新型コロナによるデジタルマーケティング環境の変化

新型コロナの影響で消費者の価値観に大きな変化が起きており、アフターコロナの時代には顧客の消費行動も変わっていくことが予想されます。事業者のデジタルマーケターの皆さまからも「コロナの影響で利用ユーザー層やニーズが変わっているのではないか?」、「コロナが落ち着いた後にそれがどのように変わっていくのだろうか」と気にかけていらっしゃるというお話を最近よくお伺いします。
今後はリアル店舗に代わってオンラインの消費行動がより活発になるのは確かでしょう。それによって、各企業でデジタルマーケティングやウェブサイトの重要性やデジタルマーケターに求められる期待値はさらに大きくなるはずです。

ナイキ(Nike)が発表した2020年度第3四半期決算は、新型コロナの影響を受け中国で多くの店舗を休業したにもかかわらず、オンライン売り上げが伸長して堅調な業績となりました。
中国の消費者に自宅での運動を促進したことで、NIKE Traning Clubの新規登録者が急増、アプリ内のアクティブユーザーの数は、前のシーズンと比べて80%増加。結果、デジタル事業の売上は前年比30%以上の成長となりました。

(*)参照情報
NIKE, INC. REPORTS FISCAL 2020 THIRD QUARTER RESULTS
FY 2020 Q3 Earnings Release Conference Call Transcript March 24,2020

事業者のデジタルマーケターとして、この外的環境の大きな変化に対してこれまでの「ユーザー像」を改めてとらえ直し、新しいユーザーニーズ、消費の形に対応するアクションが取れるか否かによりこの先のビジネスの成長に大きく影響してくるのではないでしょうか。

本稿では、新しいユーザー像、ユーザーニーズを捉える方法として、CRMデータとGoogleアナリティクスの統合分析とユーザーアンケートを活用した優良顧客のペルソナ設計についてご紹介します。

直近の購買データ、ウェブサイトのアクセスデータをもとに、優良顧客を改めて分析し、ペルソナに落とし込むことで、より今狙うべき顧客層やニーズが明確になります。

それによって、新規顧客獲得においても自社の優良顧客になりやすい潜在顧客を効率的に獲得し、また初回購入~優良顧客化までのユーザーとのコミュニケーションにおいても今のユーザーニーズに合わせたより効果的なアプローチ施策が立てやすくなるはずです。

顧客調査の進め方

顧客調査の全体像

弊社では顧客調査は以下のような流れで進めていきます。

  1. 定量分析(CRM分析)
  2. 定量分析(CRM×GA統合分析)
  3. 定性調査(顧客アンケート)
  4. ペルソナ設計
  5. 売上目標達成シミュレーション
  6. 短期・中期スパンのPDCA

大きくは、GAやCRMデータの定量分析と、アンケートで顧客の生の声を聞く定性調査に分けられます。定量分析×定性調査を踏まえて、ペルソナ設計をしていきます。
施策推進の際に必要となるのが売上目標達成シミュレーションです。
さらにその後、施策を実施しながら、短期・中期スパンで定点観測し、データを確認しながらPDCAを回していきます。
順に各ステップについて順をご紹介していきます。

1. 定量分析(CRM分析)

KGI/KPIツリーの可視化

まず、自社KGI/KPIツリーを整理したうえで、CRMデータから各数値を取得して、「初回購入後の2回目引き上げ率が低い」、「一人あたりの購入単価を上げるべき」といった自社ツリーのどこにボトルネックがありそうか、改善の伸びしろが大きそうかの当たりをつけていきます。

RFM分析、顧客グレード分析

直近のR(直近購買日)、F(購買頻度)、M(購買金額別)の顧客分布を把握し、顧客を優良顧客、安定顧客、初期顧客等、顧客グレード定義を決めて分類します。

優良顧客の深堀分析(購入商品、タイミング)

優良顧客に絞り込んで、性別、年齢、居住地域等のユーザー属性情報や、初回購入商品やF2転換タイミングなど、初回購入からこれまでの購買行動を分析することで、ユーザー像やニーズをつかんでいきます。

その後、次のフェーズで、この優良顧客の理解を深耕するため、CRM×GA統合分析でウェブ上での行動を見ていきます。

2. 定量分析(CRM×GA統合分析)

CRM×GA統合分析の目的

CRM分析で作った優良顧客セグメントについて逆引きしてウェブ上での行動を見ることで、さらに顧客像やウェブ接点のシチュエーションや利用ニーズを具体化していきます。

分析基盤の仕組み

その前に、事前準備としてGA統合分析にあたって、GAの追加設定が必要となります。具体的には、GAのカスタムディメンションへ会員IDと、ClientID(GA上でのユーザー固有のID)、Timestampの格納を行います。そうすると、GAから自社会員IDごとのユーザー行動の明細データが取得できるようになります。そのデータと、CRMデータを会員IDをキーに統合することで、CRMデータにGAのウェブ行動データを付与した統合データが完成します。

