プリンシプル事業開発部 人材事業チームの菊池です。今回は、「デジタルマーケティング人材がキャリアを築くための基礎知識」と題してお届けします。

内容は、私がマーケティング職専門の人材エージェントとして、求人企業や候補者の方々と接する機会から得た一次情報に基づきます。想定している読み手は、事業者マーケターとしてこれからキャリアを形成しようと考えている方ですが、人材支援会社の方にもお役に立てましたら幸いです。

デジタルマーケティング人材の活躍の余地

一言でいうと、デジタルマーケティング人材の活躍の場は多いです。

まず、以下はいつも弊社がウェビナーなりブログなりで参照するデータを。


MARKETIMES(マーケタイムズ)国内企業のデジタルマーケティング実態調査2023年/2024年
出典 https://marketimes.jp/digital-marketing-research-2023-2024/

この調査結果は、デジタルマーケティングに対する大手企業の経営者・役員による重要度を表します(n=500)。5段階回答のうち上から2つ目を示す「重要」以上が42%。さらに10名のうち2名がデジタルマーケティングを非常に重要と考えているようです。

上記は経営レベルの視点ですが、より現場に近いニーズは、マーケティング人材の実際の求人から見えてきます。弊社への直接お問い合わせ求人を除き(=ほぼデジタルマーケティング求人のため)、非公開を含め我々がアクセスできる部長レベル以上のマーケティング求人を調査したところ、約48%(n=203)の仕事内容にWEB・デジタルへの要件が含まれていました。

もちろん、CMO、ディレクター配下の職種ではオンライン/オフライン担当など細分化されていますが、上記の経営・CMOレベルの状況からは

  • マーケティング組織の2つに1つはデジタルに関連する業務がある
  • マーケターとしてキャリアを積んでいくには、デジタル領域の経験は不可欠

と見られます。

求められるデジタルマーケティング人材とは

では、求められるデジタルマーケティング人材とはどのような人材でしょうか。一次情報をもとに私が挙げたいのは「戦略立案から実行までできる人材」です。

上記は、マーケティング職専門エージェンシーとして、求人企業から「こうした人が必要」という要望として、また面談者の「自身のこうした点を強みと思っている」という考えとして、非常によく聞きます。弊社はデジタルマーケティング支援も行なっており、現場でもよく飛び交うフレーズです。調査や整理はAIで一発代替可能ですが、実際のところ、戦略×実行のスキルはまだ代替は難しいと感じます。

手を動かすだけの人員でもなく、意見を述べるだけの先生でもない「戦略立案から実行までできる」人材。そんなの、すべての職種で求められるでしょうよという向きのために、できるだけフェアになるよう再び冒頭の求人票調査を、今回は職位を絞らず行なってみました。

分母がすべての求人、分子が仕事内容の記載に「戦略 立案」と「実行」を同時に含む求人の数です。結果は以下の通り。

  • デジタルマーケティング職求人 301/915 (33%)
  • 営業職求人 882/15227(6%)
  • 人事職求人 376/1967(19%)

(参考)すべてのマーケティング職求人 962/3795(25%)

とまあ、かえって直感的でなくなりましたが、他の職種と比較してデジタルマーケティング職は1ポジションで「戦略から実行まで」を求められる率の高いことが分かります。

これは、人事の方に背景を伺うと、曰く「組織として少人数であるほど、1ポジションで多岐に役割を求められる傾向がある(採用部門も同様に戦略・実行を一人で担うことが多い)」とのこと。またデジタルマーケティング固有の「未開な点が多く、会社としても当事者に上から下までを任せたい」という傾向も窺えます。

デジタルマーケティング人材キャリアの積み方

以上で説明してきたような、カバーする役割範囲が広い「求められるデジタルマーケティング人材」のキャリアはどのように形成していけば良いのでしょうか。

軸を設ける

キャリア形成にあたり、闇雲に目の前の仕事に手をつけるよりも(注: 主体的な挑戦マインドは重要)マーケティング仕事を細分化し「軸」を意識することは肝要です。「軸」には事業者/支援者、BtoC/BtoB、広告のアッパー/ミドル/ロウワーファネル…などなどが考えられます。

直近の労働市場の話をすると、BtoB×デジタルマーケティング人材のニーズが旺盛に感じます。求められるBtoBマーケティング経験の要件には以下が含まれていると読んでいます。

BtoBマーケティング経験の要点

  • The Modelの前提としての理解と、営業チームとの横断連携力あるいは折衝力
  • (一般的にはBtoCよりも)制約条件・稟議の多い中で施策を立案、実行した経験

