これまでウェブの分析はGoogleアナリティクスで、アプリ分析はFirebaseでと、ウェブとアプリで別のツールを使い分けていましたが、これらが統合されるのがGoogleアナリティクス4です。
今後、既存のGoogleアナリティクスとFirebaseはサポート終了となります(時期は未定)。そのため、Googleアナリティクスを利用しているデジタルマーケターは今後の対応について検討しなければなりません。
本記事では、事業会社のデジタルマーケターが最低限押さえておくべきGoogleアナリティクス4の基本を、今後求められる対応と合わせて解説していきます。
記事の内容
- 次世代Googleアナリティクスの設計思想
- 旧アナリティクスから変化したデータ構造
- Googleアナリティクス4の活用イメージ – 機械学習による高LTV見込みユーザーへのリマケ強化
次世代Googleアナリティクスの設計思想
Googleアナリティクス4の公式リリースが出たのは昨年10月。本記事の時点でちょうど4か月ほど経過しましたが、公式ブログ発表後はデジタルマーケの業界でひとしきり話題になりました。
この公式発表のブログ記事は少々文章が分かりづらいですが、Googleアナリティクス4がどんな思想で開発されたツールなのかが詳しく書かれています。重要なポイントは以下の3つです。
- ポイント① ジャーニー全体での顧客理解
- ポイント② 機械学習を活用したアクション直結の分析ツール
- ポイント③ ポストCookie時代のユーザー識別
このGoogleアナリティクス4の開発背景となったポイント3つを詳しく見ていきます。
ポイント① ジャーニー全体での顧客理解
ウェブやアプリなど複数のプラットフォームをまたいだ消費行動が一般化しているのに対して、従来のGoogleアナリティクス、Firebaseはデバイスによって計測ツールがバラバラでした。
一方で、Googleアナリティクス4では、ユーザーのジャーニー全体を踏まえた分析ができることを目指しています。これは、ウェブやアプリなど複数のプラットフォームをまたいだ統合分析ができるだけではなく、ユーザー軸で顧客のジャーニー全体を捉え分析できることを指しています。
具体的にはまだ開発中の部分が多いようですが、LTV(ユーザーがジャーニー全体でどの程度の収益貢献をしているか)を追えるレポートも登場しています。
ポイント② 機械学習を活用したアクション直結の分析ツール
分析データのリアルタイムな活用というのは以前から概念としては提唱されてきましたが、実際のところはGoogleアナリティクスに蓄積されたデータを元にアクションに繋げるには、分析面のハードルが高く、また具体的な施策を実行する手段が乏しいのが現実でした。
Googleアナリティクス4では、機械学習による自動予測機能が搭載され、またGoogle広告との連携が強化されました。これによりスピード感を持って蓄積データを解析し、より投資対効果の高いことが見込まれるユーザーを狙って広告を打つことができるようになります。
Google広告に取り組まれている多くのマーケターにとって、今後、このGoogleアナリティクス4の蓄積データ活用は欠かせない重要なテーマになってくると思います。
ポイント③ ポストCookie時代に合わせたユーザー識別
プライバシー保護のグローバルな動きの中で、Cookie規制強化によるGoogleアナリティクスのデータ欠損はますます広がりを見せています。
欧州で先駆けて施行されたGDPR(生活者の個人データを自分自身でコントロールできるようにするための法律)によって、欧州からのアクセスでは各ユーザーからCookie利用の承諾を得る仕組みの導入が必須となりました。
これにより、実際に欧州からのアクセスデータが大きく欠損してしまったというお客様もいらっしゃいます。これは欧州だけの話にとどまらず、近い将来、日本にも広がることは確実です。
これに対しGoogleアナリティクス4は、Cookieに頼らないユーザー識別技術が採用されています。また、機械学習による欠損値補完機能も備えており、ポストCookie時代を見据えたツールとなっています。
旧アナリティクスから変化したデータ構造
少し観点が変わるのですが、Googleアナリティクス4を理解するうえで、裏のデータ構造がこれまでのGoogleアナリティクスと大きく変わった部分があります。
われわれマーケターは、①計測単位、②レポートスコープの2点の変化について押さえておく必要があります。
①計測単位の変化
解析ツールの裏側の技術的な話になるのですが、もともと従来のGoogleアナリティクスでは計測単位は基本は「ページビュー単位」、つまり、ページが読み込まれたタイミングでGoogleアナリティクスにユーザーのアクセス情報が載ったビーコンが飛んでいました。基本は、別途イベント設定等しなければ、ページ読み込みの単位で情報が送信されていたということです。
