●2023/1/24追記
2023/1/20付で、Googleはオプティマイズのサポート終了がアナウンスされました。
Google オプティマイズのサポート終了 – Optimize ヘルプ
本記事で触れたGA4のRFMセグメント作成などは引き続きご利用いただけると思いますが、オプティマイズに関連する部分は2023/9/30以降、大部分が使えなくなります。セグメント作成に関してご興味ある方はご一読ください。
ウェブサイトと会員のRFM分析を行い、取るべき施策が見え、いざ実行に移そうとするとCRMとツールの連携で開発が発生することが判明…。
このような場合、せっかく課題と打ち手が見えたのに、実行するコストパフォーマンスが合わなかったり取り組みやすい時期を逸してしまい、分析結果を充分に活かせなくなってしまいます。
そこでこの記事では、GA4で可能になったオプティマイズ連携を用いて、RFM分析の結果をコストパフォーマンス良く利用する施策実行の方法を解説します。
なぜRFM分析は施策実行のハードルが高いのか
冒頭で述べたとおり、CRMツールからRFM分析を行った後に施策実施につなげるにはハードルが高くなりがちです。そもそもなぜ、RFM分析と施策実行のハードルが発生するのでしょうか?ここではRFM分析のデータの取り扱いの観点から説明してみます。
RFM分析は購入履歴さえあればできる
RFM分析では、ユーザーを購入履歴をベースにセグメントに分類します。つまり、ユーザーの購入履歴さえ存在すれば良いため、ウェブ上の(購入以外の)行動が紐付いていなくても分析が可能です。
CRMは他システムとの連携が必要になる
そのため、CRMから購入履歴をCSVなどで吐き出し、分析結果はシステムの外で生成することも可能です。この場合、分析結果を施策に落とし込むには別途、マーケティング用のシステムと連携させることが必要になることが多いです。
たとえばメール施策に落とし込むためには、メール配信システムに会員情報を持たせる必要があり、一般的にマーケティングオートメーションツールではメールアドレスを利用してユーザーの特定と施策を実行します。よって、マーケティングオートメーションはメール施策が中心になるものが多いようです。
Webサイトでの施策にはリアルタイム連携が必要
さらにウェブサイト上での施策実行を考える場合、ウェブ接客ツールとの連携を行うことになります。メール配信システム同様、ウェブサイトを訪問したユーザーがログインしている場合、会員情報をウェブ接客ツールに渡すことで実現します。
ただしメール配信システムと異なり、①ユーザーがウェブサイトに訪れたことをリアルタイムに検知し、②そのユーザーに対する最適なオファーをリアルタイムに提示する必要がでてきます。
以上のことから、RFM分析はCRMの購入履歴だけで成立する反面、施策に落とし込むためにはウェブサイト(フロントエンド)・サーバー(バックエンド)との連携が必要なため、コストが掛かりやすいのです。
GA4とオプティマイズを組み合わせるとRFM分析の結果をダイレクトに活用できる
RFM分析は施策実行のハードルが高くなりがちですが、GA4とオプティマイズを組み合わせることでコストパフォーマンス良くダイレクトに施策の実行が可能になります。
というのも、GA4とオプティマイズはいずれもウェブサイト上(フロントエンド)で動作し、サーバー側はGoogleが面倒をみてくれるためです。GA4のデータが正しく計測できていれば、すぐにでも自社サイトで利用可能ですから、GA4のデータ精緻化とオプティマイズの導入を早めに済ませておくと良いでしょう。
「GA4×オプティマイズ」の特徴やメリットは以下の3点です。
- 施策実施のハードルが下がる(無料・CRM連携なし)
- RFMベースのセグメントを作成できる
- セグメント別に異なるオファーを提示できる
施策実施ハードルが下がる(無料・CRM連携なし)
前述のとおり、一般的にCRMのシステムとウェブ接客ツールなどを連携させるには、ある程度の開発コストが発生します。しかしながら、GA4とオプティマイズを利用すれば、無料ツールのみ、かつCRM連携なしにこれを実現することが可能です。
この方法ではGA4実装後に収集した購入履歴を利用するため、ユーザー別のRFMセグメントを完全に作成できるわけではありません。しかし実施する施策によってはそれなりの精度が期待できますし、コストパフォーマンスで考えれば実施する価値があるでしょう。
RFMベースのセグメントを作成できる
ユニバーサルアナリティクス(UA)では難しかったRFMに基づくセグメントも、GA4ではある程度再現が可能です。具体的には、RFMそれぞれの要素について、以下のように定義します。
