課題

オンラインデータと実店舗データが分断されており、カスタマージャーニー全体の可視化や、そこから得られる課題発見によるサービス、マーケティング施策、顧客体験の改善・最適化ができていない

施策

  • マルチチャネル分析の要件定義、分析項目設計
  • Google AnalyticsとSalesforce Commerce Cloudのデータ統合
  • Looker Studioダッシュボード構築

結果

  • オンラインでの行動から実店舗での購買に至るまでの一連の流れを把握し、購入に至ったお客様と至らなかったお客様の違い、顧客体験を改善するための分析基盤が構築できた。
  • BigQueryを利用した分析ノウハウを得られ、傾向を深掘って把握し、アクションの精度を高めるためのアドホック分析が可能になった。

急成長する免税店事業!関西エアポートリテールサービスの取り組み

「Buy Online, Pick up in Store」という顧客サービス

ーー吉本: 平山様、本日はお時間をいただきありがとうございます。まず、御社の事業について教えていただけますか?

平山様: 関西国際空港、伊丹空港、神戸空港の3空港の運営を担う関西エアポートグループの中で、
私たち関西エアポートリテールサービスでは、免税店、お土産店、ラウンジサービス、外貨両替サービスなどの小売・サービス事業を展開しています。
特に近年は、インバウンド需要の増加に伴い、免税店事業が主要な収益源として急成長しています。

今回のプロジェクトで対象とした免税店オンラインショップ「KIX DUTY FREE」はリテール事業の一店舗です。
特徴的なのは、「オンラインでの予約と店舗での受け取り」(Buy Online, Pick up in Store)という顧客サービスを展開しており、
これにより、旅行者は事前に欲しい商品を確保し、空港での限られた時間内で、確実に商品を購入することができます。


ーー吉本: 平山様ご自身の役割についても詳しく教えていただけますか?

平山様: 私は関西エアポートリテールサービス(株)のリテール企画部のデジタルマーケティンググループに所属しています。
主な役割は、リテール事業全体のマーケティング戦略の立案、そしてカスタマージャーニー全体の最適化のためのリソースプランニングです。
具体的には、店舗の認知度向上、顧客満足度を高めるためのサービス開発、オンラインとオフラインの連携強化などに取り組んでいます。

チームメンバーは6名で構成されており、その半数が外国籍のメンバーです。
これは、国内利用客とインバウンド客それぞれのニーズを深く理解し、適切な施策を展開するためです。

ーー吉本:チームの多様性が活かされているのですね。「KIX DUTY FREE」は 多言語サイトで、顧客属性も非常に多岐にわたると思いますが、ユーザー行動の理解と分析にはどのようなアプローチを取られていますか?

平山様: 多面的に顧客を理解するため、複数のデータソースを活用しています。
外部データ、自社のデジタルファーストパーティデータ、店舗でのアンケート調査などを組み合わせることで、より精緻な顧客理解を目指しています。
特に、オンラインでの行動と実店舗での購買行動を紐付けて分析することが、よりよい顧客体験を提供するために重要だと考えています。

GA4とSFCCの融合:顧客行動の詳細な追跡と分析を実現

※構築したダッシュボードの一部
※売上進捗(左)、ブランド商品分析(右上)、商品貢献分析(右下)

ーー吉本: 今回のダッシュボード構築の目的は何だったのでしょうか?

平山様: Google AnalyticsとSalesforce Commerce Cloudのデータを統合し、まず現状把握、カスタマージャーニー全体を可視化することが目的でした。
これにより、オンラインでの行動から実店舗での購買に至るまでの一連の流れを把握し、購入に至ったお客様と至らなかったお客様の違いなどを分析するための、まずはデータ分析基盤を構築することができました。
得られた洞察を基に、マーケティング施策の改善や新たなサービス開発につなげたいと考えていました。


ーー吉本:ダッシュボードの利用後の感想をお聞かせいただけますか?

平山様:
まず、オンラインからオフラインまでの顧客ジャーニーを一貫して把握するための、部門を横断したデータ分析基盤を構築することができました。
お客様がウェブサイトで予約してから実際に店舗で購入するまでの流れを、より詳細に追跡できるようになります。
また、国籍別の顧客行動分析も可能になりました。インバウンドのお客様が増えている中で、国ごとの購買行動の違いを理解することは非常に重要です。
さらに、購入されたお客様と購入に至らなかったお客様の違いも、より明確に把握できるようになります。
これは今後のマーケティング戦略、顧客体験向上のための施策展開を検討する上で、非常に有用な情報になると考えています。
このダッシュボードを通じて、部門間の現状把握の共通化から、商品メーカーやブランドとのパートナーシップも強化できると期待しています。
データを共有することで、より緊密な協力体制を築けると考えているんです。

社内的には、データ分析から活用まで、オンライン店舗からオフライン店舗へのひとつのサイクルを確率することで、より迅速かつ効果的な意思決定ができるようになったと感じています。
ただ、まだダッシュボードの活用は始まったばかりで、具体的な成果はこれからだと思います。
今後、このツールを使いこなしていくことで、部門間を横断したより良い顧客体験の提供や、ビジネスの成長につなげていきたいと考えています。

自社と専門家のコラボレーション

ーー吉本: 弊社へご依頼してくださった理由やきっかけをお聞かせいただけますか?

平山様: そうですね、自社内では対応が難しいテクニカルな領域も含めたコンサルテーションができる点に魅力を感じました。
私たちが見たいデータが本当に正しいのかどうか、常に検証が必要で、実際にやってみないと分からない。
そういった繰り返しの中で、業務全体に対するコンサルテーションという観点から、良いアドバイスをいただけるんじゃないかと思っていました。

実は、G4だけのダッシュボード作成や単一のデータソースを使った分析については、ある程度自社内で対応できるようになっていました。
ただ、今回は異なるデータソースを統合してダッシュボード化する必要があり、そこが技術的に不足していました。
そこで、以前から相談したいと思っていた御社にお声がけさせていただいた、という流れです。

ーー吉本: 自社の取り組みと外部の専門知識の必要性がうまくマッチしたわけですね。

平山様: そのとおりです。自社の能力を認識した上で、御社の専門性に期待して依頼させていただきました。

データ活用の深化と新たな可能性の開拓

ーー吉本: 最後に、今後のデータ活用やリテール事業の展望についてお聞かせください。

平山様: 今後は、Google Cloud上のパブリックデータ、例えばGoogleトレンドなどの活用を検討しています。
これにより、より広範な社会トレンドを捉えた予測や施策立案が可能になると期待しています。
例えば、特定のキーワードのトレンド変化から売上予測を行い、それに基づいて店舗の人員配置や在庫管理を最適化するといった活用方法を考えています。

また、最新のデジタル技術とデータ分析手法を駆使し、オンラインとオフラインの両面でカスタマージャーニーの最適化に取り組んでいます。
データ駆動型のマーケティング戦略を基盤としつつ、人間の洞察力と創造性を組み合わせることで、常に変化する顧客ニーズに柔軟に対応し、より洗練された顧客体験の提供を目指しています。
今後も、テクノロジーの進化とデータ活用の深化により、空港リテール事業の新たな可能性を開拓していきたいと考えています。

ーー吉本: 素晴らしいビジョンですね。本日は貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。

平山様: こちらこそ、ありがとうございました。


インタビュー受け手
関西エアポートリテールサービス株式会社
リテール企画部 デジタルマーケティンググループ 平山 清夏 様

インタビュー聞き手
株式会社プリンシプル
解析コンサルタント 吉本 光一朗

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