本記事で触れているGoogleアナリティクスは、ユニバーサルアナリティクス(UA)を前提としています。
GA4を対象とした記事ではございませんので、ご注意ください。
こんにちは、データ解析エンジニアの西です。 前回記事、米国エキスパート執筆「Googleアナリティクス/タグマネージャ解体新書」かいつまみレビュー(前編) に引き続き、後編をお届けします。 今回は第三部・Appendixの内容に対応しています。
本稿は下記の読者を対象にしています。(前編と同じです)
- Googleアナリティクス・Googleタグマネージャの仕組みを詳しく知りたいウェブ担当者・コンサルタントの方
- Googleアナリティクス・Googleタグマネージャに興味のあるエンジニアの方
*ご注意* 日本語翻訳は当ブログ筆者による意訳です。公式のものではありませんのでご了承ください。
本の構成(再掲)
本の構成は全部で3部、15章(+Appendix)で下記の様に構成されています。
- 第一部 GTMによるGoogleアナリティクスの導入
- 1章 Googleアナリティクスの土台をおさえる
- 2章 Googleアナリティクスによるアクセス計測の基礎
- 3章 GTMの紹介
- 4章 導入したGTMを確認する
- 第二部 GTMでウェブサイトを強くする
- 5章 GTMによるウェブサイト計測の操作方法
- 6章 ゴール:コンバージョンを測定する
- 7章 Eコマース:製品と購入を測定する
- 8章 データをきれいにする・豪華にする
- 9章 キャンペーンの計測とトラブルシューティング
- 10章 デバイスをまたぐユーザー行動の測定
- 11章 ユーザーに関するデータをさらに追加する
- 第三部 データを集める別の方法
- 12章 データインポート
- 13章 スマホアプリからデータを集める
- 14章 メジャメントプロトコルによるデータ送信
- 15章 ビッグデータ解析のためのBigQuery連携方法
- Appendix GTM APIとGoogleアナリティクス API
本稿は第三部・Appendixの内容に対応しています。
各章のポイント&レビュー
では、具体的に中身をポイント+レビューという形でご紹介します。 各章毎に、下記の構成で記述しています。
- *章のポイント(リスト)
- *レビュー・感想
第三部 データを集める別の方法
12章 データインポート
- Googleアナリティクスはデータをまとめてインポートする方法を提供しており(既存のいずれかのディメンションと連結)、他のシステムのデータとの連結などが可能
- インポートにはまず「データセット」が作られ、データセットはプロパティとひもづく
- Eコマースの決済データ更新や製品データ・ユーザーデータなど様々なデータ型に対応する
データセット(データベースでいえばスキーマ)を設定すると、Googleアナリティクスのデータを割と気軽に拡張できます。まるで無料のデータベースのようです。(ただし制限あり=1プロパティで50データセットまで)。 例えば「UserID(10章で紹介)と自社CRMのデータを連結して格納」なども可能です。その際にCSVファイルなどをアップロードするのですが、細かい解説が載っています。
13章 スマホアプリからデータを集める
- スクリーンビューやイベントなど、モバイル用のデータを収集できる
- GTMはAndroidとiOS用にソフトウェア開発キットを提供している
- GTMのモバイル用コンテナでは、トリガーとしてDataLayerへのPushのみが選択できるなど、ウェブ用との違いがある
- GTM経由によるアプリの内容(値)の変更や設定の変更が可能(アプリストアのバージョンによらず)
- モバイルではセッションの表現にDatalayerを用いる
Google検索結果でスマホ対応が影響するなど、ウェブにおけるモバイルの重要性は日に日に高まっています。それゆえか他の章よりも手厚い内容に感じられました。本章ではスマホアプリにフォーカスして、Googleアナリティクスのプロパティ設定「ウェブサイト」と「モバイル」の違いや、GTMをつかってアプリをバージョンアップせずにデータを変更する方法(!)などテクニカルな技を紹介しています。
14章 GAのメジャメントプロトコルによるデータ送信
- メジャメントプロトコルはいろいろなデータをHTTPリクエストでGoogleアナリティクスに送ることができる仕様
- ウェブサイトやスマホアプリ以外でもデータを収集してGoogleアナリティクスへ格納が可能