これがGoogleアナリティクス4では「イベント単位」に変更になりました。例えば、ページを読み込んだタイミングでページ閲覧のイベントが発火し、さらにページをスクロールしていくとまたスクロールイベントが発火するという具合です。
ページ上でのユーザー行動によっても細かくイベントのビーコンが飛ぶので、Googleアナリティクス4では、さらに細かい粒度のユーザー行動が高頻度でGoogleアナリティクスに送られることになります。このあたりの計測ロジックはFirebaseに近いので、これまでFireabseでアプリ分析をされてきた方は馴染みがあるかもしれません。
また、イベントには「自動で計測されるイベント」「推奨イベント」「カスタムイベント」の3種類があります。
自動イベントというのは、ページビューやスクロールなど公式ヘルプページに一覧になっているイベントです。特にアディショナルな実装をしなくてもこのイベントがデフォルトで発火して、Googleアナリティクス側に送信されます。
推奨イベントは、今後の開発を見据えてぜひ実装しておいてください、というイベントのようです。この推奨イベントで取得したデータをもとに機械学習が働くなど、将来的にツールが開発されていった際に機能します。
カスタマイズイベントは、これまでのイベントのようにカスタマイズして取得するものです。
Googleアナリティクス4では、どういったユーザー行動が自社にとって重要なのか、どのようなデータを取得する必要があるのか、最初に各社ごとに分析、レポーティング設計を行ったうえでイベントのカスタマイズ実装をしないといけないので、従来のGoogleアナリティクスよりも導入ハードルが高くなったと言えるかもしれません。
②レポートスコープの変化
これまでのGoogleアナリティクスでは「流入経路別の目標完了数」、「ランディングページ別の直帰率」などユーザーがウェブサイトにアクセスしてから離脱するまでの一連の行為にフォーカスを当てた「セッション単位」のレポートが主体となっていました。
これがGoogleアナリティクス4では「ユーザー単位」のレポートが中心となっています。
ホーム画面を見てみましょう。
少々驚きですが、これまで慣れ親しんできた直帰率やコンバージョン率などセッションを軸とした指標が無くなっていますね。その代わりにユーザー数、エンゲージメントの高いユーザー数等のユーザー軸の指標が中心になっています。
次に集客レポートを見ていきましょう。
集客レポート上でも、直帰率、コンバージョン率といったセッション数を母数とする指標が消えています。代わりに、エンゲージメント率やユーザー維持率などのユーザー軸でエンゲージメントを計る指標が充実していることが分かります。
これまで、各企業で社内報告や各施策の評価にといて直帰率やコンバージョン率といったセッション軸の指標を利用されてきたかと思いますが、Googleアナリティクス4の時代はユーザー軸で施策を評価していくことが求められます。
自社のマーケティング活動の評価に対する考え方をどのように定義するのかについて各企業で改めて考えなおす必要に迫られるはずです。そういった意味で、各社でGoogleアナリティクス4への対応準備は早めに検討を進めておく必要があると思います。
Googleアナリティクス4の活用イメージ – 機械学習による高LTV見込みユーザーへのリマケ強化
Googleアナリティクス4には、予測オーディエンスという機能があります。
蓄積されたウェブやアプリの統合データを、「GA4の機械学習機能でこういう行動取ったユーザーは購入とかLTV高くなる傾向あるよ」というのを自動で解析してくれて、その行動に近い行動を取ったユーザーを予測オーディエンスとし、リマケ配信のターゲティングリストにすることができるようになっています。
GA4は機械学習機能により、エンゲージメントが見込める顧客を見つけGoogle広告でアプローチする機能が今後より充実していくと思われます。
顧客行動データをただ蓄積するだけではなく、機械学習を活用してデータを解析し、そして施策に積極的に反映させる取り組みが、ウェブマーケティングの成否を分ける鍵となりそうです。
まとめ
既存プロダクトはいずれサポート終了になるので、将来的には切り替えが必須となります。まだGoogleアナリティクス4はベータ版のため、どのタイミングで切り替えるかは悩ましいところです。とはいえ、先に触れたとおりGoogleアナリティクス4導入は自社のマーケティング評価の考え方そのものを変えることになるため、早めの準備が必要です。
既存のGoogleアナリティクスとGoogleアナリティクス4は相互に依存関係はなく、並行してご利用いただけます。将来の本移行を見据えたPoCとして、早めにGoogleアナリティクス4を試験導入してみることをお薦めします。
プリンシプルではGoogleアナリティクス4の導入・活用のご支援を行っています。ご興味のある方はぜひお気軽にお問合せください。