優良顧客のサイト利用分析

CRM×GA統合データを利用して、CRMで特定された優良顧客に絞って、逆引きしてサイト利用状況の分析を行っていきます。弊社ではBIツールにCRMデータとGAデータを取り込んで分析を行っています。

  • 優良顧客のカスタマージャーニー(認知獲得~初回購入~F2転換~優良顧客化までの態度変容契機など)
  • 優良顧客のウェブ接点分析(優良顧客の日々のウェブの利用状況)

上記のような観点でユーザー行動を深堀っていき、サイト利用シーンや来訪タイミング、ニーズを具体化していきます。

3.定性調査(顧客アンケート)

定性調査が必要な理由

定量データでは全体的な傾向は確認できますが、ボトルネックの要因理解やユーザーニーズの深堀には顧客アンケートやインタビュー調査などの定性調査がとても有効です。

顧客アンケート設計のポイント

テーマ・目的の絞り込み

NPSや満足度の点数を聞くだけではなく、優良顧客の利用シチュエーションや潜在ニーズを探る、定量データ分析で見つかった課題に対するヒアリングを重点的に行うなど、調査目的を絞ったアンケート設計(ターゲットや設問内容)を考えていきます。

数値回答以外に自由回答を設ける

集計の手間はかかりますが、自由回答はできるだけ設けるようにしましょう。顧客の不満や要望といった生の声を聞くことは顧客心理に対する洞察の深みにつながります。
自由回答を設けるとユーザーのストレスになってしまうのでは?というご質問もいただくのですが、特に優良顧客は運営企業に対してモノ申したい気持ちを持っているもので、実際にアンケートをしてみると具体的な悩みや希望をたくさん記述してもらえることが多くあります。

着実に改善につなげる

アンケート自体も顧客に提供する体験の一つのため、顧客が不満や要望の声を挙げても一向に改善されないとなると逆に不満につながり、今後実施するアンケートの回答率も下がってしまうでしょう。すべての声に答えるというのは現実的ではありませんが、顧客からの声に真摯に向き合い、着実に改善につなげる姿勢をしっかり見せることが大事だと思います。

4.ペルソナ設計

具体的なペルソナ像と優先順位付け

定量・定性調査結果から、優良顧客の共通点や傾向、パターンが見えてきます。そのユーザーの年齢、職業、家族構成、などできるだけ具体的なプロフィールに落とし込んでいきましょう。具体的にすることで、社内共有時にペルソナへの親しみや関心を高め、優良顧客像に対する共通認識が浸透しやすくなります。

また、調査結果を通して、アプローチすべきペルソナ像が複数見えてくると思います。売上貢献度の期待値やユーザーボリュームをふまえてペルソナの優先順位付けを行い、優先度の高いペルソナからアプローチを考えていきましょう。

5.売上改善シミュレーションと短期中期スパンのPDCA

売上改善シミュレーション

対象ペルソナの獲得にフォーカスした施策やCRM施策によって、確度が高い潜在ユーザーを増加させて、さらに初回購入後のLTV効率を高めることができた場合の収益シミュレーションを実施します。施策実行に移すにあたって、他部署や経営層の説得、判断のため数値根拠が重要となります。

短期中期スパンのPDCA

さらにその後、施策を実施しながら、短期・中期スパンで定点観測し、データを確認しながらPDCAを回していきます。

短期スパンでは、実施施策の成否を評価し、次回施策に生かしていきます。また、中期スパンでは、KGI/KPIツリー、顧客の声を定点観測して、中期成果の確認と、以降戦略の軌道修正を行っていきます。優良顧客のニーズも刻々と変わるため、一度決めたら終わりではなく、定点的にCRMデータの分析を行い、見直していく必要があります。

最後に

調査の流れを簡単にご紹介させていただきました。デジタルマーケティング環境の変化が激しい時代に今後のアフターコロナの顧客変化をとらえて適切な対策を打っていくためにも、顧客理解の取り組みはより重要性が高まっていると思います。そのための手法の一つとして、なにか皆さまのご参考になりましたら幸いです。

今回、ブログ上では概念的なざっくりとしたご説明となってしまいましたが、こちらのブログをお読みになって、CRM×GA統合基盤の構築について知りたい、顧客調査に興味がある、もっと具体的な事例が聞きたい、という方は具体的なお客様の事例などもまたご紹介させていただきますので下記からお問い合わせください。

「CRM×Googleアナリティクス統合分析によるアフターコロナのペルソナ点検のすすめ」と題して、6/11(木)にウェビナーを開催します。ウェビナーでは、CRM×GA統合分析の基盤構築や分析方法などにフォーカスを当て詳しくご紹介をさせていただきます。ぜひご参加ください。

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村松沙和子

2014年より株式会社プリンシプルに在席し、BtoB、BtoC 合わせて100社以上の解析プロジェクトを経験。Googleアナリティクス、CRMデータなどの定量分析に加え、ユーザーテストなどの定性調査を組み合わせて現状課題を分析、クライアントのマーケティング改善提案、施策実行の伴走を行う。

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