「Googleしごと検索への求人掲載」は求人サイトを運用する管理者にとって非常に重要な取り組みです。2023年8月末に実装されたモバイルページでのUX変更により、Googleしごと検索の求人詳細ページにおけるクリック率や遷移後のCVRに大きな変化がありました。本記事では、Googleしごと検索の概要からUX変更による影響度、求人サイト運用者が検討するべき取り組みについて書き示します。
Googleしごと検索とは
Googleしごと検索は、検索結果画面内に求人情報を掲載することで、求職者が効率よく求人情報を得られる機能です。
地域や求人投稿日、形態(正社員やアルバイト)、位置情報からの距離など、さまざまな絞り込み機能が備わっています。
特に求人に関連するクエリで表示される機会が多く、自然検索枠の上位に表示されるケースもあり、サイト管理者にとって求人情報を上位に掲載させることは安定的な求職者の応募獲得に寄与します。
2023年8月に実装されたUX変更とは
Googleからオフィシャルな公表はありませんでしたが、筆者が把握する限り、8月末に、モバイルページから応募のボタンをクリックすると瞬時にポップアップが表示される仕様に変更されたようです(それ以前は、クリックすると直接求人サイトへ遷移される仕様でした)。
日本だけに限らず、英語圏でも同様の変更が行われたものと把握しています。
流れとしては、
② 「Apply(日本では応募)」をクリックすると、ポップアップが表示される(これまではポップアップを介さず、直接求人ページへ遷移されていた)。
日本で表示されるケースは限りなく少ないが、英語圏では求人媒体が複数表示されている(テスト中の可能性もあるが、将来的には日本語圏も同様の仕様が採用されるかもしれない)。
上記のように、Googleしごと検索の求人詳細ページにおけるUX変更がありました。
次章では、今回の変更によるサイト側の影響度についてまとめます。
複数サイトでジョブ詳細のCTRや遷移後のCVRに変化があった
複数の求人サイトデータを参照し、分析を実施。
変化の度合いをみるため、各サイトの以下データを指数化しました。
- ジョブの詳細におけるクリック数
- ジョブの詳細におけるCTR
- Googleしごと検索経由でのCVR
※ ジョブの詳細におけるクリック数とは、Googleしごと検索 → 自社の求人詳細ページへの遷移数
ご覧いただくと分かるように、8月末〜9月上旬にかけて、ジョブの詳細におけるクリック数指数やCTR指数が悪化していることが分かります。
一方で、Googleしごと検索経由でのCVRをみてみると、傾向的として伸びています。
※ データへは反映していないが、応募数(CV)まで踏み込むと、比較前後で各サイトのCV数は増加。
応募を促すポップアップが出現したことで「リンク先は応募ページに遷移するだろう」というユーザー心理が芽生え(最終意思の確認)、過去に比べてGoogleしごと検索に掲載される求人情報のみで精査・判断する意識が強まったという仮説が考えられます。
Googleしごと検索にて、求職者(検索ユーザー)は仕事内容や給与・時給、資格手当や職場情報などといった求人票の情報をより深く読む傾向が強まったと言えます。
筆者は個人的に、Googleしごと検索内で応募意欲の高い求職者のみを篩にかけるイメージと認識しています。
上記は、月別に平均指数を算出した表です。
ave_cvr_指数は2023年8月(0.54)から2023年9月(0.77)にかけて改善されていることがわかり、より求人応募に意欲的なユーザーだけが遷移するようになったと考えられます。
※ 11月や12月は市況的に落ち込む季節である為、指数が減少している
Googleしごと検索を最適化する為にできること
Googleしごと検索で求人情報を掲載する為に、どのような打ち手が挙げられるのでしょうか。
大きくは以下の2点です。
①求人詳細ページに求人詳細(JobPosting)の構造化データを実装する
求人詳細ページへ求人詳細(JobPosting)の構造化データを実装することで、Googleの求人検索の表示対象になります。
- datePosting
- description
- hiringOrganization
- jobLocation
- title
など多くのプロパティが用意されています。これらは可能な限り、値を返すことが好ましいです。
より詳細な技術的なガイドラインについては、以下を参照下さい。
参考:求人検索用の求人情報(JobPosting)の構造化データ
②IndexAPIを経由し、求人詳細ページをフレッシュクロールさせる
求人サイトに限らず、賃貸ポータルサイトや大規模ECサイトでは新規ページや削除ページなどが即時に検知され、クロール・インデックスされることが非常に重要です。
- 1週間だけ求人を掲載したい
- 有効期間の短いページ(ライブストリーム動画など)が多い
- 入居者が決まったので、物件ページをインデックスから削除したい
など即時にインデックス登録・削除が必要なサイトは多岐に渡ります。
早期に検知・インデックスさせる方法は、Indexing API以外にも手段はあります。
- XMLサイトマップを活用
- RSS/Atomフィードの活用
- 公開済みページからの内部リンクを活用
- WebSub(旧名称はPubSubHubbub)の活用
しかし、掲載期間や有効期間に制限があるなどの短期決戦では、Indexing APIが最も効果的な手段となります。
ページが追加・削除される度にサイト所有者からGoogleへ直接知らせてくれるAPIであり、その信号をGoogleが受け取ると、フレッシュクロールのスケジュールへ含まれる為、確実にクロールされます。
また、Indexing APIは更新情報を個別にGoogleへ通知させることが可能な為、検索結果に表示されるコンテンツを常にフレッシュな状態で保つことができます。
参考:Indexing APIの使用
BigQueryを組み合わせることで、データドリブンな解析が可能に
2023年2月末に、Google Search ConsoleのデータをBigQueryへ一括エクスポートすることが可能となりました。
メリットとして、
- エクスポートに上限1,000件までという制約がなくなる(Google Search Console APIは上限50,000行/1日あたり)
- Google Search Consoleでは過去16ヶ月しか遡れなかったが、期間の制限がなくなる
- Google Analytics4や広告データ、CRMデータなどと組み合わせた包括的な解析が可能になる
- 従来のUIでは得られなかった、深いデータの洞察が得られる
などが挙げられます。
Google Search ConsoleはSEO運用者にとって、Googleが提供する有力なツールでありながら、管理画面のUI上の使いにくさや抽出データ量の能力不足など、制約面で難がありました。
今後はBigQueryへ一括エクスポートが可能となったことで、深い洞察が得られたり、性質の異なるデータとの突合・解析など、よりデータドリブンな分析が可能となります。
本記事の趣旨である、Googleしごと検索に関連した”Job Listing”や”Job Details”などに関連するデータもエクスポート可能です。
参考:一括データ エクスポート: Search Console のデータを活用するための優れた新機能
最後に
Googleしごと検索は数年前から展開されていましたが、2023年8月末ごろのUX変更により、多くのサイトでクリック率やCVRなどで数値変動がみられました。
応募ボタンのポップアップ表示により、求職者への意思確認のフェーズが挟むように促されたことで、従来よりも求人情報を深く確認するようになりました。
サイト所有者としては、求人情報を即時にクロールさせ、インデックスさせることが非常に重要となります。また、求職者が必要とする求人情報を提供する(リッチ化する)ことや項目の並び順(給与情報は上位に置くなど)を意識することなども併せて大切であると考えます。