書籍「マーケティングの仕事と年収のリアル」にも、「BtoB領域はマーケティングが手付かずの会社が多く、強化した時の伸びしろも大きい。需要に対して人材供給が足りずキャリア構築の面で魅力的(要約)」という記述があります。2018年の書籍なので、コロナ期を経て今そのBtoBマーケティング人材ニーズが顕在化している印象です。

マーケティングの仕事と年収のリアル (Amazonリンク)

言うまでもなくBtoBとBtoCに優劣はありません。BtoCの方がWEBとの親和性が高く先にデジタルマーケティング人材が浸透した印象ですが、ニーズはいずれも引き続き堅調です。

BtoBマーケティング経験の要件には以下が含まれていると想定されます。

BtoCマーケティング経験の要点

  • (とくにEC)高速PDCA力
  • (一般的に物理的な距離や雇用形態の違いがある)店舗スタッフとの連携の経験
  • (一般的に組織が離れていることの多い)ブランドチームとの連携の経験

現在の仕事から具体的に何を身につけているのかを都度振り返り、言語化しておけると良いです。一方から他方へキャリアチェンジしたい際にも、自身が何ができて何をしたいのか、の棚卸しのため言語化が役に立ちます。

戦略の経験を積むことは難しい

「戦略立案から実行まで」で難しいのは、戦略の経験を積むことです。実行は、手を動かせば良いので分かりやすいです。例えば、デジタル領域の運用広告は、マス代理店へ大掛かりに依頼することなく手元で運用できることが最大の特徴です。

一方で、「戦略」は意識的な人でないと、ただ大がかりなイメージだけが先行しがちです。求人の要件としても多く見かけますが、私がご面談する候補者の方々に敢えてざっくりと聞いてみると、優秀な方でも「うーむ」と唸ってしまうことも少なくありません。

「戦略」という言葉は、人や組織により往々にして使い方が異なります。今回は「戦略」の定義を掘り下げることはしませんが、ChatGPT-4oとClaude 3.5にざっくりと聞いてみると、やはり回答は異なります。

▼ChatGPT-4oによる回答

▼Claude 3.5による回答

目標を設定して、現状分析して、計画を立てて、、と書いてみると年始の普段業務な気もしますし、やることも複雑多岐に渡ります。

計画なら立てたことはあるけど、それで戦略立案したと呼んで良いのか?と自問。

レバレッジを意識する

「戦略」の経験を棚下ろすとき、私はリソース配分という要素に着目し、「何かレバレッジした経験があるか、あるいはそのための工夫をしたことはあるか」と問いかけます。

前の段落で、マーケティングは少人数で組織されることが多いと書きました。

売上を上げる組織には、マーケティングの他にセールスがあります。セールスは、売上を上げる最後の砦として非常に重要な役割を担っています。しかしながら、セールス1名が個人の努力で現在の2倍にすることは可能でも、10倍を上げることは難しいことです(スーパーセールスは稀にいますが)。通常、売上を上げるためには、人員が投下されるのが常です。

一方、売上を10倍にするためにマーケティング人材を10名増やすという例は聞いたことがありません。マーケティングという職種は、成り立ちからして、少人数で大きな成果を出すことが求められるため、自然とレバレッジが必要になると私は考えています。

これでマーケティング人材の成り手が増えたのかどうか自信はありませんが、そうしたレバレッジがマーケティングの妙味だと思います。

実際に経験を積むのは、小さな工夫からで良いでしょう。例えば、2名でやることを1名で行なって成果を維持したり、ある工夫によって同じ時間で成果を3倍にするなどです。こうしたレバレッジの癖をつけることにより、手触り感を持って戦略の経験を積むことができると思います。

まとめ

デジタルマーケティング採用支援・人材紹介事業の運営経験を踏まえ、今回はマーケターとしてキャリア形成をお考えの方に向けて、そのための基礎知識と題して市場環境、求められる人材像、キャリア形成の方法をまとめました。

プリンシプルは、おかげさまで創業14年目を迎え、ミッション「データとアクションをつなぎ、よりよい世界を実現します」のもと、デジタルマーケティング人材がより活躍する社会を目指して事業を運営しています。デジタルマーケティングのキャリア形成をお考えの方に向けて、エージェント兼コンサルタントが無料キャリア相談を承っていますので、以下よりお気軽にお問い合わせください。

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菊池浩之

一橋大学商学部卒。2016年プリンシプルへジョイン。2023年から新規事業開発部 責任者。解析、SEO、広告の知見を掛け合わせたアプローチによる実績多数。

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