プリンシプル事業開発部 人材事業チームの菊池です。
プリンシプルでは「データとアクションをつなぎ、よりよい世界を実現」というミッションのもと、マーケティング活動を推進できる担当者人材の不足によりアクションが進まない顧客に対して、デジタルマーケティング人材の採用を支援する事業を行なっています。
先日実施したウェビナー「デジマ人材が採れないとお悩みのご担当者へ解像度を上げて採用につなげる正攻法の話」において、とくに「求人票の作り方」のくだりで反響をいただいたので本日はその深掘りをしてみたいと思います。
後述するような背景はありながら、コピペの求人も多いと聞き、重要な領域でありながら勿体ないことになっています。求人票は企業と候補者との最初の具体的な接点であり、「集まらない」という課題に対しては求人票のブラッシュアップが重要なアプローチだと考えます。
この記事では、求人票の失敗の例を挙げ、失敗の理由を考察し、さらに改善のアプローチ案を解説します。
求人票の失敗の例
先日のウェビナーでも、惜しい求人票の例を挙げました。
- 求人票の解像度の問題:
(例)メンバーとマネジメントクラスで、記載がコピペ - ベネフィットの問題:
(例)タスクベースでキャリアを伸ばせていくイメージがない
などです。
以下は、実際に挙げられている求人のイメージです(個別に論うことが目的ではないので本来の内容を曲げない程度に加工しています)。
例1.
【仕事内容】
デジタルマーケティング全般、WEBディレクション(とのみ記載)
例2.
【仕事内容】
マーケティングは今後の事業の要です。目標と戦略を定め、自身で責任を持って実行し、継続して成功することで事業に貢献いただきます。
具体的には…(施策の企画・実行・運営、PDCA、戦略立案、、などタスク記載)
例3.
【仕事内容】
マス媒体だけでなくweb広告やデジタルマーケティングの全体を担当いただきます。社内だけでなく社外の関係者とコミュニケーションを取りながら業務の推進をお願いします。
具体的には…(施策の企画・実行・運営、PDCA、戦略立案、、などタスク記載)
先日のウェビナーでは「PRが平均年齢のみ」というアイキャッチな例を挙げましたが、上記はより「よくある」記載ではないでしょうか。実際、我々で「デジタルマーケティング求人」調査したところ、上記のように(デジタル)マーケティング職一般の説明、さらにはマーケティング業務とは何ぞや、に終始している記載は多く窺えます。
分析でわかった傾向・問題点
弊社でデジタルマーケティング求人260件を分析したところ、以下の3つの傾向と問題点が浮かび上がりました。分析には個社や商品・サービスが特定できない程度までマスキングを行ない、人の目と集計にChatGPT-4oを併用しました。
- 具体例の不足:
仕事内容に具体的な例が不足しており、読み手にとって業務のイメージがつかみにくい。全体の8割強が該当する。 - 仕事の影響範囲の欠如:
「何をするか」は記載されている一方で、「それがどのように会社に貢献するか」「成功の指標は何か」といった結果を重視する視点が不足している。全体の7割強が該当する。 - ビジョンの不足:
業務内容に関して、企業のビジョンやミッションと関連付けて説明しておらず、会社や商品、仕事の特徴およびユニークさの描写に欠ける。全体の3割弱が該当する。
理由の考察
デジタルマーケター求人票に改善の余地が多く生まれてしまう背景として、以下の2つが想定されます。
- 専門職の求人であり作成が難しい
- 人事部門の恒常的な繁忙状況により手を掛けられない
前者の専門職性の傍証として、我々の営業活動でも、人材全般は人事部門管轄だがデジタルマーケに関してはマーケ部門が窓口として一次受けしているというケースに出会います。しかしながら、そもそも忙しいから求人を公開しているわけで、部署に業務が追加で降ってくるのはしんどいもの。
またマーケ部門でそれなりに詳しい当事者が居ても、私自身コンサルタント案件で顧客のマーケ求人票チェックに呼ばれることもありました。呼ばれる目的は主に具体性の確認でしたが、業務の要求水準など専門的な内容を自社だけで書ききるのは難しく感じるものと思います。
改善のアプローチ案
求人票を改善するために必要なのは、上記で挙げた問題点を潰していくことで、ポイントは以下の通りです。
具体例を挙げて書く
- 「リード獲得施策の企画・実行・運営」「PDCA」「戦略設計」などタスクの大項目は記載されているものの、それらはマーケティング業務の一般的なムーブであるため、他のデジタルマーケ求人とも横並びになります。自社固有の商品・サービス特性を見せるため、過去行なった施策の具体例を書き加えると、「うちならではの経験できること」を訴求できます。
- 「デジタルマーケティング全般(を任せます)」だと、詳しい人がいないのかな、という印象を与えます。詳しくない人に評価されることをプロは避けるものです。もし、実際に詳しい人がおらず部門の立ち上げから依頼したい場合は、その通り「ゼロ→イチを任せたい」と率直に書くほうが良いでしょう。
仕事の影響範囲イメージを書く
- タスクを具体的に書けても、それだけでは作業屋を募る味気ないものに映ってしまいます。自社でのマーケ活動が如何にして貢献につながるのか、もう少し具体的には、追いかける指標とその指標の伸長による商品・サービスへの影響や、社内でも連携できる部署との関係・その具合を書けると広がりを見せられます。
- 転職の動機でも、影響範囲が自部署限定的で閉じた業務であり面白くなかった、という声があります。社内との交流なく黙々と定められた業務だけという書き方は避けるべきでしょう。
ミッション・ビジョンとの紐付きを書く
- ミッション・ビジョン(あるいはパーパス)は個社が確実にユニーク性を出せる数少ない要素です。それらを列挙するだけでなく、自社の商品・サービスを届ける仕事が社会に如何に影響を与え、ミッション・ビジョンと軌を一にしているかを書けると良いです。
今回の集計では浮かび上がりませんでしたが、自社のマーケティングだからこそ得られる経験がキャリアに与える価値と魅力も加えられると良いと思います。
デジタルマーケターのキャリアについては別にまとめますが、求人票の作成は「欲しい人材に対して、私があなたにとってのベストな選択肢ですよ、なぜなら〜」と、マーケティングだと思うと整理しやすいと思います。
まとめ
今回はデジタルマーケター求人票の見直しについて記載しました。ポイントは以下です。
- デジタルマーケター求人票260件の分析を通じて、惜しい求人票の傾向を洗い出しました。
- 惜しくなってしまう理由は、人事・マーケ部門の繁忙状況に加えて、専門職求人ゆえの作成の難しさと想定しています。
- 分析で挙げた傾向を反転させ、デジタルマーケター求人票見直しのアプローチを提案しました。
プリンシプルのデジタルマーケティング採用支援・人材育成サービスでは、人材の要件定義から求人票の作成支援、人材紹介までを一気通貫に行います。デジタルマーケティング人材が活躍し、データとアクションがつながりより良い世界にすることをミッションとして、事業を進めていきたいと思います。