本記事で触れているGoogleアナリティクスは、ユニバーサルアナリティクス(UA)を前提としています。
GA4を対象とした記事ではございませんので、ご注意ください。
こんにちは、データ解析エンジニアの西です。普段はデータ解析環境構築やアプリケーションPaddleシリーズの開発を担当しています。 本稿ではGoogleアナリティクス・Googleタグマネージャについて、特に開発者向けに裏側まで踏み込んだ内容の解説書をレビューします。 本稿は下記の読者を対象にしています。
- Googleアナリティクス・Googleタグマネージャの仕組みを詳しく知りたいウェブ担当者・コンサルタントの方
- Googleアナリティクス・Googleタグマネージャに興味のあるエンジニアの方
【目次】
はじめに
今回レビューする本の作者はトップコンサルティング企業であるLunaMetrics社(米国、シカゴ)のエバンジェリストです。
Amazon.co.jp: Practical Google Analytics and Google Tag Manager for Developers: Jonathan Weber: 洋書
同社のブログはGoogleアナリティクス・Googleタグマネージャ(以下GTM)について記事を数多く公開しており、ウェブ上で調査していると目にする方も多いと思います。 本書は2015年末に出版された、米国におけるGoogleアナリティクス・GTM関連の最新の情報を盛り込んだ開発者むけ書籍です。内容はGoogleアナリティクス/GTMの体系的な解説になります。体系的な情報はオフィシャル以外では貴重であるとともに、「具体的にどうするの?」まで踏み込んでいるので、高いレベルでGoogleアナリティクス/GTMを捉えるための良い資料になります。
*ご注意* 日本語翻訳は当ブログ筆者による意訳です。公式のものではありませんのでご了承ください。
本の構成
本の構成は全部で3部、15章(+Appendix)で下記の様に構成されています。
- 第一部 GTMによるGoogleアナリティクスの導入
- 1章 Googleアナリティクスの土台をおさえる
- 2章 Googleアナリティクスによるアクセス計測の基礎
- 3章 GTMの紹介
- 4章 導入したGTMを確認する
- 第二部 GTMでウェブサイトを強くする
- 5章 GTMによるウェブサイト計測の操作方法
- 6章 ゴール:コンバージョンを測定する
- 7章 Eコマース:製品と購入を測定する
- 8章 データをきれいにする・豪華にする
- 9章 キャンペーンの計測とトラブルシューティング
- 10章 デバイスをまたぐユーザー行動の測定
- 11章 ユーザーに関するデータをさらに追加する
- 第三部 データを集める別の方法
- 12章 データインポート
- 13章 スマホアプリからデータを集める
- 14章 メジャメントプロトコルによるデータ送信
- 15章 ビッグデータ解析のためのBigQuery連携方法
- Appendix GTM APIとGoogleアナリティクス API
各章のポイント&レビュー
それでは、具体的に中身をポイント+レビューという形でご紹介しましょう。
各章毎に下記の構成で記述しています。
- * 章のポイント(リスト)
- * レビュー・感想
第一部 GTMによるGoogleアナリティクスの導入
1章 Googleアナリティクスの土台をおさえる
- 3層構造である(アカウント、プロパティ、ビュー)こと
- 「ヒット」という単位であらゆる操作データを記録し、ヒットをまとめたのが「セッション」、セッションをまとめたのが「ユーザー」
- レポートデータはディメンションと指標というデータ構造をとる
Googleアナリティクスのシステム基盤の本質、大きな幹にあたるデータ構造についての解説です。 ここを理解せずに先に進むことは不可能でしょう。冒頭にふさわしい記事です。
2章 Googleアナリティクスによるアクセス計測の基礎
- Googleアナリティクスはanalytics.jsというJavaScriptコードでアクセス情報を送信している
- Googleアナリティクスは_gaというファーストパーティークッキーでユーザ特定(クライアントID)とドメイン情報を保存する
- クロスドメイン設定の際はこのクライアントIDとドメイン情報が利用される
Googleアナリティクスのトラッキングタグ(ウェブサイトに設置するときのJS)自体の解説が印象的です。たとえば複数のGoogleアナリティクスプロパティを設置したい場合など自分でやると結構難しい設定方法をさらっとわかりやすく解説してくれています。
3章 GTMの紹介
- GTMはウェブサイトの計測タグのバージョンや公開の管理をするウェブベースのツール
- タグ(計測のためのJavaScript)、トリガー(タグが発動する条件)、変数(任意の数値や文字)の組み合わせをGTMコンテナという単位で管理する
- 変数やJavaScript(オブジェクト)によりウェブページのURLやHTML要素などあらゆる情報を扱うことが可能
いよいよGTMの導入ということで、導入する理由や簡単なデータレイヤーまで基礎をしっかりおさえた解説です。データ構造としてはタグ、トリガー、変数でワンセットになっていることを知っていればかなりツールの理解が早くなりますが、入念に解説してくれています。
4章 導入したGTMを確認する
- プレビューモードでGTMコンテナを公開する前に自分のブラウザのみでタグ・トリガー・変数の動作確認できる