■Recency・Frequency(最近の購入実績・一定期間内の購入頻度)
purchaseイベントとそのイベント数に期間を設けて定義します。(キャプチャ参照)
セグメントに含めるイベントの条件において、そのイベントの発生期間を指定する(「期間」オプションで「直近の期間」を選択する)場合、振り返ることができるのは過去60日までという制約があります。そのため、購入サイクルの比較的長い商材を扱うウェブサイトでは定義可能なセグメントが限られる傾向があります。
■Monetary(購入総額)
LTVの指標を利用して、ユーザーの購入総額ベースの条件を定義します。
ただし、少なくとも執筆時点ではGA4のLTV(ユーザー別の購入総額)は米ドルベースで指定する必要がある点に注意しましょう。たとえば「LTVが200を超える」という条件を指定すると、「200米ドルを超える」という意味になり、日本円で約26,000円(1USD≒130JPY換算)以上の購入総額があるユーザーを抽出することになります。
※厳密にはデータ収集時期の為替レートの影響を受ける可能性が高いですが、大まかな金額の指定方法として覚えておくと良いでしょう。
セグメント別に異なるオファーを提示できる
GA4でセグメントを定義できたら、これを「オーディエンス※」として作成できます。GA4とオプティマイズを連携すると、GA4で定義したオーディエンスを、オプティマイズのエクスペリエンス(テストやカスタマイズ)のターゲットとして指定できるようになります。
これにより特定のユーザーに特定のクリエイティブを表示する、といった実装を容易に行うことができます。
※「セグメント」と「オーディエンス」は同義
GA4では執筆時点で、探索レポート配下では「セグメント」という用語が使われていますが、連携に利用するセグメントを定義するUIでは「オーディエンス」という用語になっています。基本的にこれらは同義です。
例:釣具を売るウェブサイトの場合
例として、釣りをする人の購買サイクルとセグメント定義を考えてみましょう。
釣りにもさまざまな種類があります。ある季節に集中する需要(ワカサギ釣りなど)で購入を検討するユーザーもいれば、週末の趣味として海釣りや川釣りなど多種多様な釣り場をめぐる人もいるはずです。すると前者の購買サイクルは半年〜1年単位、後者は1週間〜1か月単位とばらつきがでることが予想されます。
釣具を扱うウェブサイトにとってRFM分析上の優良顧客となるのは、頻度高く様々な物を購入してくれる後者の可能性が高いでしょう。ですからGA4で定義可能なセグメントの制約(purchaseイベントの期間指定可能日数60日)の中であっても、優良顧客セグメントを作ることができる可能性があります。一方、半年〜1年単位のユーザーはRFM分析上の休眠顧客となる可能性が高く、GA4の制約上、このセグメントを作ることは難しいでしょう。
このようにウェブサイトの商材によっては、GA4で適切なセグメントを定義できないことがあります。商材に合わせて設計するとよいでしょう。
補足:UAとRFM分析の相性は悪かった
GA4ではなく、UAでも同じことができるのでは?と思われるかもしれませんが、UAはRFM分析との相性がいまひとつでした。
その要因の1つは、UAでは最近の購入実績(Recency)や一定期間内の購入頻度(Frequency)、購入総額(Monetary)でセグメントを作成できないことです。つまり、RFM分析の結果をUAの中で作成するには、データインポートなどによるカスタマイズが必須でした。
もう1つは、無償版UAのデータ活用先はGoogle広告のみとなる場合がほとんどで、広告以外のチャネルで活用するには別の開発が必要になることです。つまり、「UAにRFM分析の結果を反映しても、これを収益につなげるには結局追加のコスト(カスタマイズや開発)がかかり、コストパフォーマンスの観点で難しい企業も多かった」というのがこれまで解析の現場で起きていることでした。
まとめ
この記事では、CRMからのRFM分析→施策実行の際にコストがかさむ構造的な理由を解説し、また解決方法としてGA4とオプティマイズとの連携について紹介しました。
GA4とオプティマイズの連携で、マーケターだけで完結可能な打ち手が増えたことは喜ばしいことです。またGA4を活用すれば自社データを取り込むことも可能なので、使いこなせば施策の改善も可能になります。GA4もオプティマイズも無料のツールではありますが、その利便性は侮ることができません。最大限活かしていくとよいでしょう。