2023年1月20日、Google Optimizeのサービス提供終了が発表されました。
Google Optimize Sunset – Optimize Resource Hub

Google Optimizeは無料で手軽に使える上、GA4のオーディエンス連携で直接売上貢献もできる、神がかったツールだったのですが、残念ながら2023年9月30日までしか利用できません。

直近のアナウンスでは今後「サードパーティのA/Bテストツールと連携できる」とのことですので、その連携について考えます。

連携メリット1:GA4でもデータが閲覧可能になる

執筆時点ではABTasty、Optimizely、VWOの3つのツールがGA4連携を発表していますが、その仕組みをざっくり解釈すると以下になります。

  1. ツールがA/BテストのデータをGA4にイベントとして送信してくれる
  2. その際に送信されるイベントパラメータをカスタムディメンションに(イベントスコープで)登録する
  3. 探索レポートでカスタムディメンションを利用し、テストごとにユーザーセグメントを作る
  4. オーディエンス定義でカスタムディメンションを利用できる

連携ツールを使うメリットは実装ガイダンスがあること

つまり、仕組みを見てわかるとおり、以前からあった連携方法とあまり大差はなく、A/BテストのデータをGA4の中でも確認できる、という点が3つのツールに共通していました。

よって、この連携の仕組みを使ってGA4にデータを記録する仕組みは、これらのツールだけが実現できる固有の機能ではありません。

しかし「GA4でA/Bテストのデータが確認できる」ということについて考えてみると、以下の2つが挙げられます。

  • 一般的にA/Bテストツールが提供するレポートで確認した方が結果はわかりやすい
  • GA4の探索レポートをテストごとに手動で作る必要がある

したがって、「GA4でA/Bテストのデータが確認できる」というのは実質的には、単に「万が一ダブルチェックしたい場合にGA4も使える」ということになります。

もしGA4での閲覧を生かすなら、以下のようなことが考えられるでしょう。

  • GA4で閲覧することにより、サービス固有の会員番号(user_id)やGoogleシグナルと統一されたデータを閲覧できる
  • GA4に入ったデータはBig Queryへの出力が可能なため、A/Bテスト結果を別のツールと連携できる

ただし他のツールでも同様のことが可能と捉えると、執筆時点で連携を発表しているツールを使うメリットは、本質的には、「そのための実装ガイダンスがあることで導入ハードルが下がっている」という点になるでしょう。

実装の留意点:イベントパラメータをカスタムディメンション登録する

3つのツールに共通するのは、固有のイベント・テストID・パターンIDをGA4に記録する、ということでした。

Google Optimizeも含め、それぞれのイベントパラメータをまとめるとこのようになります。

ツール イベント名 テストID パターンID
ABTasty abtasty abtasty_campaign abtasty_variation
Optimisely optimizely_decision_web optimizely_experiment optimizely_variant
VWO VWO vwo_campaign_name vwo_variation_name
Google Optimize experiment_impression experiment_id variant_id

 

全ツールがほぼ同じ情報を送っているのですが、ツールによってイベント名もパラメータ名も全く異なる点が残念です。Google Optimizeのイベント名・パラメータ名はより一般化された名称(ツールによらない)なので、できればこれに揃えて欲しいものです。

今後、ツール側の仕様が変わる可能性もありますが、ガイダンス通りの連携を行う場合は、イベント変更・イベント作成機能を利用することで、イベント名やパラメータ名を修正する手段もあります。

具体的な実装方法はそれぞれのツールで下記に記載がありますので、既にこれらの3つを使うことが決まっている方はご参照ください。

連携発表済みのツールに囚われなくても良い

先にも書いたとおり、技術的観点では1番目のポイント(イベントを送信してくれること)が実現できていればよいので、現在使っている(もしくは今後利用予定の)A/Bテストツールで同様のことが実現できれば、先の3つのツールに囚われる必要はないでしょう。

例えばAdobe TargetではフロントエンドのJS APIを使うことで同じことが実現可能です。おそらく他の同様のデータを出力してくれるツールでも、仕組みを真似てカスタマイズすれば同様のことが可能です。

その際は独自イベント名・パラメータ名を使っても良いのですが、できればGoogle Optimizeと同じイベント名・パラメータ名を維持した方が良いでしょう。理由はGoogle Optimizeで行ったA/Bテストと比較したい場合に、全く同じパラメータが流用可能だからです。

セグメントを作ればイベントパラメータ名(カスタムディメンション名)が異なっても比較はできますが、カスタムディメンションが異なると表で見る場合に横並びの比較がしにくくなることが懸念されます。

連携メリット2:GA4のデータをA/Bテストで使える

連携メリット1で挙げたのはA/Bテストツール→GA4の流れのデータ連携でした。執筆時点で連携を発表している3つのツールのうち、ABTastyだけが逆のデータ連携(GA4→A/Bテストツール)についてもガイダンスを出しているので、これについても考えてみます。

AB TastyのPull Integrationの仕組み

下記ガイダンスによると、GA4のオーディエンスを対象にA/Bテストを行うことができる、と書かれています。

しかし連携方法からすると、どの程度の効果が期待できるか、若干疑問符もあります。
Google Analytics 4 – AB Tasty

まず、GA4からAB Tastyがデータを取得する方法ですが、大枠以下のようになります。

  1. AB TastyがGA4に送信するイベントでユーザープロパティ(ab_tasty_visitor_id)を付与する
  2. GA4ではカスタムディメンションとしてab_tasty_visitor_idを登録する
  3. GA4のセグメントを作成する
  4. Data APIからデータを抽出し、ab_tasty_visitor_idをキーに突合する

つまり、仕組み上は次の制約があると考えられます。

AB Tasty導入以降のデータが利用可能

  • AB Tasty導入後にイベントが(大きく)増加する

Data API経由のため、集計データをベースにした連携となる

  • 前日のデータに基づく連携(リアルタイムではない)
  • カスタムディメンションのデータがうまく渡せない可能性がある

使う価値はあるが、Google Optimizeと同等の性能は望めない

仮にAB Tastyを導入すると「制約はありつつもGA4で作成したセグメントをターゲティングできる」という意味では、Google Optimizeと同じようなことができます。

もちろん、データのリアルタイム性や連携可能なセグメントのサイズが減るため、Google Optimizeと同じレベルで利用できるわけではありません。とはいえセグメントサイズが気にならない程度にトラフィック量のあるサイトであれば、このオプションで十分にA/Bテスト利用可能なサイトも出てくるでしょう。

逆にトラフィックの大きなサイトで気になる点として、カスタムディメンションの利用という観点もあります。

カスタムディメンションに含まれる値は、仕様上は、高基数になると(Other)のように丸められてしまうことになっています。よって、トラフィックが大きければ良い、というものではない可能性もあるため、注意が必要です。

また、より精度高くターゲティングに利用するには、BigQueryに出力されるローデータを利用する方法がありますが、執筆時点ではBigQueryにGA4のデータが出力されるまでのタイムラグの課題や、GCPのコストがかかる懸念もあります。

GA4のData APIを利用する方法には精度上の課題はありますが、GA4側のコストが無料でも可能という意味では、Google Optimizeの代替となりうるオプションでしょう。

まとめ:機能ではAB Tastyが半歩先だが、GA4への連携は横並び

この記事では、Google Optimize終了が発表された直後のリサーチに基づくA/Bテストツールの解説をしました。

今後、各社が対応方針を変えていく可能性もありますが、2023年時点のA/Bテストツール選定の参考としてお役立ていただければと思います。

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似田貝亮介

千葉大学工学部卒。データ解析エンジニア。

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