2018年頃から職場での会話やSNSの投稿などで「カスタマーサクセス」という言葉を見聞きする人が増えているようだ。耳慣れないカタカナ言葉にもかかわらず、「なぜ大事なんだろう」 と関心を寄せている。

しかし、カスタマーサクセスの細かな方法論に終始し、一番知りたいはずのカスタマーサクセスの本質や重要なポイントが分からないまま終わることが多い。

この記事では、書籍『カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」』(弘子ラザヴィ著 英治出版)をもとに、「カスタマーサクセス」の本質に迫る。

記事の内容

  • カスタマーサクセスとはなにか?
  • カスタマーサクセスの必然性と本質
  • カスタマーサクセスはどのような成果をもたらすか

カスタマーサクセスとはなにか?

米国で生まれたカスタマーサクセスという概念は、まだ日本には浸透していない。それどころか最初は拒否反応を示す人が多く、「このままでは日本は世界から取り残されてしまう」と危機感がつのる。

ましてや日本のカスタマーサクセスの勉強会では議論が細かな方法論に終始し、本質や重要なポイントが正しく伝わらない危険性を感じる。

出典:「カスタマーサクセスとは何か」弘子ラザヴィ著

カスタマーサクセスの言葉の意味をそのまま変換すると「顧客に成功を届けること」である。モノでもなくコト(体験)でもなく、「成功」というところが重要なポイントになっている。

米国で勢いよく成長するクラウド市場によりカスタマーサクセスという言葉は生まれた。そのためカスタマーサクセスはクラウド事業だとか、サブスクリプションモデルの事業に対するものという、誤った認知がされていたようだ。しかし当然のことながらサブスクリプションモデルだからカスタマーサクセスなのではない。

ましてやクラウドだから必要なわけでもなく、むしろあらゆる事業にとってカスタマーサクセスの考え方は必要である。さらにその本質はリテンションモデルにあると訴えている。

カスタマーサクセスの必然性と本質

カスタマーサクセスの必然性(Why)

従来のモノ切り売りモデルにおける、例えば大企業が持つサプライチェーン基盤での取引優位性など、従来の勝者の競争優位性は失われつつある。

日本においてもモノづくりは大きな変化を余儀なくされている。にも関わらず、いざリテンションモデルに対峙すると過去の成功の呪縛に囚われてしまう日本企業が多い。

リテンションモデルから逃れられない時代に対して、その答えとなるのがカスタマーサクセスというわけである。

カスタマーサクセスの本質(What)

カスタマーサクセスは平たく言えば「サザエさんにでてくる三河屋の三平さんの現代版である」である。

なぜ現代版なのかというと、カスタマーに届けるのが「モノか成功か」の違いが大きい。しかしながら両者には「商いは買っていただいた後が大切」という、基本精神が共通している。

本の著者の見解

日本人の心の中に「商いは買っていただいた後が大切」の精神はまだ生きていると著者は信じている。

そのため米国のやり方に合わせるのではなく、日本人が得意としていることをデジタル時代に合わせてよみがえらせる発想が良いのではないかと解く。

なぜ本書がHowではなく、WhyとWhatを中心に書かれているのかは?それは日本での成功事例がこれから次々と生まれることに期待を込めているからのようだ。

カスタマーサクセスはどのような成果をもたらすか

カスタマーサクセスがもたらす成果を明確にすることは重要である。なぜなら、カスタマーサクセスをどのように設計するかは、それに対する投資の主ないくつかの動機に左右されることが多いからだ。

チャーン(解約や乗り換え)は現在の大きな潮流となっている定期収益ビジネスに致命を与えかねない。チャーンレートが高すぎ場合、カスタマーサクセスへの投資がひとつの解決策になる。

ただし重要なのは、カスタマーサクセスに投資しても、製品自体が十分にいいものではなければならないということだ。いかに質の高いカスタマーサクセスであろうと取り組みは失敗に終わるだろう。

すべての条件で同じように競争力があれば、カスタマーサクセスを行う人、プロセス、テクノロジーへの投資が、チャーンの減少(高すぎる場合) または管理(ほぼまたは完全に許容範囲内かつ持続性がある場合)につながる 。

もちろん、具体的に利益がいくらになるかは、サービスの契約金額の規模によって変わる。

チャーンによる弊害は、金銭面にとどまらない。

会社は必ず人で構成されているため、会社でチャーンが発生すると人も影響を受ける。人はつながっており、 悪い評判はすぐ拡散される。大勢の人の目に触れる製品や多くの人が使ったことのある製品であれば、 悪影響は大きく広がり得る。

また離れていった顧客が競合会社の製品を買う可能性も非常に高い。 争っているチームとの直接対決に負けたようなものである 。自分の1敗が相手の1勝になるのだから、二重の痛手であり競争市場においては非常にダメージが大きい。

さらに、自社の元顧客が競合会社の参考になれば( 競合会社は何としてもそうしようとするだろう)、 状況はますます悪化する。これが二次的な弊害だ。

対して二次的な好影響とは何か? 二次収益はご想像通りクロスセルとアップセルだが、この作用については、また論じたい。

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田村幸市郎

早稲田大学教育学部卒。データ解析コンサルタント。GAIQ、Adwords認定資格、Marketo Certified Expert、SalesForce認定Administrator資格所持。

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