- いったんデータを格納すれば、ウェブサイトやスマホアプリデータと同じようにレポートを見ることができる
メジャメントプロトコルはGoogleアナリティクスへデータを送るための土台となっている仕様です。この仕様を用いて、例えばIoT機器のセンサーデータを送る事も出来ます。このあたりは弊社ブログ(Raspberry PiとメジャメントプロトコルによるIoTのトラッキング)でも紹介しています。この章での解説の通りHTTPリクエストによるシンプルな仕様ですので、Googleアナリティクスをデータ保存場所として活用する例は今後増えそうな気がしています。
15章 ビッグデータ解析のためのBigQuery連携方法
- BigQueryはビッグデータに最適化されたデータベースで、SQLで利用できる(ただし普通のデータベース・SQLとは少し違う)
- Googleアナリティクスプレミアム(GAP)利用者はヒットレベルのGoogleアナリティクスデータをBigQueryへエクスポートできる
- BigQueryはGoogleアナリティクスと同様にCRMなど別のシステムのデータを統合してデータウェアハウスとして利用できる
最近はデータの保存コストが劇的に下がり、ビジネスの世界ではビッグデータ活用が競争力を左右するようになってきました。本章ではGoogleアナリティクスの裏の仕組みとして実際に使われてるインフラを、誰でも利用可能にした「BigQuery」を紹介しています。また自社システム(CRMなど)と連携させ、自社DMP(Data Management Platform) のように利用する方法を解説しています。
Appendix GTM APIとGoogleアナリティクスAPI
付録としてGTM APIとGoogleアナリティクスAPIが紹介されています。ボリュームとしては少なく、下記の内容を”さらーっと紹介” 程度の内容です。(本書が全体で260ページに対してAppendixは6ページ)
- ●Google APIの基本
- ●GTM API
- ー GTMコンテナとJSONフォーマット
- ●GoogleアナリティクスAPI
- ー Reporting API
- ー Configuration API
APIについてはオフィシャルサイトなどの情報を利用した方がよさそうです。APIの調べ方については弊社ブログ記事をご紹介しておきます。
Google Analytics API の調べ方
総評(まとめにかえて)
前編・後編に分けてGoogleアナリティクス/GTMの詳細解説本をレビューしました。”開発者のための”と銘打っているだけあり、かなり詳細の仕様まで踏み込んだ内容です。英語ですしボリュームの多さに最初圧倒されましたが、実際読んでみると「無駄がなく」「丁寧な解説」で非常に読みやすかったです。ブログなどで書き慣れているのでしょう、文章のうまさを感じました。
Googleアナリティクス・GTMは時間を経るにつれ機能がどんどん拡張され、仕様を確認するのが難しくなってきています。全体を俯瞰したい場合はやはり本のような形で手元にあると安心です。
ワンモアポイント 〜ウェブ時代における紙の本の存在意義〜
最近ではニュースなどの最新情報を得るために用いられるのは新聞ではなくウェブです。ウェブ開発の場面で仕様を確認するなどの際も「ウェブで検索」です。 それでも体系的な知識を得るためにはやはり、本のような形式がベストです。 最近は電子書籍も洗練されてきていますが、紙の本には下記のようなメリットがあり私は好きです。
- 「本棚効果」・・本棚にある背表紙をチラ見するだけでもそれがトリガーとなり、内容が呼び起こされ記憶は強化されます。自分にとって重要な事柄の関連書籍はやはり本棚に置いておくと効果があります。(逆に言えば、今の自分にとって重要でない本は捨てた方が良いでしょう)
- 「初読は紙が早い」・・Kindleペーパーホワイトなどなかなかよいですが、それでも最初は紙が早いです。紙は”一覧性”・”視認性”では一日の長があり、時間が貴重なビジネスの世界ではこの差はあなどれません。
また、図書館を利用すると実質的に低コストで利用できます。Amazonのページから直接予約など可能なLibronのようなツールもあります。 著作権でがんじがらめのデジタルコンテンツと違い、紙は人との共有が(アナログですが)簡単です。 購入コストで悩むくらいなら、関連書籍ごと借りて多読しましょう。 ビジネスパーソンに、図書館は実はおすすめです。