本記事で触れているGoogleアナリティクスは、ユニバーサルアナリティクス(UA)を前提としています。
GA4を対象とした記事ではございませんので、ご注意ください。
はじめに
今日、至るところで見かけるQRコード。食品であれば成分情報、キャンペーンであれば特設サイト等、その用途は多岐に渡ります。
多くのQRコードの場合、設定しているのはWEBページのURLのみで、そこにGoogleアナリティクス(以下、「GA」)でよく使われるutmパラメータといった参照元情報に関するパラメータは見当たりません。
本記事は、弊社エンジニアチーム所属である
・数百のQRコードの読み取り・図鑑作成をしているGuy
という、コード類に並々ならぬ情熱を注ぐメンバー協力のもと、QRコードの運用・計測のベストプラクティスを検討した結果をご紹介していきます。
流入元を確認できるように、utmパラメータを利用する
冒頭で述べた通り、QRコードでWEBサイトへ誘導をする際は、必ずutmパラメータを付与することを推奨します。
QRコードにWEBサイトのURLのみを設定した場合、GAで「参照元 / メディア」の値を確認するとノーリファラーを意味する「(direct) / (none)」にカウントされます。
この「(direct) / (none)」は、
- URLを直接入力してWEBサイトに訪問
- ブックマークからWEBサイトに訪問
等でもカウントされます。
実際はQRコード経由だとしても、utmパラメータがなければGAの仕様上「(direct) / (none)」の中のどのセッションがQRコード経由だったのかを識別するのは難しく、またQRコードをキャンペーンに利用していた場合、どれくらい集客が見込めたかを判断するのも難しいです。
これを防ぎ、かつ正しく効果を計測できるようにする為、QRコードを取り入れる際にはパラメータの値についても運用設計時に検討していただくことをおすすめします。
設定例:
https://www.principle-c.com/mailmag/?utm_source=businesscard&utm_medium=qrcode&utm_campaign=201908blog
ディメンション | パラメータ | 値の例 |
---|---|---|
参照元 | utm_source | チラシやDM、パンフレット等、QRコードをどこで公開したのかが分かる値 |
メディア | utm_medium | qrやqrcode等、QRコードと分かる値 |
キャンペーン | utm_campaign | 20190801やsummereventといった、キャンペーンの公開時期やキャンペーン名等 |
utmパラメータの詳細な設定方法につきましては、以下ヘルプをご覧ください。
https://support.google.com/analytics/answer/1033863
また、utmパラメータの設定にご懸念がある場合は以下ツールのご利用もご検討ください。
①Campaign URL Builder
https://ga-dev-tools.appspot.com/campaign-url-builder/
Google社が提供。URLと各utmパラメータに持たせたい値を入力することで、パラメータ付きURLに変換してくれます。
utmパラメータ利用時によくあるのが、
- 「utm_medium」が「utm_media」
- 「utm_campaign」が「utm_capaing」
等、スペルミスで読み取れない、というケースがあります。上記を防ぐ為に、手入力ではなくCampaign URL Builderを使っていただくことを推奨します。
②GA Campaign URL
https://chrome.google.com/webstore/detail/ga-campaign-url/jhjmonkodjebhfoaoeeighnjpekjgpeg
Outfox社が提供。
スプレッドシートのアドオンであり、こちらは過去に設定したURLもスプレッドシート上に蓄積していくことができます。
QRコードのURLは後から変更できる状態に
QRコードが使われるケースとして多いのが、商品パッケージやチラシをはじめとした印刷物かと思います。その際、例えば
- WEBサイトの改修でドメインやディレクトリ構成が変更
- キャンペーンが終了したのでキャンペーン用ドメインを404ページに変更
- URLを間違えていた
等がQRコード作成後に発生してしまうと、そのQRコードにアクセスすると想定外のページにアクセスすることとなり、場合によっては顧客やファンに不快感を与えてしまうことがあります。
(この記事を書く為に数十種類のQRコードを読み取ってみたところ、とあるQRコードの遷移先は某社のキャンペーン専用ドメインでしたが、現在別の会社が所有しているようで、結果、キャンペーンとは全く関係のないアフィリエイトサイトに遷移しました)
