。運用においては、カスタマージャーニーをもとにリードのパターンに合わせたシナリオやコンテンツを検討していきます。精度の高いリードナーチャリングを目指すほど、パターン別の分岐とそれに応じたコンテンツが必要となってきます。その実現には、ユーザーに適切なタイミングで適切なコミュニケーションをとること、「新規見込み客と既存の顧客に対してはコンテンツを提供し分ける」ことが重要となります。
※カスタマージャーニーについては、こちらの記事をご参照ください。
例えば、作成したランディングページの効果をMAで確認した時、リードとしてすでに登録されたユーザーの購入ファネルが進むような行動は少なかったが、GAで確認した時はそのページの新規のセッション数が多く、平均滞在時間もある程度長く、読まれている傾向が推測された、という場合もあります。その場合、作成したコンテンツは既存顧客にとって自社サービスの活用に役立ち、ブランド・ロイヤリティを高めてLTV(ライフタイムバリュー)に貢献する内容というよりも、新規に訪問したユーザーの興味喚起を高める内容だったのではないか、など仮説を立てることができます。
このように、MAの結果とGAによるWeb解析とを照らし合わることで、MA運用におけるコンテンツ作成と、その検証や改善対策に結びつけることが可能となります。

まとめ

MAやGAはそれぞれが日々進化しています。効果検証・分析・レポーティングについても、ひとつのツールで大筋まかなえたり、ツールのカスタマイズで一本化していく手段もあると思われますが、今回は、それぞれの長所を活かしながら活用する方法を紹介しました。
MAとGAは根本的な概念が違うので、
・個別対応はMAを使う
・サイト全体分析はGAを使う
上記のようにそれぞれの長所を使い分けて、効果検証・分析・レポーティングに活用し両立させることが効果的です。
MAもGAも、あくまでもツールでしかありません。ツールを導入するだけではなく、使いこなして結果につなげなければ意味がありません。リードナーチャリングを効率的かつ効果的に行い、売上増加に貢献させるためには、マーケティング戦略が重要です。
・どのようなユーザーをターゲットにするか
・どこから、どのようにリード情報を集めるか
・リードをどのようにセグメントするか
・セグメントしたリードにどのような情報を訴求してどのような価値を提供するか
など、上記のような戦略・戦術をたて、改善を繰り返しながら実績につなげていきましょう。

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田村幸市郎

早稲田大学教育学部卒。データ解析コンサルタント。GAIQ、Adwords認定資格、Marketo Certified Expert、SalesForce認定Administrator資格所持。

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