GA4では、Universal Analytics(UA)にあった多くのレポートがなくなりました。GA4とUAは異なる製品でありそれぞれで異なる活用方法があるので、レポートのスクラップ・アンド・ビルドがあるのは当然と思います。
とはいえ、これまで使っていたレポートが使えなくなることが、GA4への移行の妨げになることもあると思います。そこで、UAのレポートをGA4でできるだけ再現する方法についてまとめてみることにしました。
この記事では、「新規顧客とリピーター」レポートの再現方法をご紹介します。
基本的な考え方
GA4に、新規顧客とリピーターを区別してレポートするディメンションである「ユーザータイプ」は存在しません。その代わり、「新規 / 既存」というディメンションが用意されています。
ただ、よくヘルプを読むと「新規顧客が7日以上前に始めてウェブサイトを訪問した場合」には、「既存」ユーザーになってしまいます。
また、UAの「新規顧客とリピーター」レポートのディメンションメンバーであった、New Visitorや、Returning Visitorは、セッションスコープでした。したがって、GA4の「新規 / 既存」ディメンションを利用してもUAの「新規顧客とリピーター」レポートは再現できないことが分かります。
そこで、「セグメント」を利用して、再現する方向で考えます。
作成するべきセグメント
GA4のデータモデルでは、UAの「セッション数」にあたる”何回目のWebサイト訪問だったのか?”の値は、session_startイベントの、ga_session_numberパラメータに格納されています。
つまり、ga_session_numberが1のセッションが「New Visitor」、2以上のセッションが「Returning Visitor」ということになります。
そこで、「探索」配下の「自由形式」レポートを表示した上で、New Visitorを抽出する以下のセグメントを作成します。
同様に、Returning Visitorを抽出する以下のセグメントも別に作成します。
レポートを作成する
次に、探索配下のレポートで作成したセグメントを2つ、指標を5個を以下の通りに配置します。
ピボットを「最初の行」にセットするところは忘れやすいのでご注意ください。
完成したレポート
すると、以下のレポートが完成します。
以下に補足をしますが、これでUAの「新規顧客とリピーター」とほぼ遜色ない(つまり、同じ意味合いを理解できる)レポートが完成しました。
1. セッション:UAと同じ意味合いのセッションです。
2. エンゲージのあったセッション:セッションが①直帰しなかった、②10秒以上の滞在があった場合に、エンゲージのあったセッションとしてカウントされます。UAにおける「非直帰セッション」の近似値として利用できます。
3. エンゲージメント率:「2.エンゲージの遭ったセッション」÷「1.セッション」で計算できる比率です。UAにおける直帰率の逆数(=高い方が望ましい指標)と捉えることができます。
4. ユーザーエンゲージメント:ユーザーがフォアグラウンド(隠れていないタブ)でウェブページを表示していた延べ時間です。この指標の値を、セッションで割ることでUAの「平均セッション時間」の近似値を求めることができます。
例)
New Visitor:
・ユーザーエンゲージメントは、10時間53分 = 39180秒
・セッションは、689
→平均セッション時間の近似値である、セションあたりユーザーエンゲージメントは56.9秒
Returning Visitor:
同様に、Returning Visitorのセッションあたりユーザーエンゲージメントは58.4秒
5. 表示回数:GA4における「表示回数」は、UAの「ページビュー数」のことです。したがってこの指標の値をセッションで割ることでUAの「平均PV/セッション」の近似値を求めることができます。
例)
New Visitor:
・表示回数は、1576
・セッションは、689
→平均PV/セッションの近似値である表示回数/セッションは2.29
Returning Visitor:
同様に、Returning Visitorのセッションあたりユーザーエンゲージメントは2.24秒
まとめ
この記事では、GA4上でUAの「新規顧客とリピーター」レポートを再現する方法をご紹介しました。GA4では、セグメントを上手に使うこと、そして、全く同等ではないものの、意味合いが類似している指標を利用することで、UAのレポートを再現できます。
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