GA4データのレポーティングにLooker Studioの利用を検討される企業様が多く、プリンシプルでもダッシュボード構築に関するご相談を頻繁に頂きます。
そこでよく議題に上がるのが、「GA4の公式APIコネクタで直接連携するか、BigQueryにエクスポートしたデータを連携するか」という点です。「自社に相応しい連携方法が分からない」「API利用に限界を感じているが、BigQueryは導入のハードルが高そう…」などのお悩みを抱えている解析担当者は多いのではないでしょうか。
本記事では2つの方法の特徴を比較します。自社の状況に合わせ、選択の判断材料としてお役立ていただければ幸いです。
概要:各連携方法のメリット/デメリット
Google Analytics Data APIとBigQuery、それぞれのメリットとデメリットの概要は以下のとおりです。
GA4 API | BigQuery | |
---|---|---|
メリット | ・構築・メンテナンスが容易 ・SQL等の専門知識が不要 ・完全無料で利用できる |
・API制限を回避できるため、大規模なデータの抽出、大人数での利用に適している ・サンプリング・しきい値が適用されず、精緻なデータに基づいた深掘り分析が可能 ・セグメントをSQLで再現可能 |
デメリット | ・頻繁に利用するとAPI制限がかかる(レポート更新が停止) ・サンプリング・しきい値が適用されるため、精緻な分析には不向き ・セグメント機能が利用不可 |
・SQL等の専門知識が必要 ・BigQuery利用料(従量課金制)が発生 ・一部データ(年齢、性別、興味関心等)はエクスポートされない |
まとめ | 誰でも簡単に作成できるが、組織的な運用には不向き。 | 分析の自由度が高くなるが、専門的な知識が必要。 |
各特徴について、1つずつ見ていきましょう。
Google Analytics Data API × Looker Studioの特徴
“Google Analytics Data API × Looker Studio” を一言で表すと、「誰でも簡単に作成できるが、組織的な運用には不向き」な方法と言えます。
KPIの定点モニタリングや簡易的な比較分析のみを行う場合、一部の担当者のみが利用する場合などは、公式APIを利用すると良いでしょう。
Google Analytics Data API × Looker Studioのメリット
メリット①:構築・メンテナンスが容易
Looker Studioの画面のみで操作が完結するため、比較的簡単に構築・メンテナンスが可能です。Looker Studioは直感的に操作できるUIになっているため、初心者でも挑戦しやすく気軽に利用できます。
メリット②:SQL等の専門知識が不要
SQLを記述してデータ整形・抽出を行う必要がないため、高度な専門知識がないユーザーでも構築・運用できます。
メリット③:完全無料で利用できる
Looker StudioもGoogle Analytics Data APIも利用料がかからないため、予算を気にすることなくダッシュボードを活用できます。
Google Analytics Data API × Looker Studioのデメリット
デメリット①:頻繁に利用するとAPI制限がかかり、レポートの更新が停止する
“Google Analytics Data API × Looker Studio”では、頻繁にレポートを読み込んだり、複数人で同時に利用するとAPI制限による「割り当てエラー」が発生することがあります。割り当てエラーが発生すると、一定時間レポートを更新できなくなってしまいます。
これは1時間当たり・1日当たりのAPIのリクエスト数に上限が設けられているためです。リクエスト上限は無償版GA4と有償版GA4(Googleアナリティクス360)で異なります。詳細はGoogle公式ドキュメントをご参照ください。
デメリット②:サンプリング・しきい値が適用されるため、精緻な分析には不向き
GA4上のレポートと同様、データ量によりサンプリング・しきい値が適用される場合があります。そのため上場企業における数値報告など、精緻なデータが求められる場合には避けた方が良い方法と言えます。
デメリット③:セグメント機能が利用できない
Looker Studioには、GA4の探索レポートで利用できるセグメント機能が備わっていません。そのため、特定のイベントを発生させたユーザーやセッションに絞って深掘り分析を行うことができない点に注意が必要です。
BigQuery × Looker Studioの特徴
“BigQuery × Looker Studio” は一言で表すと、「分析の自由度が高くなるが、専門的な知識が必要」な方法と言えます。
LTV分析・RFM分析・行動パターン別CVR比較などの深掘り分析を行いたい場合や、大規模サイトのデータを扱う場合などは、BigQuery導入の検討をオススメします。
BigQuery × Looker Studioのメリット
メリット①:API制限を回避できるため、大規模なデータの抽出・大人数での利用に適している
BigQueryを経由すれば、API制限によりレポートの更新が止まることはありません。取り扱うデータ量が多い場合や、組織全体でダッシュボードを利用する場合にも不自由なく閲覧・編集できます。
メリット②:サンプリング/しきい値が適用されず、精緻なデータに基づいた深掘り分析が可能
集計前の生データを利用するため、サンプリング/しきい値は適用されません。実態に即した正確なデータが表示されるので、精緻な数値の報告が必要な場合にも活用できます。
また、SQL記述によりさまざまな指標を抽出できるため、分析の自由度が一気に上がります。
メリット③:セグメントをSQLで再現可能
探索レポートに備わっているセグメント機能を、SQLで再現できます。そのため、行動パターン別のCVRやLTVの分析がLooker Studio上でも可能になります。
再現方法の例については弊社副社長木田のブログ記事「BigQueryのGA4データにSQLでユーザーセグメントを適用する」で取り上げられていますので、ご興味がある方はご参照ください。
BigQuery × Looker Studioのデメリット
デメリット①:SQL等の専門知識が必要
SQLで欲しいデータを抽出・整形する必要があるため、ある程度の専門知識が必要です。SQLの習得には時間がかかるため、経験者がいない場合、調べながら完全内製で運用していくのはハードルが高いと言えます。
記述するSQLの詳細については、Google公式ヘルプでも公開されています。
デメリット②:BigQuery利用料(従量課金制)が発生する
データの保存にかかるストレージ費用に加え、クエリの処理にかかるスキャン費用が発生します(いずれも従量課金制、一定の無料枠あり)。むやみに何度もレポートを読み込んだり、制限なく大人数で利用すると課金額が膨らんでしまう可能性があるので注意が必要です。
課金額を抑えるには、BigQuery上で中間テーブルを作成したり、社内の運用ルールを定めるなどの対策が必要です。
デメリット③:年齢・性別・興味関心等のデータはエクスポートされない
BigQueryにエクスポートされる生データには、年齢・性別・興味関心等のユーザー属性に関するデータが含まれていません。これらのデータは、個人特定防止のためユーザー単位では提供されてないためです。
まとめ
この記事では、GA4データをLooker Studioで可視化する際のデータ連携方法について、それぞれの特徴を比較しました。簡単にまとめると以下のとおりです。
- Google Analytics Data API × Looker Studio:
誰でも簡単に作成できるが、組織的な運用には不向き - BigQuery × Looker Studio:
分析の自由度が高くなるが、専門的な知識が必要
自社の運用体制としてどちらの方法が適切か、ぜひ検討してみてください。
プリンシプルでは、BigQuery導入にあたり躓きポイントになりやすいSQL作成・課金抑制のための最適な運用方針策定の支援もご提供しています。デメリットをカバーしつつデータ活用をサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。