GA4の新機能として、「Salesforce Sales Cloudとの連携」機能がリリースされました。この機能は、自社サイトで獲得したリードや商談をSalesforce Sales Cloudで管理している会社にとって、オンラインとオフラインを繋ぐ重要な機能となります。
本記事では、この「Salesforce Sales Cloudとの連携」機能について、機能概要や利用シーン、導入方法を紹介します。
機能の概要
この連携機能は、
- リード・商談獲得”前”にあたる「自社サイト上でのユーザー行動」
- リード・商談獲得”後”にあたる「営業チームによる営業活動」
の2つを、GA4上で統合して分析できるようにする機能です。
この機能を利用すると、自社サイトからの資料請求や問合せから獲得したユーザー(リード)を対象に絞り、営業活動上の進捗があった際に、GA4にその状況を「イベント」として送信できるようになります。
連携に使われるSalesforceのオブジェクトは「リード」オブジェクトと「商談」オブジェクトの2つです。これらのオブジェクトの「ステータス」フィールドの変更をトリガーとして、GA4にイベントを送信します。
たとえば、リードのステータスが「Sales Accepted」になったときに、GA4に「sales_accepted」イベントを送信するといったイメージです。またこのときに、Salesforceのリードオブジェクトにあるフィールドの値を、GA4にイベントパラメーターとして連携することもできます。
設定するには
この機能は、プロパティ設定の「データインポート」を使い、「オフライン イベントデータ」から設定します。
また、本機能に関する公式のドキュメント「Google アナリティクスと Salesforce Sales Cloud の統合を構成する」も合わせてご確認ください。
利用シーン
ユースケース1: 有効な問合せのみをGA4に連携する
Webサイトで問合せを受け付けているサイトでは、問合せフォームを通じた営業メールを受け取ることが多々あります。また、問い合わせは受けたものの、自社が想定しているターゲットとはまったく異なるユーザー層の方からの問合せであったり、フォームの挙動を確認するためのテストというケースもあります。
実際のサイト運営者が欲しいのはこれらに当てはまるようなリードではなく、自社が想定しているターゲット層からの問合せです。しかし通常のGA4の設定では、内容が営業メールであっても、想定外のターゲットからの問合せであっても、すべて等しく「1件のキーイベントが発生した」とカウントしてしまいます。
問合せの80%以上が営業メールというケースも多々あり、そのようなケースで営業メールも含めた問合せをキーイベントとしてしまうと、GA4を使った行動分析において分析精度が下がってしまいます。さらに、そのキーイベントをGoogle広告にコンバージョンとしてインポートし、Google広告が機械学習を行ってしまうと、場合によっては「営業メールを送信する可能性の高いユーザー」に価値を置いた配信になってしまうかもしれません。
本連携機能を使うと、「営業が対応を行う必要のある有効な問合せが発生したとき」に、GA4にイベントを送信でき、真のターゲットユーザーからの行動を集計できるようになります。
また、該当のGA4イベントをキーイベントに設定することで、
- 広告媒体に有効な問合せ数をコンバージョンとして連携
- (営業メールを除いた)有効な問合せを行ったユーザーの行動パターンを分析
- Google広告に連携して、有効な問合せのみをコンバージョンとした広告配信
といったことも可能になります。
ユースケース2: 営業の進捗状況をGA4に連携する
不動産業界や自動車業界などのB2Cビジネスの場合、物件の資料請求・問合せや、来店予約が行われた際に、裏側で同時にSalesforce Sales Cloudに商談を作成することがあると思います。その場合、営業の接客の中で得られた情報から売上(予定)金額や、営業フェーズを入力・更新したりします。
たとえば、初来店の際にヒアリングシートなどを使ってさまざまな情報をヒアリングし、その後の商談のなかで購入・契約する商品を決め、成約になるとします。このとき、Salesforceには商談が作成され、ヒヤリングシートの中から必要な項目を商談に反映させたり、購入・契約する商品をSalesforceの商談に追加したりします。また、商談のフェーズが進めばSalesforceの商談フェーズを変更します。
本機能を使うと、「商談のフェーズが進行したとき」にGA4にイベントを送信できます。また、このとき、ヒアリングにより得られた情報をSalesforceからGA4にカスタムディメンションとして送信することができたり、商談に追加された商品の情報をGA4にeコマース・アイテムとして送信できます。
つまり、Web上での資料請求・問合せ・来店予約などのアクションのあとに発生する「初来店」や「見積り作成」「成約」などのイベントをGA4に送信することで、実際の成約に至ったユーザーだけの行動をWeb上の行動を紐づけて分析することができるようになります。
導入における注意点
導入に必要な設定箇所は、大きく分けて
- Salesforce上のフィールドの設定
- Web問合せ発生時のクライアントID(ユーザーID)のSalesforceへの連携
- GA4上での連携設定
の3つが存在します。
具体的な設定方法は、Googleの公式ヘルプをご覧ください。以下では、導入時にどういった点に注意するべきかについてまとめています。
注意点1: どのオブジェクトの情報を連携するか?
現在、Salesforce Sales Cloudから連携可能なオブジェクトは、「リード」「商談」オブジェクトの2つです。どちらのケースも「フェーズの変更」がトリガーとなり、GA4にイベントが送信されます。
やりたいことは何なのか、それを実現するためにはどのオブジェクトの連携が必要か、きちんと考える必要があります。また、カスタムディメンションなどの形で追加のパラメーターも連携可能なため、連携するメリットのある項目も考えておきましょう。
注意点2: クライアントID(ユーザーID)をどのように連携するか
オンライン上の行動とオフライン上の行動を繋ぐキーとなる項目は「クライアントID」(または「ユーザーID」)となります。連携するオブジェクト(リードや商談)には、カスタムフィールドとして「クライアントID」を追加し、該当ユーザーのオンライン上のクライアントIDを設定する必要があります。
設定する方法は、利用しているフォームのシステムに応じてさまざまな方法が考えられますが、現行の運用方法も踏まえて都度ベストな方法を探る必要があります。場合によっては、手動でクライアントIDを設定する運用を採用しなければならないケースもでてきます。
注意点3: 連携後の運用方針
今までのSalesforceの運用方法のままGA4に連携できればベストですが、Salesforce側の運用変更が必要になるケースも出てきます。
Salesforceの運用変更となると、関連する人がマーケティングチーム内ではなく、セールスチームにおよびます。全国に営業部隊を持つような会社の場合、関連する人も多くなります。連携後の運用をスムーズに進めるためにも、どのような運用変更が必要になるか、関連する方への周知方法なども検討しておく必要があります。
弊社での運用例
本機能は少し前からアルファ版として一部のパートナー向けに提供されていました。弊社でもSalesforce Sales Cloudを利用していたため、数ヶ月ほど上記の「ユースケース1」を実装し運用していました。
下記は、その時のレポート例です。「Webサイト上の問合せ」→「実際の有益な問合せ」のファネルを見ることができるようになっています。
まとめ
今回は、GA4で新しくローンチされたSalesforce Sales Cloudとの連携機能について紹介しました。オンラインとオフラインを統合した分析に役立つ強力な機能と言えるでしょう。
この機能は、設定のハードルは高いですが、無償版のGA4でも利用可能となっています。Salesforce Sales Cloudの利用が前提の機能ではありますが、本機能によって解決する課題がある場合は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。