2021年5月に開かれたGoogle I/O 2021(基調講演)にて、Googleは新しい検索アルゴリズムのMultitask Unified Model(以下、MUM)の開発に取り組んでいると発表しました。
本記事では、MUMにはどのような可能性を秘めているのか、また2018年10月にGoogleが発表した自然言語処理技術(BERT)と比較し、将来の検索アルゴリズムはどのように変化していくのかを考察します。
Googleが提示したMUMの具体例
MUMに関して、Googleは1つのシチュエーションを例に挙げました。
あなたは以前、アダムス山へ登頂した。現在、来秋に富士山に登りたいと思っており、(アダムス山登頂時と比較して)どんな準備が必要か知りたい。
MUMは会話調や微妙なニュアンスが含まれる言語理解能力が備わっており、あなたが2つの山を比較しようしていることを理解します。加えて、「準備」には地形に対応するためのトレーニングや、秋シーズンに最適なギアの準備を含んでいることも理解します。
以上の検索意図を汲んで、MUMは次のような情報を提供するかもしれません。
- 富士山に登るための体力づくり
- 秋の天候に適した装備
- いちばん難易度が低いコース:吉田ルート
- 富士山の公式の開山期間:7月〜9月
- 登山病にかかるかもしれない
- その地域にある温泉スポット、有名なお土産屋さん、山頂から見える景観など
ユーザーが複雑な課題を解決したい場合、Google検索で平均8回ほどの検索(クエリ)を経ていることが分かっています。MUMが実現すれば、ユーザーが検索する回数を減らしてくれることでしょう。
MUMの特徴
①BERTの1,000倍の強力な処理能力
MUMはBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)のようにAIの機械学習によって構築されており、BERTの1,000倍以上も強力であると明言しています。
MUMは検索したクエリの言語を理解するだけではなく、言語を生み出す能力も秘めています。具体的には、75の異なる言語と異なる検索課題を同時に学習でき、テキストや画像といった情報も同時に理解し、近い将来、ビデオや音声といった形式にも拡大されます。
②言語の壁を取り除く
言語は情報へアクセスする際に大きな障壁となります。MUMは言語を通して知識・知見と読み解くことによって、これらの境界線を取り除くための可能性を秘めています。
例えば、言語以外の情報でもGoogle検索は読み解くことが可能になり、さらに日本語で入力した情報から英語やフランス語の文献を拾ってくるなどが可能になるかもしれません。
※「その言語で検索されている項目を優先的に掲示」するそうです
③異なる形式の情報を理解してくれる
MUMは高度なAIを持ち合わせています。そのため異なる形式の情報同士を連携させ、ユーザーに最適な解決案を提示することができます。
Googleは具体的な例を挙げており、今後MUMの開発がより強化されると、登山用ブーツの写真を撮って「これを使って富士山を登頂することができますか?」と尋ねることができるかもしれません。
そこでMUMは画像を理解し、それを質問と関連付け、あなたのブーツが正常に機能することを知らせます。また、推奨するギアのリストが記載されたブログを、同時にあなたへレコメンドさせることも可能になりそうです。
まとめ
これらのMUMの発展によって、ユーザーが直接的に求める情報を獲得できるだけでなく、Googleが検索意図を最大限汲み取り、サーチアシスタントをしてくれる将来が迫っています。
まだMUMは開発段階ですが、数か月後、数年後には導入が進められるでしょう。このようにGoogleの検索理解力が高まることで、今後は「検索エンジンが理解できるコンテンツ」ではなく「Googleが正しく理解できるコンテンツ」へ傾注していく必要があるかもしれません。
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