- GTMコンテナを公開するとバージョン作成され、バージョン毎の切替が容易
- 確認に便利なツールとしてTag Assitant, GA Debug Extension, ChoromeのDevToolsそしてGoogleアナリティクスのリアルタイムレポートの利用がおすすめ
ここで挙げられているツールは私(ブログ執筆者)もGTM利用時に使っています。まさに必須ツールですね。キャプチャ入りで丁寧に使い方を解説しています。
第二部 GTMでウェブサイトを強くする
5章 GTMによるウェブサイト計測の操作方法
- 2つのヒットの種類があり、ひとつはイベント(例:ダウンロード、アコーディオン、ビデオ再生)、もう一つはソーシャル(FacebbokやTwitterのリンク)でGTMはそれらに対応している
- GTMによる計測方法はトリガーと変数を適切に割り当てること。ざっくり3つの方法(標準機能を使う、HTMLタグを使う、JavaScriptタグを使う)がある
- イベントはGTMのデータレイヤー(JavaScriptオブジェクト)のデータなので、トリガーや変数でも活用できる
GTMでのデザインパターンとして自動イベントトラッキングなどいくつかの定番設定方法を紹介しています。とくにビデオ再生数捕捉などあまり見ないノウハウなども載っているので、役立ち度大です。
6章 ゴール:コンバージョンを測定する
- 目標は到達URLやイベントを指定する事で簡単に設定して指標として比較検討ができる
- URLの場合はステップがあるようなファネルを情報として含む事が出来る
- URLが変わらないよう操作の測定もバーチャルページビューをつかってURLによる目標設定が可能
”目標”の設定方法に関する解説です。目標設定しないならアクセス解析しなくて良いでしょう、というくらい重要なためか、ファネルの意味の説明など丁寧です。サイトがAJAXで簡単にステップを測定できない場合も含めてしっかりフォローされています。
7章 Eコマース:製品と購入を測定する
- 購入完了のみを測定するEコマースと購入完了以外にもあらゆるサイト上の操作を測定する拡張Eコマースがある
- Eコマースは集められるデータが限られるがシンプルである
- 拡張Eコマースはタグの設定がやや大変だが購入に関する多くの解析データを集められる
Eコマース機能はアクセス解析の投資対効果の高いECサイトで必須の機能です。とくに拡張Eコマースが利用可能になってデータが詳しく取得できるのは良いですが、設定は煩雑になりました。無限スクロールページでのインプレッションや細かい仕様まで含めて丁寧に解説してあります。
8章 データをきれいにする・豪華にする
- 測定データをきれいするためにGoogleアナリティクスのフィルターやGTMの例外タグ設定をつかう
- 変更したらテストしないといけない。なぜなら今後取得するデータが影響をうけるのだから
- もっともよく使われるのは自社URLなどをフィルター設定する「内部トラフィック除外」
細かいですが大事な内部トラフィックの除外方法など、実は奥が深い「フィルター」の使い方を中心に、データをきれいに保つ活用テクニック集です。フィルターとセグメントの違いなど、現場のエキスパートならではの活用ノウハウが分かります。
9章 キャンペーンの計測とトラブルシューティング
- 参照元/メディアはデフォルトで用意されているもの以外にもカスタムラベルをつけて取得できる
- Googleは標準でもおおくの参照元/メディア情報をGoogleアナリティクス/GTMで提供している
- 自己参照はもっとも多いトラブルで、タグ忘れやリダイレクト起因、クロスドメイン設定のミス、といった原因がある
サイトへの流入を知るための大切なデータである参照元/メディアの拡張方法について、キャンペーントラッキングの基本的な解説の他、自己参照の回避方法など秀逸なノウハウです。ほかAdwordsとの連携などで役立つGTMでの広告タグの設定などが押さえられています。
10章 デバイスをまたぐユーザー行動の測定
- ユーザー数の測定はクッキーのclientIDが使われる
- ユーザーIDの測定にはプラバシーポリシーを開示するなど慎重にやらねばならない
- 機能としてのユーザーIDはプロパティレベルで設定できる
- GTMではデータレイヤー変数としてユーザーIDを保持できる
会員制サイトなど可能であればクロスデバイスでのユーザー行動を測定をしたい、というニーズは日に日に高まっています。データレイヤーにユーザーIDを出せれば実は手軽に実現できる様子がわかります。
11章 ユーザーに関するデータをさらに追加する
- カスタムディメンション/指標をつかってカスタマイズしたデータを利用できる
- カスタムディメンション/指標はスコープ(ヒットやセッションやユーザー)を指定できる
- カスタムディメンション/指標はGoogleアナリティクスのみでも利用できるがGTMのデータレイヤー経由にすると変数としても扱えて便利
カスタマイズしたデータ計測を利用するためのカスタムディメンション/指標についての解説です。Googleアナリティクスでいっぽ踏み込んだ分析をしたい場合に必須のテクニックですし、GTMでは簡単かつ柔軟に活用できるのでぜひ使いたい機能です。
つづく
長くなってしまいましたので、つづき(第3部とAppendix)は次回、”米国エキスパート執筆「Googleアナリティクス/タグマネージャ解体新書」かいつまみレビュー(後編)”にしたいと思います。