Googleアナリティクス4の正式ローンチから約2ヶ月が経過し、また年も改められ2021年となりました。この2021年は、Googleアナリティクス4が普及していくための「ターニング・ポイント」となる年であると思っています。
というわけでこの記事では、ターニング・ポイントとなるであろう2021年にGA4にどのように取り組んでいくべきか、またGA4によってWeb解析がどう変わるのかを考えていきましょう。
変化に歯向かうのではなく、受け入れる
ユニバーサル・アナリティクスからGoogleアナリティクス4へのバージョンアップでは、様々な変化が発生しました。
大きな変化としては、
- アカウント・プロパティ・ビューの3層構造から、アカウント・プロパティの2層構造へ
- 「セッション」を軸とした様々な指標が廃止へ
- (今までのユニバーサル・アナリティクスのレポートUIに慣れた人からすると)レポートUIが見づらい
の3つが挙げられます。
これら3つの変化はどれも、技術力と力技によって乗り越えることができます。
例えば、1つ目のアカウント構成については、プロパティをたくさん作成し、それぞれ設置することで解決できます。また2つ目・3つ目については今回のGoogleアナリティクス4から利用可能になったBigQueryのSQLを使って「セッション」指標を自ら作り出し、ダッシュボードを開発することで解決できます。
このように解決できるとはいえ、これら3つの大きな変化は「Google社が適当に決めた結果このようになった」のではなく、Google社内で長い年月をかけて議論(議論だけでなく、実際のPoCプロジェクトもいくつも行っていると思います)した結果「今のGoogleアナリティクス4の仕様が今のWeb解析にとって適切である」と結論づけてローンチされたものであるはずです。
であれば我々も、「今までのやり方に拘って、技術力と力技で今までのやり方を貫き通す」のではなく「Googleアナリティクス4のお作法に従って進んでいく」必要があります(ただし、どのようにGoogleアナリティクス4を使って欲しいのかについて、Googleからの指針が出ないことは問題だと思っています)。
広告運用に到達した機械学習の波
Google広告の機械学習は、4〜5年前くらいから急速に普及しました。Google広告の機械学習が普及する前の広告運用を思い出してみましょう。
この頃は、キャンペーンや広告グループをたくさん作り、そしてキーワードをたくさん詰め込んでいました(場合によっては、完全一致のキーワードが多数を占めることもあったはずです)。
そして、広告運用者の仕事といえば、それらアカウントのクリック単価などの指標を日々モニタリングし、「上限クリック単価」を上下させたり、アカウントのキーワードや除外キーワードを日々追加することであり、ほとんどの運用者がこれを信じて日々広告管理画面に向き合っていました。
しかしながら、Google広告の機械学習が普及したことで状況は一変しました。
「目標コンバージョン単価」をはじめとする「入札戦略」により、上限クリック単価を上下させる仕事はなくなり、部分一致の精度向上や動的検索広告によりアカウントのキーワード・メンテナンスの手間が大きく減りました。代わりに、「広告クリエイティブに費やす時間」「マーケティング戦略を考える時間」が大きく増えた運用者も多いと思います。
機械学習の波はWeb解析にも到達するのか
上述のように機械学習の波が「Web広告のパフォーマンス改善」に到達して数年が経過しました。次は「Webサイトのパフォーマンス改善」に機械学習の波が到達すると考えています。
機械学習による広告運用の自動化は「広告指標の変化がモニタリングしやすくなった」「推奨する変更案をレコメンドしてくれる」といったサポート機能のレベルではなく、「設定すれば目標に向かって最適化する魔法のような機能」でした。
Webサイト改善の自動化も同様に「ユーザー行動の変化がモニタリングしやすくなった」「サイトの改善案をレコメンドしてくれる」といった機能ではなく「設定すれば目標に向かって最適化するような機能」が出てくるものと私は考えています。
そのように考えた時、「Googleオプティマイズ」がGoogleアナリティクス4によるWebサイトのパフォーマンス改善に大きな役割を持っていると私は感じています。
機械学習によるパフォーマンス改善には、
- どの指標を改善するか(機械学習の目的変数)
- 目的変数に影響を与えるであろう変数(説明変数)
がキーになります。
「Web広告のパフォーマンス改善」における機械学習化では、コンバージョン設計により「目的変数」を設定し、広告プラットフォームの持つ様々なシグナルと広告クリエイティブが「説明変数」に該当しました。
今後の「Webサイトのパフォーマンス改善」では、GA4で設定する目標設計により「目的変数」を設定し、GA4で実装する様々なイベント設計並びにGoogleオプティマイズで作成するクリエイティブが「説明変数」に該当すると考えています。
そして、改めてGoogleアナリティクス4の仕様を見てみると、イベントベースで計測することは、機械学習で必要な「説明変数」を増やすことに役立っていると思われます。また、汎用的なユーザー操作に対するイベント名を統一することで、Googleアナリティクスのプロパティを跨いだ機械学習も視野に入ってくるかもしれません。
GA4 × オプティマイズの世界観
本記事執筆時点では、Googleアナリティクス4とGoogleオプティマイズの連携はローンチされていません。
しかしながら本記事に記載した通りの世界が実現されると、Web解析がどう変わるのか想像することができます。
予測① 複数のクリエイティブ・テスト
広告運用において1つの広告グループに対し3〜5個程度の広告クリエイティブを設定することが推奨されているのと同様に、Googleオプティマイズでも様々なパターンのクリエイティブ・テストを行うことが推奨されてくるはずです。
予測② 最適化アルゴリズム
また、Google広告では広告クリエイティブの出し分けを「広告ランク」に基づいて行っているのと同様に、Googleオプティマイズにおけるパターンの出し分けにも「広告ランク」に近いものが導入されるかもしれません。
そうなると、その他の説明変数の結果を元にユーザーごとに最適なパターンが表示されるようになるでしょう。結果として、GoogleオプティマイズのABテストの同時実行数が3個では満足できない広告主がたくさん出てきて、Googleオプティマイズ360の利用が加速されるかもしれません。
このような未来がきたとき、重要になるのは広告運用における機械学習と同様に「機械学習がどのような時に効果的に動くのかを知り、そのような環境を作ること」です。
まとめ
今回は2021年最初の記事ということで、今後Googleアナリティクス4にどのように取り組んでいくべきか、またGoogleアナリティクス4によってWeb解析がどう変わるのかを考察してみました。
執筆している私自身ですら、2021年の間に「GA4 × オプティマイズの世界観」のような変化が起こるとは信じられません。しかし、思いもしない出来事が起こるこの世の中では、こういった変化が起きても不思議には思いません。
また、少なくともGoogle自身は「今までのやり方に拘って、技術力と力技で今までのやり方を貫き通す」ような考え方を推奨しないはずです。Googleの新しい推奨方法を早く察知して、それに乗っ取っていきたいと思います。