上記のリスクを軽減する目的として、QRコードに設定したURLは、後から手軽に設定変更ができるような状態にすることが望ましいです。その解決方法の一つとして、短縮URLサービスを利用することをおすすめします。
短縮URLサービスを利用することで、下記のようなメリットがあります。
- 印刷後にURL変更があっても遷移先を書き換えられる
- キャンペーン終了後はWEBサイト側でリダイレクト処理をしなくとも、遷移先を手軽に変更できる
- キャンペーン用のドメインをリンク先に設定している場合でも、キャンペーン終了後、ドメインを安全に解約することができる
- QRコードが紙面に占める割合を小さくすることができる
※QRコードに設定する文字列が長いとそれだけQRコードは複雑になります。
あまりにも小さすぎるとQRコード読み取りアプリで読み取れないこともあるので、ある程度の大きさを確保することが必要となってしまいます。最低限、QRコード作成時に短縮URLの値を間違えないように気を付ける必要はありますが、メリットは非常に大きいです。
また、解決方法として短縮URLサービスを利用する際、おすすめしたいのがFirebaseのダイナミックリンクです。FirebaseとはGoogle社が提供するモバイル及びWEBアプリケーションのmBaas型プラットフォーム……と聞くと非常に難しい印象ですが、ダイナミックリンク機能を使うだけなら5ステップで簡単に作成できます。
①https://firebase.google.com/?hl=ja にアクセスし、ページ右上の「コンソールへ移動」をクリック
②Firebase consoleに移動したら、「プロジェクトを追加」から新規プロジェクトを作成
③作成したプロジェクトの管理画面のサイドメニューにある「Dynamic Links」をクリック
④「始める」をクリックしてダイナミックリンク用のドメインを作成
「URL 接頭辞の追加」のポップアップが表示されたら、独自ドメインまたはGoogle社が提供する無料ドメインの接頭辞を入力します。手軽に利用できるという点から後者がおすすめです。
前者はよりアドバンス的な利用をされたい会社向けで、「principle.c」のようなドメインでダイナミックリンクが作成できます。
⑤ドメイン設定が完了したら、「新しいダイナミックリンク」よりダイナミックリンクを作成して設定完了
WEBサイトに遷移させるだけでしたら、
- 短縮 URL のリンク設定:短縮URLの値を指定(QRコードを読み取った時に表示させたい値)
- ダイナミックリンクの設定:
ディープリンク URL…utmパラメータ付きの遷移先URL
ダイナミックリンク名…レポート上でこのURLを識別する為のリンク名 - iOS 用のリンク動作の定義:ブラウザでディープリンクの URL を開く
- Android 用のリンク動作の定義:ブラウザでディープリンクの URL を開く
の設定で動作します。
⑤で作成したダイナミックリンクを用いてQRコードを生成します。
QRコードの運用を開始し、キャンペーンの終了等でQRコードの遷移先を変更する必要が発生した際は、ダイナミックリンクの一覧ページより対象の短縮URLの右端にあるハンバーガーメニューをクリック > [編集] より設定変更を行います。
ディープリンクURLを変更したら、「リンクを編集」で設定を保存します。
必要に応じて、ダイナミックリンク名やiOSとAndroid等の設定もご変更ください。
Firebase ダイナミックリンクについてより詳しく知りたい方は、以下ドキュメントもご覧ください。
https://firebase.google.com/docs/dynamic-links/
まとめ
QRコードを利用する企業は増えていますが、今回 意識して身の回りのQRコードを読み取ってみると、utmパラメータが使われていないのは勿論、後からURLを変更しやすいような設定がされているQRコードもほとんどみられませんでした。
ですが、両方を組み合わせて使っていただくことで、分析の幅も広がり、かつ遷移先URLを手軽に変更できてその後のメンテナンス作業の手間も減ります。
また、人によってはQRコードに抵抗があるケースもあるので、遷移先URLも並べておいた方がよりユーザーに安心感を与えることができると思います。
今回ご紹介したFirebaseは、GAやGoogle広告と比べて情報があまり出回っていない分、ハードルが高いイメージがありますが、ダイナミックリンクを利用するだけでしたらプログラミング知識は必要ありませんし、QRコードに限らず幅広いシーンでの利用が可能です。
上記でご紹介した他、
- 単純にURLに遷移させるだけでなく、iOSやAndroidからのアクセス時に専用の挙動を指定可能
- 所有ドメインまたは任意の値を接頭辞とした短縮URLドメインが取得可能なので、QRコードを読み取った時に不信感を抱かれにくい
等のような他の短縮URLサービスにはあまりみられないメリットもありますので、この機会にぜひご利用をご検討ください。